『デッド・オア・アライブ』という、3D格闘ゲームの人気格シリーズを御存知だろうか?

優れた操作性と、「ホールド」という斬新なシステムを導入することで、既存の格ゲーとは一線を画し、多くの格ゲーマーの心を掴んだ。
一方で、ビジュアルの美しさにも並々ならぬ拘りを見せた結果、俺のようなギャルゲーマーまで釣れてしまったというような、そんな作品だ。
映像美を追求するあまり、当時日本では明らかに負けハードだったXBOXに、マシンパワーがあるからというだけの理由で、颯爽と参入して行った時は、ある種の男気を見た気がしたものだ。

キャラクター人気を証明するように、『エクストリーム ビーチバレー』なんていう、ビーチバレーゲームまで、後に発売されている。

どこがエクストリームなのかと言えば、圧倒的な美麗グラフィックを用いて、女の子たちが南の島でひたすらビーチバレーをエンジョイし、あまつさえ、女の子同士で水着をプレゼントし合うだけという、エクストリーム過ぎる内容だ。

そんな、極めて軟派なコンセプトにも関わらず、一方で、やたらシビアなゲーム性も兼ね備えているため、お姉さんキャラにスクール水着をプレゼントしようと頑張っていたら、プレイ時間が300時間を越えていたなんてこともザラにある、プレイヤーもエクストリームにならざるを得ない、そんなゲームだ。

ちなみに俺は、『エクストリーム ビーチバレー』のためにXBOXを購入し、寝食を忘れてプレイしたものだ。
その頃の俺は、ほとんど音信不通レベルであったため、近しい友人からは、「冬のさ中に、常夏気分で凍え死んでいるのではないか」と噂されるほどであった。

そんな思い出深い『デッド・オア・アライブ』シリーズだが、実はひっそりと、ハリウッドで実写映画化していたのだ!
「そのルックスで殺す」

う~ん、ダメっぽい。

まずこの日本版の煽り、「そのルックスで殺す」が、別にそんな話じゃねぇっていう、お馴染みのジャケット詐欺だ。
さらに、やる気満々なギャルたちに混じって真面目な顔をしている、ケイン・コスギの存在が、俺をしてひどく暗澹たる気持ちにさせる。
 実際、冒頭、日本の山奥という設定の舞台で、ケイン・コスギの「プリンセス カスーミ!」という台詞から物語が始まり、早くも俺の精神にダメージを与えるのだった。

一応、簡単にストーリーを説明すると、こうだ。

世界中から、一流の格闘家や戦士を集めて、ガチンコバトルをさせて世界最強を決める「デッド・オア・アライブ大会」、通称DOA。
前回大会を最後に行方不明となったお兄ちゃんを追って抜け忍となったくの一、かすみを主人公に、ゲームでお馴染みのキャラクターたちが、バトルをしたりビーチバレーをしたりする。
しかしこのDOA大会、参加者たちのデータを収集して軍事利用しようという、壮大な陰謀が蠢いていたのだ!

という、まあ、大方ゲームと似たような似ていないような、あってないようなストーリーだ。
しかし本作においては、ストーリーを云々するより重要なことがある。

ゲームとのキャラクターの違いだ。

日本の漫画、アニメ、ゲームを原作としたハリウッド映画は、今や珍しくもないが、「大丈夫かアメリカ人!?」 と言いたくなるようなアメリカナイズも珍しくない。

ということで、今回は、ゲームでのあのキャラ、このキャラが、どんな変貌を遂げてしまったのかを中心に紹介していきたいと思います。

まずは、DOAシリーズのメインヒロイン、かすみ。
行方不明となった兄ハヤテを探して抜け忍となり、忍びの里の刺客に追われる身となった、ブラコンくの一だ。

悲壮な覚悟で抜け忍となった薄幸系ヒロインでありながら、色々と忍べていない最高にエロい忍び装束で、俺たちの心と股間を鷲掴みにした。
また、初期のC.Vは丹下さくらで、好きな食べ物は苺のミルフィーユという、妹キャラとしても申し分のない可愛さだ!
そんなかすみが、映画ではどうなったか!

苺のミルフィーユというよりは、猿の脳みそとか食ってそう…。
見ての通り、終止鉄面皮で、忍びの里を抜ける時も、留まるよう懇願する配下の者たちやケイン・コスギを足蹴にして、颯爽と去って行った。
だが我々は後に、かすみはまだマシな方だったと知ることになる…。

続いて、そんなかすみを刺客として追う、くの一あやね。
かすみとは種違いの姉妹でありながら、当主の正当な血を引くかすみを、影となり支えなければならない宿命を背負ってしまったため、性格がちょっとひねくれてしまった、そんな子だ。

かつて俺は、本当にあやねが好きで好きで仕方がなく、「あやねに生で罵られたらどんなに幸せだろう」と夢想する、そんな毎日を過ごしていた。
『俺の妹がこんなに可愛いわけない』など目じゃないくらいのツンデレ妹っぷりに、俺の心は千々に乱れたものだが、彼女がデレるのは、唯一ハヤテ様だけだったので、ハヤテに呪詛の念を送っていたものだ。
そんなあやねが、こちら!

外人の姉ちゃんが紫のかつら被っただけ!
これはもう、種違いとかそんなレベルじゃないね!

えー、続きまして、能天気なアメリカンギャル、女子プロレスラーのティナ。

同じくプロレスラーの、父バースの反対を押し切って、女優に転身するなど、妙なアグレッシブさと自信がアメリカ人っぽい。

イメージは近い。イメージは近いよ?
ただね、オッパイが小さいのは致命的だ!

はい、次!
DOAを主催するドアテックの創始者の娘、プリマドンナのエレナ。

目の前で母親が殺されるという、DOA一ハードな過去を持ち、「あなたには関係ない」という印象的な台詞に象徴されるように、心を閉ざしちゃった系の御姉様だ。

 まさかのローラースケートを履いて颯爽登場し、「みなさーん、DOA大会へようこそー!と、最高のテンションでお出迎えする、ティナ以上に能天気なキャラに成り下がっていた!
他のキャラが、見た目はともかく、性格は比較的ゲームに忠実だったのに対し、エレナは、180度キャラクターが変わっている!

それから、DOA3からの新キャラ、クールビューティーなアサシン、クリスティ。

ちょっと珍しい蛇拳使いで、キャラクター性能も良く、使っていて楽しいキャラだった。
『クリスティが教える蛇拳入門』なんていう本も出版されており、もちろん何の躊躇もなく購入した俺は、日々こつこつと蛇拳の型を練習し、彼女のことはクリスティ先生と呼んでいたものだ。

峰不二子みたいになりました。
実際、本作でのクリスティ先生は、アサシンではなく女泥棒で、謎のオリジナルキャラ、マックスと組んで、物語の核心にガンガン迫っていた。
エレナに続き、性格まで変貌してしまったキャラの一人だ。

他にも、目を見張る変貌を遂げたキャラ、残念な扱いのキャラが目白押しだ。

最強の超忍、ハヤブサは、ただのケイン・コスギだった!

キュートなチャイナ娘、レイファンは、すげぇブサイクだった!

中国拳法の達人、老師ゲン・フーは、東洋人の兄ちゃんが髭を付けただけだった!

俺が愛用していたキャラ、ジャン・リーは、いるかいないのかさえ分からなかった!

では本作を、原作レ○プのいつものハリウッド映画と断じてしまって良いだろうか?
答えはノーだ。
まず、中には、かなり再現度の高いキャラもいる。

プロレスラーのバース、サンボのバイマン、レオンあたりの、ゴツいオッサン連中は、むしろ体格のいいアメリカ人に分がある。

陽気な黒人ザックに至っては、黒人があの格好をすれば、そりゃ似るしかないよ!と思う次第だ。

また、かすみの兄ハヤテも、ハズレの多い東洋人枠でありながら、初見でのイメージはバッチリだった!
まあ、メイン武器が針だったり、後半に出てきたら少林寺の坊主みたいになってたりと、徐々に別人になっていったわけだが…。

さらに、キャラ物として見たら赤点な本作だが、アクション映画としては及第点を与えざるを得ない。
カンフー映画ライクなワイヤーアクションで見せるバトルシーンは、ゲーム中の無茶な大技なんかもそこそこ再現できていた。
キャラが多いせいか、展開もスピーディーで、退屈せずに楽しめる。
もう、初めからDOAの看板は外してくれよ!と思わざるを得ない。

最後に一点、アクション映画としての不満を述べさせてもらいたい。

こいつら、格闘スタイルの違いとか、どうでもいいんだな、という点だ。

せっかく色んなキャラが出てきて、載拳道とか太極拳とか空手とか、色々な格闘スタイルがあるのに、映画ではみんな、似たようなアクションになってしまっている。
エレナなどは、ゲームでは劈掛拳などという、えらくマニアックな拳法を使っているのに、映画では結局、ローラースケートで滑ってるところしか印象に残らないという有り様だ。

ともあれ、久方ぶりにDOAについて思いを馳せ、俺は今こう思うのだ。

やっぱあやねは可愛いなぁ!