『自分は何のために この世に生まれて来たのだろう?』
人生の八方が塞がり 生き詰まると
多くの人は この命題に行き当たるらしい
それは 栄光の中に生きる少女にも 当てはまるようだ
ただし 何不自由の無い彼女には 取るに足らない
当然のように過ぎてゆく 漠然とした問いの1つのはずだった
〝この美しい草花や蝶は どうして儚いの? 〟
〝人々はどうして 美しい物を美味しい食物を 手にしないの?〟
「それは お前が知らなくて良いのだよ」
「王女様がお知りになる事ではありません」
「愛しい娘よ 何が望みだ?何でも与えよう
食べて飲んで 踊って 暮らしなさい」
問えば その芽を摘まれ 麗しさに覆われて 埋もれてゆく
〝わたし このままで良いんだわ〟
地位も名誉も名声も 富も権力も 初めから在って有る宿命
その血と婚姻によって 更に盤石な生を約束された王妃となった
しかし それも ほんの瞬く間のこととなる
〝我らはボロを纏い 飲むも食うにも 飢え苦しんでいる
王達貴族は 飲み食い歌い踊り着飾り 我ら民を貪り尽くす
それは全て あの王妃の欲望が そうさせているに違いない
あの女の首を差し出せ〟
蝶よ花よ宝石よと 万人に謳われた王女
欲望の権化を撃てと 今や 怒れる民衆の標的
覇権を争う輩に着せられたのは 悪女の濡れ衣
〝民を苦しめていると分かっていたら
贅沢なんてしないわ⁉︎どうして?
わたしが全て悪いと言うの?〟
手を足を 体の自由を奪われて 斬首台に立つ王妃
その基盤となる 曇りない王女で 少女であった頃も
時折浮かんでは 虚しく込み上げる 永遠のような瞬間があった
『わたしはどうして生まれて来たの?
どうして王妃なの?』
そして 断罪されようとする今まさに
生まれてきた 王妃となった意味が解った
「わたしはこの日の為に生まれて来たんだわ
彼らの怒りを鎮める為に 彼らの苦しみを取り去る為に
王達貴族の横暴を終わらせる為に」
こうして 王妃と言うには若すぎる少女は
怒り猛る人々の矛先を 一身に浴びて
穏やかに微笑み 安らかに受け入れて
王妃として 命題として 約束を果たし
天におられる神のもとへ 還っていった
〝何で俺がこんな目に合わないといけない?〟
〝私が何をしたと言うの?〟
何をやってもやらなくても
何を言っても言わなくても
いつも理不尽に 人生が塞がれるというあなたには
結ばれた約束があるのかもしれない
悪に振り回される暴徒に代わり 罪を許し給えと
神に許しを乞う 穢れなき少女のように
その命に 真の輝きがある
比類のない 希望の宝だから
ファイトォー