最近ふと、こう思うことがある。

子供たちの未来のために、この社会を少しでも良くしたいなぁ、と。
そういえば、産まれてこのかた、ボランティアとか社会奉仕活動とか、一度もしたことないなぁ!と。

しかしね、何もゴミ拾いやら見守り活動やら、分かりやすいアクションばかりが社会奉仕ではないと思うんですよ。
例えば、文句のない大物俳優たちが、破格のギャラで集結し、お祭り騒ぎに参加する。
それも、見ている人を元気にするという意味において、一種の社会奉仕と言えるのではないだろうか。

24時間テレビか何かの話かって?
いえいえ、『エクスペンダブルズ3ワールドミッション』の話ですよ!




誰が24時間テレビの話なんかするかよ!

マッチョのオッサンと、ハゲたオッサンと、ハゲたマッチョのオッサンが、火薬と銃弾と肉体言語で俺たちボンクラーズに笑顔をくれる、世界規模の奉仕活動、第三弾!!

さて、そんな祭のオープニングだが、相変わらずのスタートダッシュだ。

一発目の任務は、列車で護送される囚人の救出だ。
ハデなドンパチをかまして、余裕で囚人までたどり着くが、拘束されていたその男は、ウェズリー・スナイプスじゃねーか!
てか、この出オチ感、前作と一緒じゃねーか!
こうして無事救出されたウェズリー・スナイプス、通称ドクは、何一つドクっぽくないがそれはともかく、エクスペンダブルズの創設メンバーの一人だったとのこと。
一体何をやらかして投獄されていたのかというメンバーの質問に対し、ウェズが一言。

「脱税だ」

エクスペンダブルズ名物、火の玉ストレートの自虐ネタが早速炸裂だ。
何のことかわからない人は、「ウェズリー・スナイプス 脱税」でググってみよう!

自虐ネタを披露したところで、一息つく暇もなく、一行は次の任務に向かう。
悪い武器商人の取引をぶっ潰せ!というものだ。
加入早々のウェズの活躍もあり、取引現場への潜入にも易々と成功。
ところが、ターゲットとなる武器商人が現れた途端、スライ隊長の顔色が変わる。
なんと彼は、ウェズと同じく元エクスペンダブルズメンバーであったにも関わらず、悪の道に落ちたためスライが葬ったはずの男…

メル・ギブソンだった!

メル・ギブソンといえば、目が笑ってない笑顔でお馴染みの大物ハリウッダー。
『マッド・マックス』や『リーサル・ウェポン』でイカれたヤバい主人公を好演し、一躍スターダムにのしあがるも、近年、ガチDV やらガチ差別などが取りざたされ、ファンをして、「ああ、本物だったんだ…」と言わしめた、そんな男だ!



↑目が笑ってない笑顔の一例

思いがけない仇敵との再開に、隠密行動してたことをド忘れした我らがスライ隊長。

「メル・ギブソン!!」

と大絶叫して、無防備に飛び出す。
案の定、問答無用の銃撃戦に発展し、命からがら助かるも、メンバーの一人、テリー・クルーズが、メルギブの凶弾により瀕死の重症を負ってしまう。

考えてみれば今まで一度も触れてこなかったが、エクスペンダブルズ一作目からのメンバー、テリー・クルーズ。
化け物みたいなショットガンや、切れ味鋭いカミソリなんかを、嫁だの妹だのとのたまう、陽気な黒人として親しまれてきた。
ところが前作では、シュワちゃんの本格参戦により、デカいショットガンを借りパクされ、アイデンティティーの一つを失い、今作ではウェズの参入により、唯一の黒人というアイデンティティーも失った。
とどめに、メルギブに無表情に撃たれて、開始早々の戦線離脱だ。

これにはスライ隊長も、いつものように顔中に血管を浮き上がらせて、復讐戦に乗り出すかと思いきや、今回は何やら様子が違う。
一命をとりとめたっつってんのに、まるでテリー・クルーズが死んだかのようなお通夜モードだ。
ショットガンを借りパクしていたシュワちゃんも、さすがにマズイと思ったのか、神妙な面持ちで見舞いにかけつける。

さらに、追い討ちをかけるように、CIA のハリソン・フォードがやって来て、「任務失敗してんじゃねぇか、もっぺん行ってこい」と鬼のような…って、

ブルース・ウィリスは!?

なんと今回、ウィリスは降板。話によると、ギャラでもめたとか。
前回、祭だなんだとはしゃいでたくせに、金の話をするとは無粋な。
これだからハゲは!

これにはさしものスライ隊長も痛く傷付いたのか、「俺たちは最強だけど、年とっていくじゃん?もう、仲間が傷付くとこ見たくないねん…。解散しよか…」と、一方的に解散を宣言。
獄中生活からやっと解放されたと思ったら、家にも帰らずそのまま任務に赴いたウェズを始め、消耗品軍団はそりゃ納得しない。
中でも、シリーズ通してスライの右腕として活躍してきたステイサムは、彼のキャリアの中でも異例と言えるほどの激昂ぶりで、スライに食い下がる。

「俺はずっとアンタについて行く覚悟だった!俺の気持ちはどうなる!!」と。
最早どう見ても痴話ゲンカだ。

それでもスライの意志は変わらず、捨てられちまった消耗品たちは、失意のどん底でウジウジとしばらく過ごす。
一方のスライは、さっきまでお通夜モードだったとは思えないほど派手な私服で、新たなメンバーのスカウトキャラバンへと出かける。
募集要綱はひどくシンプルだ。

若くて命知らず

そんなブラック求人をかかげて探したところ、履歴書を改竄してまで申し込んできたのがまさかの

アントニオ・バンデラス

「お前、オッサンじゃねーか!」と門前払いを受けるが、「心は80年代産まれだ!」「俺に仕事をくれー!!」と絶叫する姿は、哀愁を感じずにはいられない。

バンデラスを華麗にスルーしたスカウトキャラバンはその後、順調に命のいらない若者をゲットしていく。
武器オタクのモヒカンやら、ハイテクを使いこなすロッククライマーやら、次々と出てくる中、一際異彩を放つのが新メンバーの紅一点、ロンダ・ラウジーだ。


見ろやこの筋肉!

これまでの添え物程度のヒロインたちと違い、ガチ格闘家の彼女。
男やもめのエクスペンダブルズにあって、ようやく相応しいヒロインが現れたと言えよう!

さあ、面子は揃った!メルギブを捕らえに出発だ!
途中、問答無用の正面突破を提案するスライが、「いや、さすがに少しは考えろよ」と若者に諌められたり、噂を聞きつけた旧メンバーたちが突然現れ、新メンバーに対してガキみたいに悪態ついたりしつつも、あっという間にメルギブの確保に成功。
作戦帰りの車中で、メルギブの安い挑発に乗ってメルギブをスライがぶん殴るくらいしかやることはなかった。
と、思いきや。

メルギブがなんか発信器みたいなの付けてる!

次の瞬間、車に向かってロケットランチャーが飛来!
いや、メルギブも乗ってるよ!?
やはりというかなんというか、結果オーライで助かるメルギブ、爆発で吹っ飛ばされて川に転落するスライ、メルギブに捕らえられてしまう若者たちなのだった!

今回の作戦では、飛行機の運ちゃんとして待機していたシュワちゃんと、何とか合流したスライだが、そこでメルギブの自撮り風ビデオレターを見せられる。
要は「仲間は預かった、助けたければここまで来い」という、よくあるパターンなのだが、このビデオレターを見た多くの人は、口を揃えてこう言う。
「ダークナイトのジョーカーみてぇ」と。


↑捕らわれのロンダ・ラウジー
 すげぇ筋肉だ!

最凶のこじらせ男子、メルギブに、単身挑む覚悟を決めるスライ。
と、その前に、一人の男が!

バンデラスじゃねぇか!

スライの危機に、不合格にしたはずのバンデラスが登場、再度、雇ってくれるようアピールする。
「地獄への片道切符だぞ」
というスライ。
「道があるだけマシです」
と、バンデラス。
雇用契約、完了!

無事仕事をゲットして、テンションだだ上がりでマシンガントークを続けるバンデラスと共に、今度こそ死地へ赴かんとするスライ。
二人の前に立つ、四つの人影が!

ステイサム!

ラングレン!

ウェズ!

ランディ・クートゥア!

彼らは皆、フル装備で臨戦態勢だ!

「何しに来たんだ!?」と言うスライに、ステイサムが叫ぶ!

「何でも一人で背負いこんでんじゃねぇ!バカには仲間が必要だろう!?」

もう、最高だ!

ウィリスがギャラがどうのと言って男を下げる中、ステイサムが世界一イケてるハゲっぷりを存分に発揮する。
言ってしまえば、漫画なんかでも非常によくある展開だ。
だが、胸が熱くたぎらざるを得ないのも事実だ!

こうしてめでたく、消耗品軍団再結集だ。
パチンコで例えれば、鉄板演出が発生して、あとは大当たりを待つだけといった状態だ。
これまでの葛藤とか色々はさっぱり忘れて、ただただドンパチを楽しもう!

一応、ミッションはこうだ。
捕らえられた新メンバーたちを助けだし、爆弾が仕掛けられた廃ビルから、皆で協力して脱出しろ!

ここまで、オッサン連中に美味しいところを持って行かれ気味だった新メンバーたちも、若いフィジカルでキレのあるアクションを見せる!

さすがのロンダ・ラウジーは、ゴリゴリの総合格闘術で華麗に敵を葬る!

あるいは、屋内戦闘なのになぜか敵のバイカー軍団が登場、バイクの得意な新メンバーの一人に一瞬でバイクを奪われ、迫力のバイクアクションを魅せる!

そして、画面に登場する度に、世界観をデスペラード色に染め上げるバンデラス!
「人生最良の日だ!」と、嬉しそう。

前作のウィリス同様、なんだかんだで現場魂に火がついてしまったハリソン・フォードは、シュワちゃんとジェット・リーを伴い、ヘリで参戦!

もちろん最後は、スライとメルギブのタイマンバトルだ!
生け捕りにしろという任務なんぞすっかり忘れて、「俺が裁く!」と、ジャッジ・ドレッドのようなセリフでトドメを刺す!

いやぁ、いいもの見たなぁ!

こうして三度目の祭は幕を閉じ、恒例の酒場での打ち上げを楽しむのだった。

しかしこうして改めて見ると、この作品に出演することで、俳優としてのキャリアが上がるか下がるかと言えば、少なくともアカデミー賞あたりからは遠ざかるとしか言えない。

それでもこうして、皆でドンパチやらかして、俺の体の一部がホットホットにしてくれる彼らは、やはり一流だ!

例え最後に、シュワちゃんとジェット・リーがホモネタをぶっこんできたとしても、やはり一流なのだろう!

そんなわけで、彼らから頂いたパワーやらラブやらを、社会奉仕の精神に基づき、他の誰かにバトンタッチすることを、明日からの自分の使命にせねばなぁと思う次第だ。

まずは、自撮り風ビデオレターを撮る所から始めよう!