規約違反問題の論点(1)

 

前回は、藤田論文で松竹氏が規約違反だとされてる規約条文の分析・解説を行った。

 

そこでは、いずれも「民主集中制」の組織原則と密接に関わり、党員間の組織横断的な議論や、党員が異論を自由に党内部で語り広げる行為を禁止することで、異論が党内部で広がることを抑制し、党中央の権威と「中央集権制」を守る規約条文になっていることを示した。

 

その理解をベースに、今回は、藤田論文で規約違反を指摘されている点が、本当に規約違反かどうかを判定するための順次、論点整理をしたいと思う。

 

 1. 意見書提出は義務ではない

 

<藤田論文>より:

党規約では、党員は、「中央委員会にいたるどの機関にたいしても、質問し、意見をのべ、回答をもとめる」(第5条第6項)ことができるとしています。松竹氏も「党首公選制」を実施すべきだという意見があるなら、中央委員会に対しても幹部会や常任幹部会に対しても、そうした意見をのべる権利がありました。しかし、松竹氏が、そうした行動をとったことは、これまでただの一度もありません。

ここで指摘されているのは、中央への意見書などが提出できるのに、それをしなかったということだが、藤田氏も「権利がありました」と書いているように、この意見書提出は、義務ではなく権利であるから、その権利を行使するかの判断は、あくまで党員の自由である。そのため、その権利を行使しなかったこと自体は、規約上の何の問題もない。

 

松竹氏もご自身のブログで以下のように反論している。

 

党首公選について言うと、ある人が一年ほど前、その実施を求めて意見書をあげたそうですが、党内には政策的争点がないので選挙するのは無意味です、というのが回答があったそうです。だから、私が意見書をあげたとしても、そのような回答になるだけだということは、早くから分かっていました。いや、その後、昨年の8月23日付で党建設委員会の論文が出ましたので、現在ではそれが添付ファイルで送られてくるのかもしれません。

いずれにせよ、党首公選の問題は、まだ大会で議論もされておらず、党の決定にもなっていないのに、内部で意見をあげてもそういう対応しかされないのが現実なのです。藤田さんは、私が内部で意見を一度もだしていないのに外部に公表したと批判しますが、たとえ意見を出した上で外部に出したところで、「誠意をもって回答したのに外部に公表した」と変わるだけのことです。

松竹氏も指摘するように、まずこの「第5条第6項」の権利行使しなかったことを問題にするのなら、そもそもその権利行使にどれほどの有効性があるのかがまず、論点として問われるだろう。条文でも、機関には意見書への回答義務すら課せられていないため、どう扱うかは、機関の胸先三寸なのが実態で、実際に回答がなかった事例もあるようだ。

 

そうした義務ではなく、効果も疑問な権利をあえて行使しないことを処分問題に持ち出すことに説得力があるのか?は、なかなか厳しいと言わざる得ない。

 2. 内部問題を外に持ち出す事は規約違反か? 

次の論点として、「党の内部問題は、党内で解決する」(第5条第8項)の規定について見てみよう。

 

<藤田論文>より:

異論があれば党内で意見をのべるということを一切しないまま、「公開されていない、透明でない」などと外からいきなり攻撃することは、「党の内部問題は、党内で解決する」(第5条第8項)という党の規約を踏み破るものです。

この文は、なかなか理解が困難(かなり意味不明)である。

まず、内部で意見を言う・言わないと、「党の内部問題は、党内で解決する」との問題は関連がないはず。内部で事前にいくら主張していようとも、「内部問題を党内で解決する」が問題になる行為は何も違わないからだ。

 

さらに「外からいきなり攻撃する」と、「党の内部問題は、党内で解決する」の規定を破ることになるというのもよく分からない。

 

分かりづらい理由として、そもそも「党の内部問題は、党内で解決する」とは、具体的に何をどうせよという規定なのか?次の2つの疑問点が浮かぶ。

 

Q1.「党の内部問題」とは、そもそもどんな問題なのか?

 純粋な「内部問題」とは、例えば党内組織の人事や財政に関わる問題などがそうだろう。

一方、「党首の選び方」や「党の安保政策」に関することは、もちろん最終的には内部で決定する問題ではあるが、同時に外部に公表する問題なので、党内外の意見にも耳を傾けるべき性質を持ち、純粋な「内部問題」とは言い難いだろう。このように、何が「内部問題」なのか?を規定するのは、結構難しい問題だと感じる。少なくとも藤田氏が、独断できることではないだろう。

 

Q2.「内部問題を外に持ち出すこと」はこの規定に反するのか?

 藤田氏の主張によると、党首公選制や安保政策を党外で論じたことが、「内部問題を党内で解決する」に反するとの主張に見える。しかし、改正前の規約の条項にはもともと「党外にもちだしてはならない。」という規定があったのが、改正時に削除されたという経緯がある。つまり、内部問題を外部に持ち出すこと自体は今の規約では問題ではなく、「党外で解決しようとする」ことが問題となると考えるのが自然であろう。そういう意味でも、藤田氏の文章は、ポイントがずれてしまっていると感じる。

 

まとめると、松竹氏は「党内の問題を党外で解決しようとしたのか?」が、この条項に違反するかどうかの分かれ道と言ってよさそうだ。

言い換えれば、松竹氏が提案した「首相公選制」や「核抑止抜きの専守防衛」が、外部から党幹部にそれを採用せよと押し付けたものなら「党外で解決しようとした」と言えるかもしれない。しかし書籍を読む限り、松竹氏の主張はざっとこんな感じだ。

 

「党首選挙にはこれこれのメリットが考えられ、共産党の支持拡大にも繋がると信じるので、前向きに検討して実現して欲しい。仮に行われるようであれば、自分も立候補して自分が考える安保政策を訴えたい」

 

結局、松竹氏はボールを投げただけで、それをどう打ち返すか?見逃すか?は、党内部での議論に委ねている。これをもって「党外で解決しようとした」ので規約違反と言えるかは、大きな疑問だ。まぁ、そもそも、こうした党の方針・政策決定の問題は、「党内」以外での解決など不可能な案件ではあると思うのだが。。。

 

今回はここまで。

次回は「党首公選制と民主集中制」の問題から。