お盆です。
ご先祖様の魂が、きゅうりやナスに乗って帰省する時期です。

さて、魂が帰ってくる、死者が甦ると言えば、もちろんゾンビですね。

さらに、ゾンビよりも古典に目を向ければ、ヴァンパイアなんてのも、甦り伝承の一つですね。

そんなわけで今回は、世界で最もお盆に相応しいホラーの一つをご紹介したいと思います。

『ヴァンパイアVSゾンビ』

もうダメだ。

世間ではこういうのを、見える地雷と呼ぶのだろう。
タイトルにVSが付く、いわゆる夢の対決ものは、枚挙に暇がない。
『エイリアンVSプレデター』や、『フレディVSジェイソン』などは、俺も割りと好きなB級ポンコツホラーだ。
っていうか、ジャケットがもう、あからさまにパクっている!

↑『フレディVSジェイソン』

これはもう、ちょっと話題になった作品があったら、臆面もなくあからさまにパクってわいてくる、有象無象と見て間違いないだろう。
だが俺も、これまで数々のゴミみたいなゾンビ映画を視聴してきた男だ。
心構えさえできていれば、ちょっとやそっとでは心折れることはないわ!
それにもしかしたら、ヴァンパイアとゾンビの、血わき肉踊る仁義なき戦いが楽しめる可能性も、微粒子レベルで存在している!
そんな覚悟を決めて、DVDを再生したわけですよ。
お盆の朝4時に!

結果!
ご先祖様の魂が帰ってくるのと引き換えに、俺の魂が彼岸の彼方へと!

じゃあみんな、正直何を言っているのか分からねぇとは思うが、できるだけ分かりやすく説明するので、聞いてくれ。

狂犬病に似た謎の伝染病が蔓延る世界。
感染者は錯乱し、人肉を食らうようになるという、まあいつものゾンビワールド。

車でどこかへひた走る、ハゲのパパと、ミニスカの娘が登場する。
パパは、道路をふらつくゾンビを躊躇なくはね飛ばし、娘は、ユリユリなエロい悪夢にうなされ、冒頭から絶好調だ!
すると、道の真ん中で、車を止めて突っ立っているオバサンと遭遇する。
オバサン曰く、「次女が感染した。だから長女を連れて行ってくれ」と。
見ず知らずの相手に、頭おかしいんじゃないかと思ったが、ハゲパパはなぜかこれを了承。
やたら扇情的な雰囲気を醸し出している長女の名はカミラ。
そっかー、カミラかー、名前からは正体が全然想像つかないなー。

ともあれ、三人体制で続くドライブ。
まず立ち寄ったガソリンスタンドで、やたら思わせ振りな犬連れのマダム、ボブが現れ、魔除けの石をくれる。
いかにも重要人物っぽいが、次のシーンではなぜか死亡。
ついでに、いつの間にか吸血鬼化していた、ガソリンスタンドの兄ちゃんも、次のシーンではなぜか死亡。

一方その頃、同じようにゾンビをはね飛ばしつつ、テンガロンハットにグラサン、皮のジャケットにジーンズという、やたらカウボーイルックなジイサンが、颯爽登場。
先のガソリンスタンドで、先のオバサンと次女に遭遇すると、いきなり、「こいつのせいで俺の娘が!」とぶちキレて、オバサンを殴り倒して、次女もボコボコにして、次女を拉致!
「カミラを捕まえたぞ!」と連絡した先は、なんとハゲパパだ!
しかしパパは冷ややかに答える。
「本物はこっちにいる。あんたは魔女に騙された」と。

さぁ、収拾がつかなくなってきた。
この辺で少し、状況を整理しよう。

次女が感染したとか言ってたオバサンたちの正体はこうだ。
まずは長女のカミラは、実はなんと吸血鬼!
いやー、想像つかなかったなー。
ガソリンスタンドの兄ちゃんは、カミラに噛まれて吸血鬼化したのだ。なんかその直後に誰かに殺されてたけど、誰だか知らん!
そして、母親を演じていたオバサンは魔女!
カミラとの関係も、結局何がしたかったのかも、最後まで分からなかったが、とにかく魔女だ!
最後に次女は、カミラと魔女に拉致られただけの、ミスコンの女王!
既にカミラに噛まれて吸血鬼化していたので、カウボーイジイサンに襲いかかるが、手斧で首を切られて死亡。

そして、ハゲパパとカウボーイジイサンは、全ての元凶であるカミラを倒すべく、なにやら画策しているようだ。
なんか、9割くらいは行き当たりばったりに見えるが、とにかく画策しているのだ!

あと、ちょこちょこ、娘の回想シーンっぽい感じで、娘が感染して病院で治療されてるようなシーンがインサートされるが、まあ気にすんな!

さて、話をハゲパパ一行に戻そう。
とりあえず給油したにも関わらず、速攻でエンストして立ち往生していたところ、ジープに乗ったゾンビが現れて、車をもう一台ゲット。
さらに、どう見ても警官のコスプレをしただけの魔女が現れて、なぜか冷却液をプレゼントしてくれて、エンストも回復。

二台に分乗して、改めて目的地を目指すが、ジープに同乗していたカミラと娘が、突然レズりだす!
微妙にいいところで気を失った娘だが、気が付くと内腿にくっきりと牙の跡が!
エロいな、こんちくしょー!

そうこうしてるうちに辿り着いたのは、どっかの古くて大きな修道院だ。
カウボーイジイサンはまだ到着していない。
とりあえず手分けして下見しておこうということになったが、カミラと娘が、「あら、ベッドがあるわ」とか言いながら、再びレズりだす!
とんだ色ボケだが、ところがなんということでしょう!
気が付けば娘は一人で悶えており、いつの間にか女子高生ゾンビの大軍に囲まれているではありませんか!
娘も、パンチでゾンビの顔面に風穴を開けるなど、ささやかな抵抗を見せるが、あっという間に囲まれて、押し倒されてしまう。
そこへ、ハゲパパが颯爽登場し、女子高生ゾンビを千切っては投げ、千切っては投げの活躍を見せる!
剪定用のショボいチェンソーで!

こうして何とかカウボーイジイサンとも合流し、ついに計画の全貌が明らかになる!
修道院の棺の中で、全ての元凶であるカミラを殺せば、この悪夢は終わるというのだ!
なるほど、さっぱり分からん!

しかしその前にトラブル発生だ。
パパの車の荷台から、なぜかジイサンの娘の死体が見つかった!
しかも死体の胸には杭が突き立てられている!

この土壇場にきて、致命的に収拾がつかなくなってきた!

「ジイサンの娘も感染して人を襲ったから、杭を刺して活動を止めたんだ」と弁明するも、聞く耳を持たないジイサンは、娘の杭を引っこ抜いてパパに突き刺す!
当然のようにジイサンの娘は吸血鬼として復活し、ジイサンも噛まれてしまう!
ここで、色ボケの方の娘が、最初の方でもらった魔除けの石を発見し、口にねじこむというまどろっこしい方法で見事撃退。

お互いに致命傷を負ったパパとジイサンだが、計画を完遂すべく、棺に聖水をまいて準備をしていたら、娘とカミラがツープラトンで、パパとジイサンを撲殺!
二人で手に手を取ってエスケープしてエンド!

と思いきや。
所変わって、ここまでにちょこちょこインサートされていた、娘が治療を受けてるっぽい病院に場面転換。
医者やらパパやらが、娘と看護婦がエスケープしたと大騒ぎだ。
当の娘とどう見てもカミラな看護婦はというと、看護婦の部屋にしけこんで、さぁレズるか!といった構えだ。
しかしそこに、いくたりかのゾンビが颯爽登場。
二人はあっけなく襲われ、臓物をクチャクチャと食べられ、今度こそエンドだ!

どうだろうか、分かって頂けただろうか?
「何一つ分からねぇよ!」というのが、全会一致の感想ではないだろうか?
正直、ゾンビものを始めとしたB級ホラーにおいては、ストーリーがとっちらかっていて何がしたいのか分からないという作品は、枚挙に暇がない。
しかし本作に関しては、あまりにも支離滅裂過ぎて、何がしたいのか分からないどころか、何が起きているのかも分からない有り様だ。

また、一体いつゾンビとヴァンパイアが戦ったよ!?というツッコミを飲み込んだとしても、見せ場のシーンが情けなくなるほど見応えがない!
例えば、娘が女子高生ゾンビ軍団に襲われ、パパがチェンソーで無双して助けるシーンだ。

なんかキリッとした表情で、女子高生ゾンビの群れに全くの無策で突っ込んで行き、グダグダのうちに押し倒される娘の間抜けさはどうだ。
そして、助けに来たパパは、女子高生ゾンビどもをチェンソーで切り刻んで倒しているはずなのだが、ただただ、制服姿の女子高生に血糊をぶっかけているだけという演出に終始している。

他にも、ジイサンがミスコンの女王に襲われるシーン、カミラがゾンビに襲われるシーン、ジイサンの娘に襲われるシーンと、なんの迫力も緊張感もない、冗長なキャットファイトがめじろ押しだ!

まあ、唯一の見所と言えば、おっぱい丸出しのレズシーンくらいだろう!

そんなわけなので、はっきり言って見るだけ損と言って差し支えないような本作だが、最後のシーンでこんな仮説が出てくる。

全ては、ゾンビに感染して錯乱した娘の、妄想だったのではないだろうか、と。

そう考えると、全体の支離滅裂さ加減も、説明がつかなくもない。
あらゆる設定が、あまりにも雑だったし。
そして最後に、ゾンビに食われて死んだのは事実なのだろう。
そして、妄想の中とは言え、パパを容赦なく殺してでもカミラとエスケープするほどの、ドエロレズ娘だったことも、事実なのだろう!

さて、ここまで考えて、俺はふと、ある魔法少女アニメを思い出した。
それがこれだ。
『ファッションララ』である。

また、いつにも増して、意味不明なこじつけだが、このアニメもまた、支離滅裂な本編に対し、ラストシーンで夢オチの可能性を示唆して終わる。
しかも、夢の中とは言え、親切な親戚を最低な意地悪キャラに仕立て上げるという残酷さも垣間見せてくれる。
そういった点で、『ヴァンパイアVSゾンビ』と共通点がなくもない!
言いたいことは分かるが、思い出したものは仕方ない!

そんなわけで、図らずも懐かしい作品を思い出すことができたので、今回はそれで良しとしよう。

お盆だしね!