今や34才の、むくつけきオッサンとなってしまった俺だが、かつては耽美を嗜んでいたものだ。
オッサンの耽美カミングアウトなど、世界のどこにも需要はないことは疑いようもないが、構わず続けよう。
あれは小学校五年生の頃、母親が持っていた『パタリロ!』を読んだのがファーストコンタクトだった。
あの時、俺は初めて、美少年と美青年が上になったり下になったりする、そんな世界を知った。
あるいは、あの超有名作、『ポーの一族』を読んで、ヴァンパイア=耽美という図式が刷り込まれたりもした。
そんな耽美な少年時代を過ごしたはずの俺だが、今や週末ごとにドロドロのゾンビを嗜む、そんな34才に育ってしまった。
ごめんよ母さん。
これではいかん、たまには美しい物を見て魂をクリーンアップせねば!と、そんな思いにかられて借りて見た作品がこちら。
少年と、ヴァンパイアの少女の、儚くも美しい愛を描いた、文句なくお耽美なホラー映画だ。
元は、『ぼくのエリ 200歳の少女』という、口に出すのも憚られる恥ずかしいタイトルのスウェーデン映画の、ハリウッドリメイク作品だ。
34才のオッサンとしては、もちろん『ぼくエリ』も鑑賞し、年端もいかない北欧少年少女の白い肌を、しっかり堪能させてもらったわけだが、それでも、あえてハリウッド版を紹介するのには訳がある。
ヴァンパイア少女を演じているのが、クロエ・グレース・モレッツちゃんだからだ。
出演する作品を悉く、「クロエちゃんを愛でる映画」に変貌させてしまう、そんな彼女が演じるミステリアスなヴァンパイア美少女である。
もう、耽美とかどうでも良くなるレベルで可愛いわけですよ!
そんなわけで、ストーリー!
主人公は、12才の少年オーウェンくん。
両親が離婚調停で揉めており、父親とは別居中、母親はちょっと微妙なレベルで信心深い。
同級生に比べて、華奢で色白のオーウェンくんは、学校では「女の子」と馬鹿にされていじめられている。
夕暮れ時には、アパートの庭にある小さな公園で一人黄昏れ、食後は望遠鏡で、近隣住民の私生活を覗き見するという、ちょっぴり寂しい少年だ。
そんなオーウェンくんちの隣に、雪の中でも常に裸足という、ミステリアスな美少女が越して来る。
そう、クロエちゃんだ。
小さな公園で出会う二人。
始めは、「あなたとは友達にはなれない」なんて言って、連れない素振りのクロエちゃんだが、次の日も公園で会い、オーウェンくんが持っていたルービックキューブに興味津々なクロエちゃん。
なんやかんや言いながら、夜の公園で会瀬を重ねる二人であった。
そんなミステリアスなクロエちゃんだが、サクっとネタバレしちゃうと、彼女の正体は実は、人の血をすするヴァンパイア!
一緒に越して来た父親っぽいオッサンは、夜な夜な、クロエちゃんのために、その辺の人を通り魔的に殺して、血をクロエちゃんに貢ぐ、そんな生活を送って来たっぽい。
しかしある日、年のせいか良心の呵責に耐えられなくなったためか、オッサンは血をゲットするのにミスってしまい、クロエちゃん激おこ。
我慢できず、ご近所さんの一人、筋トレ男のランニング中を自分で襲い、美味しいディナーにありつけたはいいけど、結局オッサンが死体の処理をするハメに。
それが、オーウェン少年にルービックキューブを借りた日のことである。
一方、そんなことは知らないオーウェンくんは、相変わらず学校でいじめられつつも、授業そっちのけで、モールス信号の自主学習。
物音丸聞こえなアパートのうっすい壁越しに、モールス信号で秘密の会話をエンジョイしようともちかける。
「え、声とか聞こえてるの…?」と、いささか引き気味のクロエちゃんだが、甘酸っぱい提案に満更でもない様子だ。
さらに親睦を深めていく二人。
オーウェンくんエスコートのもと、ゲーセンのパックマンと駄菓子でデートだ。
だがしかし、オーウェンくんに勧められ、食べれもしないのに無理して駄菓子を食べて、吐いてしまう。
そんなクロエちゃんの姿に愛しさが爆発しちゃったらしいオーウェンくんは、クロエちゃんを抱き締める!
キィィィ!ガキのくせに!
そのままの勢いで、「私のこと、好き?」と問うクロエちゃんに、「うん」とか答えちゃうオーウェンくん。
キィィィ!ガキのくせに!
そんなガキ二人の、耽美なイチャラブに面白くないのが、クロエちゃんの父親という設定のオッサンだ。
実際どれだけ生きてるかも知れないクロエちゃんに同伴しているのだから、もちろんオッサンは父親などではない。
ただのクロエちゃんラブなオッサンだ。
「オーウェン少年にこれ以上近付かないでくれ」と、ジェラシーマックスなオッサン。
クロエちゃんの心を繋ぎ止めるため、今宵も生き血を求めて人狩りに出かける。
しかし、老いのためか、気もそぞろだったためか、ドジって人の車で盛大に横転してしまう。
このままでは救急が駆け付け、身元がバレてしまうと危惧したオッサンは、自らの顔に硫酸をかけ、誰だか分からなくしてしまう。
ニュースで事故のことを知ったクロエちゃんは、オッサンが搬送された病院を、壁をよじ登って窓から電撃訪問。
もう、口も聞けないくらいに焼けただれたオッサンは、望んで自らの血をクロエちゃんに差し出し、そのまま窓から落下して死亡。
切なすぎるよ!
傷心のクロエちゃんは、その足でオーウェンくん宅を訪問。
もちろん窓から。
ヴァンパイアらしく、入室の許可をもらってから部屋に上がり込み、おもむろに服を脱いでベッドイン!
そしてそのまま、二人は付き合うことに!
キィィィ!ガキのくせに!
さて、そんなこんなのオーウェンくんだが、クロエちゃんのためにも強くなりたいと思ったのか、学校の野外トレーニングに志願して参加。
そこには例のいじめっこ連中もいて、案の定からまれるが、男レベルの上がったオーウェンくんは、棒でいじめっこの耳をぶん殴り流血騒ぎに。
ついでに、先日クロエちゃんが殺した筋トレ男の氷付け死体も見つかり、現場は大騒ぎに。
その夜、いつもの公園で、いじめっこにやり返してやったことを、ウキウキでクロエちゃんに報告するオーウェンくん。
ご褒美にクロエちゃんがチューしてくれたぞ!
キィィィ!ガキのくせに!
すっかり調子に乗ったオーウェンくんは、秘密の隠れ家で「血の誓いを交わそう」とかいらんことを言って、指先をナイフで切っちゃったから、さあ大変。
血を見て興奮したクロエちゃんは思わず本性を表してしまい、衝動的にご近所の若奥さんを襲ってしまう。
中途半端に襲われて死にきれなかった若奥さんは、知らずにヴァンパイア化してしまい、太陽光を浴びて灰になるという、凄惨な最後を遂げてしまう。
そんなシャレにならない本性をさらしてしまい、もうジ・エンドかと思われた二人だが、どことなくぎこちないながらも、再び互いの部屋を訪れる。
「入っていい?」と、クロエちゃん。
「ダメって言ったら?」と、ちょっといじわるなオーウェンくん。
許可をもらわずに黙って入室するクロエちゃん。
しばらくすると、クロエちゃんのあっちこっちから流血!
慌てて入室の許可をするオーウェンくん、「ボクがいいよって言わなかったら、死んじゃってたの!?」と、半泣き。
血まみれのクロエちゃんは、「そうならないって、信じてた」と。
またまた愛しさが爆発して抱き締めるオーウェンくん。
ごめん、これは抱き締めざるを得ない。
こうして、お互いの絆を深めたというか、深みにはまった感のある二人。
しかし、さすがに、ご近所でハントし過ぎたため、きっちり警察に目を付けられ、ついに一人の刑事がクロエちゃんのお部屋に突入。
正体がバレてしまったクロエちゃんは、刑事さんまで手にかけてしまう。
こうして、もうここにはいられなくなってしまったクロエちゃんは、一人寂しく町を出ていくのだった…。
一人残され、傷心のオーウェンくんだが、追い討ちをかけるように、例のいじめっこが、兄貴を連れて仕返しにやって来る。
この兄貴が、いじめっこ連中もドン引きレベルのヤバいやつで、オーウェンくんをプールに沈め、マジで殺しにかかって来る。
オーウェンくんの命が風前の灯火となったその時、クロエちゃんが颯爽登場!
そして、いじめっこたちを容赦なく皆殺し!
まだ子供なんだけどね!
そしてエピローグ。
一人、バスで町を出るオーウェンくん。
荷物には、少年には不釣り合いな大きなトランクを持っている。
トランクの中にモールス信号を送り、にっこりと微笑んでエンドだ!
いや~、クロエちゃん可愛かったなぁ!
まあ、オーウェン少年の未来については、あのオッサンと同じ末路しか見えてこないが、クロエちゃんが幸せならオールオッケーだ!
34にもなって、クロエちゃんクロエちゃんと、いつか法に抵触するのではないかと思われるかも知れないが、俺がこれほどにクロエちゃんを可愛いと思うのは、二児の父となり、父性愛が爆発しているからに他ならないという点は強調しておきたい。
ちなみに、夜の公園で、クロエちゃんが遊具に腰かけるシーンで、一瞬チラ見えするフトモモが色っぽくて、思わずコマ送りして見たのは、内緒の秘密だ!