子どものための教育学
実践編(☆:著者 T:教師 C:子ども P:親)
13 机の下は、お腹の中 ケース2
ケース2:T1
C2「先生、Bくんが机の下にもぐって出てきません。」
T1「授業中、そんなところにいてはいけません。授業の邪魔になります。ちゃんと座
りなさい。」
C2「…………」
T1「先生の言うことが聞けないのですか。勝手にしなさい。」
☆ケース1と似ています。結局、教師は子どもを椅子に座らせるという、教師の思い通りにしようとしたのですが、実現しませんでした。
しかも「授業の邪魔」と言います。
本当に邪魔なのでしょうか。
C2は、とりあえず、自分の領地内でじっとしているのですから、誰にも迷惑をかけているわけでもありません。
C1は、他人の敷地で寝転がるという行為をしていましたので、これは不法侵入に当たります。迷惑な行為です。
いやいや、教室は公共の場所なので、不法侵入とはなりませんよ、と言われるかもしれません。
それなら、公共の場でやってはいけないことの、マナー違反ということにしておきましょうか。
いずれにしても、「授業の邪魔」というより「先生の邪魔」といった方がいいのではないでしょうか。
だって、机の下に潜り込んで、じっとしているわけですから、見え方によっては、欠席者と同じです。欠席する子は、「授業の邪魔」とはなりません。
そして「授業の邪魔」ということによって、C2は「邪魔者」というレッテルが貼られることになります。
さてどうしたものでしょう。
ケース2:T2の場合
C2「先生、Bくんが机の下にもぐって出てきません。」
先生は、Bくんのところに行きしゃがみ込みました。
T2「Bくん、今日は何か嫌なことがあった?」
C2「家を出る前に、お母さんに怒られた。」
T2「そうか、それで不安になったんだね。じゃあ、落ち着くまでそのままでいいから
ね」
先生は、戻ると子どもたちに言いました。
T2「Bくんね、今日家を出るときに怒られちゃったんだって。それでとても不安な気持
ちになって、今お母さんのお腹の中に戻っているんだ。机の下はお母さんのお腹
の中と一緒なんだ。だから、安心できたらまた座れるから大丈夫だよ。みんな、B
くんの気持ちわかる?」
C「僕もそういうことあるよ」
C「わたしもその気持ちわかる」
☆子どもは、時にどこか狭いところに潜り込んだりすることがあります。
それは、実はお母さんのお腹の中にいる時を自分で作り、自分を安定させ
ている行為の場合があるのです。
子どもの行為には、必ず意味があります。
教師は、その意味をしっかり受けとめ、一番いい対応ができるようにした
いものです。
T1の場合は、子どものことより、自分の思い通りに授業をすることを優
先してしまったところが失敗でした。
「そんなこと言われてもそこまで子どものことは解りません」
と言われそうですね。
それでも、そこまで解る先生を目指してほしいと思います。
「目指す」ことはできます。しかし、目指す前に「それは無理」と決めて
いる先生も多いのではないでしょうか。
教育現場では、「子ども理解」という言葉がよく使われるようですが、その目的が、「子どものために」ではなく「教師の都合よく子どもを動かすために」になっていないかと心配しています。
子どものために教師がいるのであって、教師のために子どもがいるのでないという当たり前のことが、意識されなくなっているような気もします。
教師の都合よく子どもを動かすために、「先生は、君が心配だ」と言い、「だから、こうしなさい。そうすれば、大丈夫です。」と教師の思い通りにしていこうとするのです。ここを無意識にやっているために、なかなか子ども理解が進んでいないなあと感じます。