Ⅷ いじめに発展するパターン

 9 自分の気持ちを相手に伝えられない

 
 これは女の子に多いパターンですが、思っているだけで、それを言葉にして伝えないということが、トラブルを引き起こしていくことがよくあります。
 たとえば、「無視された」と、相談にくる場合があります。
 そんなときまずは状況をよく聞いてみます。教師は直接見たわけではありませんので、まずは、その子との話から判断するしかないのです。その時に特に注意することは、自分の頭で勝手に組み立てないことです。わからない部分については細かく聞いてみます。
 「私は話をしようと待っていたのに無視して行っちゃった。」
 「あなたはどこで待っていたの?」  
 「その子の後で。」
 「じゃあ、その子は、あなたが待っていることを知っていたのかな?」
 「普通は、わかるよ。」
 「あなたは何か声をかけたの?」
 「………」
 「何も言わなかったの?」
 「うん。」
 この子の場合、何も言わなくても相手に分かってもらえるはずだという考えが強く、自分に気付いてくれなかったことが、無視されたことになってしまいました。こんなことが実によくあるのです。
 それを「無視された」という言葉に教師が動揺し、すぐに相手の子どもに事実関係を確かめたりすると、かえって問題をこじらせてしまったりします。気をつけたいものです。 


 10 友達の取り合い 

 
 これも女の子によくある出来事です。私の友だちを取った取られたということでケンカになるわけです。間に入った子は、どちらとも仲良くしたいために悩んでしまいます。また、友だちの奪い合いに負けて孤立した子どもは、無視されていじめられていると訴えます。自分が勝っていれば、立場は逆なのです。しかし、親にはそれが見えません。子どもは家に帰り「私はみんなに無視されている」と訴えれば、親にしてみればそれこそ一大事です。これは低学年から中学年にわたってよくあることです。高学年でも油断は出来ませんが。
 これはその学級の精神的文化が、大きく影響します。
 具体的には、友だちに対するとらえ方です。友だちとはいったい何なのか、といったことに対して、子どもたちが普段から意識し、考える機会に恵まれていれば、それほどむずかしい問題ではありません。
 要は、友だちはだれかの所有物ではないということです。
 そして、友だちであるかどうかを決めるのは、自分ではなく相手だということです。
 私の友だちを取ったとか取られたとか言って、自分の取り合いをされたりしたときには「私を人形のように扱うのはやめて。」と、そのどちらにもはっきり怒らなければならないのです。そして、友だちを品物のように扱う人とは友だちにならないことだ、という学級文化をつくる必要があります。
 私が友だちだと決めても相手がいやだと思えば友だち関係は成立しないのですから、友だちの取り合いに必死になるのではなく、『みんなから友だちになってほしいと思われる自分づくり』に必死にならなければならないのです。そうした学級文化をつくっていったときこのような問題は自然になくなっていくのです。


 11 人のけんかに顔を出す 

 
 友だちを助けるという理由で、ケンカの助っ人になる場合がよくあります。一対一でケンカしているところに、助っ人として加われば、一対複数という関係になります。この関係が成立したところで、単純ないじめのケンカから複雑ないじめになります。いじめを早期に解決するためには、人のケンカに顔を出してはいけないことを学級で確立していかなくてはいけません。
 「いじめは絶対に許されない。だから人のケンカに顔をだすことも絶対に許されない。友だちがケンカしているときには、平和的な解決が出来るようにかかわっていくべきであり、本当の友だちなら暴力で応援するのではなく、幸せな解決ができるようにしよう。友だちのためにと思ってケンカに加わった瞬間に、ケンカしている友だちの単純ないじめも深刻ないじめにしてしまうのだ。」といった学級文化を作っていく必要があります。


 12 自分の喧嘩に人を誘う

  
 これは、11の逆のパターンです。特に高学年の女子の、集団で無視するという形としてあらわれます。
 ケンカという単純ないじめは、多くの場合、一対一の関係から始まります。集団でいるときも、その中のだれかとだれかがケンカを始めるわけです。
 いざケンカになったとき、自分を安定させるために、だれかに同意を求めることがよくあります。大人であれば、愚痴をこぼすというようなことですが、子どもの場合、「もうあの子と遊ぶのやめようよ」といったことへと発展していきます。その輪が広がれば、力関係の弱い子が、みんなから無視されるという結果を招きます。
 これは、誘われたときに、これは「深刻ないじめになるぞ」ということに気が付けなければいけません。そして、そのケンカは、「あなたのケンカであって私とは関係ないわ」という立場を守れるかどうかということになります。
 友だちのケンカに自分が入った瞬間に、その友だちをいじめっ子にしてしまうのだ、という認識を持つ必要があり、その友だちが本当に大切なら、いじめっ子になんかできないはずだ、友だちを大切にするということはどういうことなのか、よく考えていかなければいけないということを、その学級のモラルにしていくことが大切なのです。