「最近恋してないな~」
「わたしって寂しがりやだから」
「でも愛されるのが一番だよね」
隣のテーブルからそんな陳腐なセリフが延々と聞こえてくる。
女同士で集まって恋愛の話に華を咲かせているとはいえ、聞こえてくるのはあくびの出るような意見ばかりだった。
今や、どこの飲食店でも、禁煙・喫煙席に分かれている。ここは一歩進んで、人種による席の区分けもして欲しいところだ。言葉の副流煙ほど、ときに厄介なものはない。
わたしの持論として、女子力とか婚活だとか、その手の流行言葉を使う女は往々にして行き遅れるタイプだ。きっと、この三人は『お願いランキング』の熱狂的な視聴者でもあるだろう。
「そういえば、このまえ川越シェフの…」
これでは、皮肉を思ったわたしが、バカにされているみたいだ。コーヒーはまだ1/3ほどカップに残っていたが、あまりのやりきれなさに店を出ることにした。
目的地もなく歩き始めてすぐ、わたしはいつものめまいに襲われた。
「わたしは特別…わたしはみんなとは違うの…誰かに愛されていないと自分の存在が消えてしまうから…」
どろどろと、過去の自分が繰り返していた言葉が頭に流れ込んでくる。
「恋愛依存症?病気?違うよ…わたしはよくいるそういう女とは違う」
過去の自分に対する、強烈な嫌悪感からその場にしゃがみこんでしまいそうになる。人は病気であることに自分からすぐには気がつけないものだ。症状の重い病ほど、医者に告知されて、はじめて認知する。
わたしは、つい先ほどまで嫌悪感を抱いていたOLたちより、よほどに忌み嫌うべき存在だった。恋の病なんて言葉があるが、言葉の響きほどいいものじゃない。
わたしの闘病生活壮絶なものだった。