さて、年も変わり一週間が過ぎ、仕事は始まったけど休みボケで一切やる気が出ない今日この頃、皆さんいかがお過ごしでしょうか?
つい先日、「今年もヴァンダムでいくぞ!」と、万人に対して何の益もない決意表明をしたところだが、そうは言っても年も改まったことだし、少しくらいはこれまでと違うことをしてもいいんじゃないか?
そんな気持ちで、今まで敬遠しがちだった作品にも手を出してみたので、ご紹介したいと思います。
それがこちら。
『悪魔の毒々バーガー』

今までと一緒じゃねーか!

ごく一般的な常識の持ち主ならそう思われるかも知れない。
でも違うんだ!聞いてくれ!

俺は今まで、この手の360度どこから見ても純度100%の悪ふざけで作られた作品は、意図的に避けてきた。
前にも言ったかも知れんが俺は、B級ホラーは好きだが、それはあくまで、真面目にホラーを作ろうと努力はしてみたものの、結果的に失笑を買うようなB級になってしまった、というような物であって、決して、初めからB級を狙ってふざけて作った作品ではない!
なんて言うか、低予算映画では致し方ないクオリティーの低さもあるが、「B級だから別にいいでしょ?」みたいな、B級を言い訳にした手抜きが目に付いちゃうのが嫌と言うかね。

でもね、昨年見たいくたりかの作品の中に、悪ふざけB級の仮面を被った名作も散見されたので、こりゃリスクを避けて食わず嫌いしている場合じゃないな、と。

どうでもいいか!

そんじゃ、ストーリー!

アメリカの片田舎のクリークサイド農場。
自然豊かな広大な農場でストレスなく、怪しい成長ホルモンを与えて育てられた牛は、なんということでしょう!
食べた人間が狂暴なゾンビとなってしまうゾンビ肉として出荷されてしまったではありませんか!

そんなことは知る由もなく、とある田舎町の牧歌的なお祭りに、四人の家族がやって来る。

この気だるそうな面々をざっくり紹介すると、こんな感じ。

まずは、80年代のバンドファッションで若作りのハゲが、一家の長のパパ。
強面なオッサンだが、こう見えて医者である。

そして、隣のグラサンのオバサンがママかと思いきや、パパのガールフレンドであり継母候補である。
ちなみに、パパの若作りファッションは、この女が「その格好の方が欲情する」という理由でやらせていたという、なかなかのビッチである。

後ろのパッキンの姉ちゃんが、パパの愛娘、愛称はカップケーキちゃんだ。
なぜかベジタリアンという設定に、ほんのり嫌な予感がしないでもなかったが、継母とは完全に反りが合わず、敵意を隠そうともしないが、継母もがっつりケンカ腰なので無問題だ!

最後に後部座席のひょろいあんちゃんは、カップケーキちゃんの彼氏。
まあ、特筆すべきこともない、性欲強め、頭弱めな普通のあんちゃんだ。

ほとんど他人じゃねーか!

そんな、ほとんど他人なこの四人が、さして祭りをエンジョイすることもなく、パパと彼氏がギスギスした空気を醸し出したり、継母とカップケーキちゃんが普通に悪態つき合ったり、継母が出会い頭にパパのチ○コをしゃぶったりという、それぞれの人間性や関係性が良く分かるドラマを、しばし展開する。
↑出会い頭にヒィヒィ言わせるアバズレぶり。

とりあえず一息ついて、近所のダイナーで軽食を取る一行。
ダイナーの名物は、地元のオーガニック食材を使ったハンバーガーだ。
そう、例のゾンビ肉を使ったバーガーだ。
しかし、幸か不幸か、今日はハンバーガーは売り切れ、あとカップケーキちゃんはベジタリアン。
嫌いな継母と同席していることもあり、気分が悪くなり宿の部屋へ引っ込んでしまう。

しかし、しばらくすると、周りでハンバーガーを食っていた他の客たちが、次々とゾンビ化。
祭り会場はとたんに地獄絵図と化し、まずは一瞬で、継母が脳天を刺されて死亡。
パパと彼氏は、突然のゾンビから逃れつつ、カップケーキちゃんの元へ向かうが、道中で彼氏は、足を食われるわ、銃で撃たれるわで、一人でボロボロ。

とりあえず無事だったカップケーキちゃん及び、ダイナーを経営している黒人のパパと娘と合流。
↑ダイナーの親子。無駄に義理の親子という設定。

なんやかんやあって、皆でダイナーの厨房に戻ってみると、そこにはなんと、ひとりでに動くバーガーのパテの姿が!
捕獲して調べようとすると、パテが彼氏を急襲!
大慌ての彼氏に対し、頼れるパパは落ち着いてオリーブオイルをぶっかけてパテをひっぺがす。
↑この後彼氏は、オイルに滑って転んで昏倒するぞ!

なんかもう、足を食われ、尻を撃たれ、オリーブオイルをぶっかけられ、すっかり嫌気が差した彼氏は、自暴自棄になってダイナーから外に飛び出し、目にも止まらぬ早さで食い殺される。
そんな彼氏の姿にカップケーキちゃんは、「うーん、やっぱり愛してなかったかも」と、とんでもない切り替えの早さを発揮する。

それはそれとして、どうやらこの騒動の原因は、バーガーのパテにありそうだということで、ダイナー親子から肉の仕入れ先を聞き出し、そのクリークサイド農場を目指そうとした矢先、ダイナー親子は容赦なく脱落。

こうして、親子二人旅となったパパとカップケーキちゃん。
邪魔な二人も死に、本当のママの話とか、色んな打ち明け話とかして親子の絆を深めつつ、たまに襲って来るゾンビを片手間に倒しながら、クリークサイド農場に辿り着く。

農場主のジイサンは行方知れずということで、人の良さそうな息子が出迎えてくれるが、この農場の親子もきっちりイカれており、パパとカップケーキちゃんを、農場を潰しに来たスパイ扱いして、拉致監禁。
パパは生肉と一緒に吊るして、カップケーキちゃんにエロ可愛い格好をさせて、ちょっとイチャイチャする。
↑ちょっと満更でもない、気の多いカップケーキちゃん。

そんな感じで隙だらけなので、吊るされていたパパは農場主のジイサンを蹴り倒して脱出、最後は農場主のジイサンと息子は、自ら育てたゾンビ肉に食われて死亡。

翌朝、おっとり刀で駆けつけた保安官が、「後は我々に任せとけば大安心!」とか嘯きつつゾンビ肉にきっちり感染している横で、「一緒に旅ができて良かった!」と、お互いのパートナーを失ったことなど無かったことにしてご満悦な父娘の姿が、そこにはありましたとさ!

めでたしめでたし!
↑エロ可愛い格好のままのカップケーキちゃん。

というわけで、一見すると悪ふざけで作られたB級ホラーに見える本作、実際に見てみると、やっぱり悪ふざけで作られたB級ホラーだったという、誠に遺憾な結果だった。

特にこれと言って見るべき所のない、チープなゾンビの造形及びグロ描写と、チープさを言い訳するようなギャグ演出は、大方予想通りのナニであった。
ふんだんに盛り込まれた下ネタも、下腹部にズシンと響くようなエロ描写が無くては、B級ホラーの定型にしかならないということを、肝に命じねばならないだろう。

細かい不平不満を並べればキリがないが、せっかく借りて、朝の五時に起きて見たのだから、『電影少女』のあいちゃんのように、良かった探しをしてみようかと思う。
↑『電影少女』のあいちゃん。

えー、強いて挙げるとするならば、確執を乗り越えて親子の絆を深める方法である。

まずは、思春期の娘の立場で想像してみて欲しい。
いい年をした父親が、自分に敵対的な、しかも色情狂のオバサンと付き合っているという状況を。

もう一つ、娘を持つ父親の立場で想像してみて欲しい。
可愛い娘が連れてきた彼氏が、瀕死の重傷で意識朦朧としていても、娘の「セ○クスしてあげる!」という言葉で意識を取り戻すような、クソエロガキだったという状況を。

はっきり言って最悪の状況だ。
ここから関係が改善されるとするならば、五才の息子との関係に既に悩んでいる俺としても、見るべきところが少なくないはずだ。
どのようにして、親子の絆を取り戻したのか、見てみよう。

まず、お互いの邪魔者がゾンビに食い殺されます。

既に参考にならねーよ!!

そんなわけで、今一良かった探しもままならなかったわけだが、将来俺も、子供たちとの関係にマジに行き詰まったら、最寄りの畜産農家に忍び込んで牛に成長ホルモンを与えるところから始めようと思います。