ドキドキ、していた。













席替えで隣になった彼女と初めて机を合わせた時のように





自転車通学でもないのに自転車置き場で偶然を装ってあの子に話しかけた時のように






授業中、無意識に君を見て目が合ってしまった時のように







僕は、ドキドキしていた。





この胸の高鳴りはなんだろう




こんな気持ちをなんて言ったかな






今一度、目の前の君を見つめる



触れようと思えば手の届く距離で



斜め下から真っ直ぐにこちらを見ている君



目が合ってもぱっちりとした丸い目をそらすことをせず



見つめ合っているとその黒く大きな瞳に吸い込まれそうになる



「ああ、綺麗だ…」



思わず口からこぼれた言葉に僕は慌てて口を塞ぎ



恐る恐る君を見ると



君は心なしか丸い目をさらに丸くして



顔を赤らめていた



気づけば僕は手を伸ばしていた



僕の子犬のような指が君に触れる





















子犬のような指ってなんだ














僕の指が君に触れる




まだ目は見つめ合ったまま




初めて触れた君は思ったよりひんやりとしていた



それでも何事もなかったように振る舞っている君がとても美しくて




僕は写真を撮った



君の美しさを世界中に見せつけてやりたかった




その写真がこれだ












そう



これは僕が初めて鯛を捌いて調理するまでの軌跡を描いた物語だ。







始まりは前の日の夜だった



僕は最寄りのスーパーでお買い得品の卵パックが山積みになったワゴンを難しい顔で見つめながら「わーたまごいっぱーい」なんて考えていた




卵は買ったばかりだったので早々に興味を失い


何かあびこ飯を作るに良い食材はないかとふらふらと、しかしながら確かな足取りで店内を巡回していると鮮魚コーナーにたどり着いた



わー水族館みたーい


なんて思ったのも束の間、唐突に僕はあることを思い出した



2週間前の第2回YouTube生配信「君とアン・ドゥ・LIVE」の自己紹介で今食べたいものを問われ




「真鯛のポワレ」

と答えた事を。



なんという事だ


皆さまの前で宣言してしまった以上その言葉を嘘にするわけにはいかない


そして作った事ないけどいい機会だから挑戦してみよう


という事で真鯛のポワレを作ることに。



ところがなんと鯛の切り身が売っておらず



あきらめかけて鮮魚コーナーを離れようとしたその時



視線を感じた気がした


そして僕は一匹売りコーナーの片隅で挑発的にこちらを見る君を見つけた



魚を、


失礼


お魚さんを捌いた事は数えるほどしか無い


それも小さなお魚さんばかりだ


できるのか?僕に


様々な不安が胸をよぎる



恐る恐る手に取ると、ずっしりと重く

パッケージの「真鯛(天然)」の文字に手が震えた


しかしこの時にはもう

僕の胸はドキドキしていた







スーパーを出た僕は高揚感を抑えられず家まで小走りで帰った。














翌日



時は冒頭に戻る



いよいよ調理開始である



昨日の夜、家に鯛が1匹いると思うと興奮してなかなか寝付けず捌き方を調べながら寝落ちしたので予習はバッチリである



まず鱗を取る


実はこれが一番苦戦しそうだなと思っていた


なぜなら動画でよく見るあの鱗を取る棒みたいなの

あれがうちには無い


動画の人たちみんな平気な顔であの棒使ってたけど


あれ無いよ一般男性の家に


一般女性の家にも無いよ多分


そこで代用品として使えるものを調べた結果行き着いたのがペットボトルのキャップ


使ってみると一枚、また一枚とみるみる鱗が剥がれていく

そしてすごい勢いでキッチン中に飛び散っていく



ああ、これは後で掃除しようと早々に見切りをつけて作業を続行する


次々と薄く、硬い鱗が剥がれる様がまるで誰もが持ってる心の壁、すなわちATフィールドを破る初号機になったようで僕を夢中にさせた



この時気をつけなければならない事はヒレにあるトゲである


特に背ビレには鋭いトゲが沢山あるので注意しなければならない


できる…


昨日習ったとこばかりだ!



進研ゼミの漫画のように全てが上手くいき、主人公あびこは鱗を取り終えたので流水で身についている鱗を流そうとおもむろに鯛を掴んだ




あっ、



僕の子犬のような人差し指に鋭い痛みが走る




背ビレのトゲが指の腹に刺さっていた



安孫子選手、此処で一旦コートの外に出て止血



すぐに戻ってきて「心配ない、かすり傷だ」といないはずのチームメイトに告げて作業続行


今度は慎重かつ大胆に鯛を掴んで流水で洗う


落ちていない鱗がないか少し不安になったのでとりあえず両手でがっしり掴んで鯛を振ってみた






すると



なんという事でしょう



キッチンのシンクの中を1匹の鯛が泳いでるじゃありませんか!



ビチビチと力強く震える様はまさしく生前のお姿のまま



泳いでる!泳いでる!



と楽しくなって2分くらい1人で遊んでしまった事はさておき


順調に頭を落とし


腹に包丁を入れて内臓を取り出す


そして肝と共に卵がたっぷり入っていたので僕は「わーたまごいっぱーい」と思った


そしてこうなって
















なんやかんやして








こうなりました





















という事で無事に真鯛のポワレをあびこ飯できました!




無駄に壮大になりすぎて長文になってしまった




そしてほとんど調理前の事しか書いてないじゃないか






実はですね、ひらまつレストランさんでやっている「ポール・ボキューズの料理教室」を少し前に見学させて頂きまして


その時のレシピを元に作ってみました




自宅でフレンチ、できるものですねえ



今後も色んな料理にチャレンジして幅を広げたいと思っている安孫子であります












ではでは大翔くんからのメッセージ



















大嫌い




大嫌い




大嫌い




大好き。




さて、雅弘くんへ




雅弘くんはどうして漁師になるのを諦めたんですか?















最後に、豊洲の振替公演の中止が発表されて、バレンタイン公演を終えることとなってしまいました



稽古した事が皆さまにお届けできない、見れたかもしれない皆さまの笑顔が見れないのはとても残念で寂しい想いです。


早く事態が終息して皆さまと会えますように


次に会うとき皆さまにとんでもなく楽しい時間をお届けできるように


そのための行動をしていこうとおもいます!


そして楽しい事は悪くない!


こういう日々も一緒に楽しく過ごしましょう。


ではでは皆さま健康に充分お気をつけて!


最後まで読んで頂きありがとうございました。


安孫子宏輔







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