どうにも最近、80年代愛が再燃して、昔見た映画や漫画なんかを借り直しては、生暖かい目で鑑賞するという、そんな週末を過ごしている。
なんというか、思い出にしがみつく中年の哀しい姿という気がしないでもないが、若い頃に見ていた作品や音楽の鑑賞で、老化が防止できると、『ホンマでっか!?TV』で言っていたので、そのへんは前向きに捉えることにしよう!

しかし、一方で最近、ヴァンダムに関しては別だなぁと、ふと気付く。
ヴァンダムの演技的にも、そして予算的にも哀愁漂う、比較的最近のアフターヴァンダム作品ばかり見ているような気がするなぁ!と。
もちろん、それらの作品も、俺の心に深い傷痕を残しているので、個人的に高く評価しているわけだが、間違ってもアンチエイジングには効果がないと思うわけです。

そんなわけで、ヴァンダムで80年代愛を充足しつつ、心の若返りも図るべく、ピチピチのヴァンダムがキラキラ輝いている、ビフォアヴァンダム作品を御紹介したいと思います。

『ダブル・インパクト』

1991年製作。

…まあ気にすんな!

というわけで、こちらの作品、ジャケットを見ても分かるように、ヴァンダムの十八番である一人二役が炸裂する、痛快B級アクションだ。
なぜか、レンタルや地上波でちょこちょこ見る機会が多く、その度に、「こんなことばかりしてれば落ち目になるよなぁ…」と再確認したものだ。
しかし今回、改めて見てみると、頭を空っぽにして楽しめる、良いエンターテイメントであることよなぁ!と、考えを新たにしている今日この頃である。

ざっくりストーリーを説明すると、こんな感じ。

生き別れた双子であるところのヴァンダムとヴァンダムが、親の仇であるところの香港マフィア及び、彼らと癒着する悪徳財団をぶっ潰す!

いやぁ、説明が楽でいいなぁ!

まあね、これではいくらなんでも、手抜きではないかと誤解されてしまうので、もう少し丁寧に説明しますとですね。
ヴァンダムのパパは、香港と中国本土をつなぐ海底トンネル事業を成功させるような、ナイスな財団の代表なわけですよ。
ところが、財団で長年タッグパートナーを組んできた男が、香港マフィアと共謀して、利権を独り占めすべく、ヴァンダムのパパとママを殺しちゃうんですね。
まだ赤ん坊だった双子のヴァンダムは、襲撃のドサクサでなんとか逃げ延びるわけですが、弟の方は、ショーン・コネリーに似ているという噂の、護衛のオッサンに助けられ、割りと裕福な感じで育てられます。
一方お兄ちゃんの方は、家政婦のオバチャンに救出されるも、そのまま孤児院にイン。
香港の裏社会でスクスクと育ち、そこそこ名の知れたチンピラに成長するのでした。

そんな二人が、ショーン・コネリーの尽力により再会し、兄弟げんかをしながらも、香港マフィアと財団をぶっ潰す!

改めて説明してみると、なかなかにヘビーな生い立ちだ。
しかし本作には、そんな悲壮感は皆無と言っても過言ではない。
パパとママが賊に惨殺されるハードな描写の直後には、ピチピチのレオタード姿で嬉しそうに開脚するヴァンダム弟が現れ、ある意味で本作の空気を決定付けてしまう。

ヴァンダムの股と俺の口が開いたままふさがらないって訳だ!

さて、本作を俺は、痛快B級アクションと断じたわけだが、確かに、無駄なサービスシーンや、ヴァンダムには決して当たらない銃弾など、B級の要素はコンプリートしている。
とは言えそこは、全盛期のヴァンダムだ。
『ハード・ターゲット』なんかと同様に、割りと恵まれた予算と、若いヴァンダムのフィジカルで、大変に見応えのある映像に仕上がっている!

さらに本作の、というか、当時のマッチョイズム全開のアクション映画全般の特徴として、敵から味方までキャラがやたら濃いというところがある。

まずヴァンダムブラザーズからして特濃だ。
弟の方は、前述のレオタード姿で理解して頂けたと思うが、お兄ちゃんも負けてはいない。
オールバックにくわえタバコというギトギトしたルックスに加え、自分の彼女に手を出されたら、問答無用でヘッドバットをかます、聞く耳の持たなさっぷりである。
弟が彼女とイチャついているのでは、と、妄想逞しくして、派手な兄弟げんかを勃発させ、そのせいで彼女とショーン・コネリーを拐われるという、頭の悪さも披露してくれる。

しかしなんと言っても、敵キャラの濃さといったら、天下一品のスタミナラーメンレベルと言っても過言ではない。

ウェスタンブーツで回し蹴りを放ち、相手の喉を切り裂く、華麗な足技使いのオッサンや、太ももがどうかと思うほどムキムキな女ボディーガードなど、夢に出てきそうな存在感だが、本作で文句なく最濃なのはこの男だろう。

ヤン・スエだ!

ヤン・スエと言えば、あの『燃えよドラゴン』で、狂気の筋肉ダルマ、ボロを演じ、一際異彩を放っていた、あの男だ!

↑ブルース・リーとボロ

どれぐらい狂気かと言うと、使えない味方を抱き締めて殺すくらいに狂気である。

↑世界一恐ろしい抱擁。

そんなヤン・スエの、今回の役どころは、残虐な香港マフィアの一味で、ヴァンダムの両親を殺した下手人でもある。
物語のクライマックスでは、ヴァンダム弟の前に素手で立ち塞がり、壮絶な死闘を繰り広げる。
ヴァンダムに銃は当たらないので、素手が正解だ!

ヴァンダムを苦しめた、ヤン・スエとの死闘はこんな感じだ!

服を脱ぐ!

筋肉自慢!

ビリビリビリ~!!

ヤーーーン!!

どうだろうか?
皆さんもなんとはなしに、心が幼さを取り戻してきたのではないだろうか?
ビフォアヴァンダム作品は、だいたい終始こんな感じで、心のアンチエイジングにはぴったりだ。
その証拠に、日頃からヴァンダムを嗜む俺は、齢34にして、未だにこう言われる。

「いつまでたっても学生気分が抜けねぇなぁ!」と。