えー、前回までのあらすじ!

B級グルメホラーはもうお腹いっぱいです!

というわけで今回は、久しぶりに、どこに出しても恥ずかしくない真面目なホラーをご紹介したいと思います。
こちら。
『ムカデ人間2』

最低なチョイスだな!

まあはっきり言って、どこに出しても恥ずかしくないどころか、どこで出しても恥ずかしいといった感じの、大変に悪趣味な作品であり、B級グルメホラーを嗜好するより10000倍くらい、人間性を疑われる、そんな逸品だ。

ストーリーもまあ、あってないようなもので、前作『ムカデ人間』では、イカれた天才外科医ハイター博士が、その辺の男女三人を繋げるという話だったが、今作では、イカれた素人がハイター博士を真似て12人ほど繋げるという、ただただどうかしているだけのお話だ。

一応ざっくり粗筋を説明しようか?
大丈夫?

主人公は、地下駐車場で警備のバイトをしているうすらハゲのチビデブ、マーティンくん。
発達障害で幼い頃に父親に性的虐待を受け、そのせいで父親は刑務所に入れられ母親は息子を恨み隙あらば無理心中を図る。
唯一の心の支えが映画『ムカデ人間』で、自作のムカデ人間スクラップを作り、ペットにはムカデを飼うという、トリプル役満みたいなキャラクターだ。

そんなマーティンくん、ハイター博士に憧れるあまり、自分でもムカデ人間をこしらえてみたいという欲求が我慢できなくなり、駐車場の利用客を、銃で足を撃って動けなくして、名状し難いバールのようなもので頭を殴って昏倒させるというワイルドな方法で、次々と拉致、貸し倉庫に監禁していく。
そして、見よう見まねで、超適当な手術で、1ダースほどの男女を繋げていくという…、本当にどうしようもない作品だ!

さて、そんなモラルに対するチキンレースみたいな本作をどう評するか、非常に悩ましいところだ。
一つのスプラッタ系のイカれたホラーとしては、評価せざるを得ないポイントが3つある。

まず一つには、とにもかくにも主人公マーティンくんの尋常でないキモさだ。

もうね、彼の一挙手一投足が生理的にキモく、勿論彼は俳優さんで、全ては演技なのだが、一体彼はまともな社会生活が送れているのだろうかと、不安にさせられるレベルのキモさだ。

俺の中で、彼のキモさが真骨頂を迎えるシーンがある。
ベッドの上で『ムカデ人間』スクラップを堪能していたところ、母親に見つかってしまい、スクラップをビリビリに破られ、泣き崩れるシーンだ。
パンツ一丁で!

↑パン一でスクラップを堪能。

↑ママにパン一で叱られる。

↑泣きながら破片を拾う。パン一で。

どうだろうか?
顔だけでなく体型まで絶妙な塩梅でキモく、その体型から繰り出される日常生活に支障をきたしてそうな重たい挙動も、マーティンくんの人外感に拍車をかけている。
しかしその一方で、もたくたとスクラップの破片を拾い、破かれたハイター博士の写真を丸々と太ったお腹で抱き締めて咽び泣く姿は、ある種の愛しさを覚えなくもない!

そして二つ目は、主要な登場人物がことごとくイカれているという点だ。
まずは前述の、マーティンくんのママだ。
息子に性的虐待をかましてムショ行きという、一方的にパパが悪い状況でありながら、息子に旦那を奪われたと逆恨みし、割りと躊躇なくマーティンくんのベッドに包丁を突き立てるというイカれっぷりだ。
マーティンくんのペットのムカデを手にかけようとしたために彼の逆鱗に触れ、名状し難いバールのようなもので顔面の向こうの景色が見えるくらいに殴打されるという壮絶な死に様を迎える。

さらに、マーティンくんを診察しているヒゲモジャのお医者さんだ。
キモさMAXのマーティンくんに対し情欲の熱い眼差しを送り、診察にかこつけてちょこちょこセクハラをかますという、ある意味マーティンくんを凌ぐド変態だ。
マーティンくんの職場の駐車場で、娼婦にお口で性的サービスを受けながら、「本当はあの発達障害の子がいいんだが」などという、尋常のものでない不謹慎発言をかましていたところ、マーティンくんに見つかって、チ○コ→頭の順番で撃たれて死亡する。

そして三つ目のポイントは、無遠慮なグロ描写だ。
前作では、やっていることは極めてえげつないはずだが、直接的なグロ描写はほとんどなかった。
しかし今回は、なんだかタガでも外れたかのように、どうかと思う描写の連続だ。
具体的なシーンを言葉で表現することさえ憚られるが、数多くのスプラッタ系のホラーでクンフーを積んでいる俺でさえ、「うへぇ…」と声が出ちゃうレベルだ。
少なくとも、間違っても妊婦は見てはいけない。

あと、全編を通して白黒で描かれている本作だが、作中で唯一、茶色い色が付くシーンがあるのだが、まことに悪趣味な演出だったとだけ言っておこう!

さて、一見すると大絶賛しているように見えるかも知れないが、実は、個人的には、『ムカデ人間』の続編としては認め難い!
あの、崇高な人間ドラマを描いた『ムカデ人間』のナンバリングタイトルとしては、決して容認できないのだ!

理由は三つある。

一つは、ハイター博士に憧れているくせにやることなすこと全てが雑すぎる!
ハイター博士を思い出してほしい。
これからどのような施術を行うか、患者たちにきちんと事前に説明するという、医者としての本道を失念しない素晴らしい態度を示してから、口とケツをくっ付けていた。
それに引き換え、マーティンくんはどうか。
何の説明もなく、見よう見まねで素人手術を強行するのみだ。
バールは麻酔じゃないからね!

ハイター博士に憧れているならば、まずは医療についての見識を深め、徹底的に研究してから事に望むべきだった。
発達障害は言い訳にはならない!ある方面に秀でた才能を発揮している人間も、沢山いるではないか!
あくまで努力の問題だ!

そして二つ目は、ムカデ人間を性の対象にしてしまったことだ。
そもそもマーティンくんは、勤務中に『ムカデ人間』のDVDを鑑賞しながら、紙ヤスリでオ○ニーをするようなド変態だ。
言わばヤスニーですな!

そして、いよいよ1ダースほどの男女を繋げ、即席のムカデ人間が完成した時、彼は、おそらくは短小包茎であろう一物を針金でカスタマイズして、ムカデの最後尾で四つん這いになっている女にぶち込んでしまったのだ。
それだけはやってほしくなかったというのが、俺の本音だ。
勿論、これまでの人生で多種多様なエロアニメやエロ漫画を嗜んできた俺なので、猟奇的なプレイが苦手だとか、そんな眠たいことを言っているのではない。
ムカデ人間を単純な性欲に繋げてしまう、その安直さが頂けないと言っているのだ。

思えば、前作のハイター博士は、全く性的な目では見ていなかった。若い姉ちゃんが二人もいたにも関わらずだ!
どこまでも純粋に医学的好奇心からのもので、そこに志の高さと、常人には決して理解できない恐怖があったと思うのだ。
だからこそ、そんな単純で低俗な動機は受け入れられない!
股間と反比例して心が冷めていくのを感じながら、そんなことを考えていた。

最後の三つ目は、まさかの妄想オチである。
勿論、全てはマーティンくんのイカれた妄想だったと明言されているわけではない。
しかし、それをしっかりと示唆して、作品は終わっている。
夢オチ、妄想オチの類いは、必ず見る者の間で賛否が激しく別れる。
どちらかと言うと、否定的な意見が多いのではないだろうか?
まあ、衝撃的っちゃ衝撃的だが、「え?これだけやっといて妄想オチ!?」というガッカリ感がハンパないわけですよ!
オチを付けるのが難しい、非現実的なホラーにおいては特に、安易なオチに頼ってほしくないというのが本音だ。

そんなわけで、ホラーとしては実に見るべきところも多く、脇に嫌な汗をかきながら鑑賞したものの、名作『ムカデ人間』の続編としては断じて受け入れられないという、なんとも言えない結果に終わった本作。
色々と感想を述べながら、俺は改めて思った。

「俺は一体何に熱くなってんだ」と。

果たして世界に、これほど真剣に『ムカデ人間2』を鑑賞した人間がいただろうか?
責任ある社会人の一人として、真剣になるべきところを間違えていると言わざるを得ない!

ちなみに、今ごろになって本作を見直したのには理由がある。

そろそろ『ムカデ人間3』が見たくなったからだ!