子どものための教育学
実践編(☆:著者 T:教師 C:子ども P:親)
16 相手を低めることで、自分を高める②
C「先生、Aくんが、授業中に本を読んでいます。」
T「そうですか。それはいけませんね。」
Cは、Aくんのところに行き
C「Aくん、授業中に本を読んではいけないって、先生が言ってたよ。」
T「Cくん、ちょっと待って。たしかにAくんが、授業中に本を読んでいることはよく
ないけど、授業中に、席を立って、Aくんに勝手に話しかけることもよくないことで
はありませんか。」
C「先生がいけないと言ったから、ぼくが注意してあげました。」
T「先生は、Cくんに、Aくんを注意してとお願いしましたか?」
C「していません。」
T「今は何をするときですか?」
C「漢字練習です。」
T「そうですね。Aくんは、漢字を練習しないで本を読んでいます。Cくんは、漢字を練
習しないで、Aくんに注意しています。先生から見るとどちらも漢字を練習していな
いので同じようにいけないと思いますよ。」
C「先生、今絵を描いてもいいですか?」
T「今は漢字練習の時なので、絵を描くことはできません。」
C「先生、Bさんが、授業中に絵を描いて遊んでいます。」
T「そうですか。」
CはBさんのところへ行き
C「Bさん、授業中に絵を描いていたらダメなんだよ。先生がダメって言ってたよ。」
T「Cさん、ちょっと待ってください。あなたは、今先生に『絵を描いていいですか』
と聞きに来ましたね。だから、あなたに『絵を描くことはできません』と答えまし
た。わかりますか。」
C「はい、わかります。」
T「すると、あなたは、Bさんが絵を描いていると先生に告げました。」
C「はい。」
T「だから先生は、『そうですか』と言い、Bさんが絵を描いている事実を知りまし
た。先生は、あなたに対して『ダメだよ』と言ったのであって、Bさんがやっている
ことに対しては、何も言っていません。それなのにあなたは、Bさんに『先生がダメ
って言ってたよ』と言いに行きました。先生は、あなたにはダメだよと言いました
が、Bさんには言っていません。」
C「じゃあ、Bさんはよくて私はダメなんですか?」
T「違います。あなたの目的の問題です。あなたが先生に『今絵を描いていいですか』
と聞きに来たのは、『ダメ』という先生の言葉を引き出し、それを持って、Bさんに
注意することが目的となっていました。今は、漢字練習の時間であって、サボってい
る子を注意する時間ではありません。絵を描いているBさんが悪いというなら、漢字
練習をせずに友だちを注意するあなたも悪いことになります。」
T「Cくん、どうしてタブレット使っているの。」
C「Dくんが、使っているからです。」
T「なんでDくんが使っているんですか。」
C「知りません。でも、Dくんが使っています。」
T「そうですね。今は何をするときですか。」
C「計算練習です。」
T「それでは、計算練習をしないといけないね。」
Cは、Dくんのところへ行き
C「Dくん、今はタブレット使う時間じゃないって先生が言ってたよ。使っちゃダメだ
よ。」
T「Cくん、ちょっと待って。Dくんには、先生がやってもいいよと許可しました。な
のにどうして、あなたが『だめだよ』とやめさせるのですか。先生は許可している
のに、何故あなたがそれを禁止するのですか。おかしくありませんか?」
C「なんで、Dくんはよくて、ぼくはいけないんですか?」
T「だから先生は、あなたに聞きました。『どうしてDくんはやっているんですか』と。
それを確かめもせずにあなたは、Dくんに『ダメだよ』と言いに行きました。」
T「Dくん、あなたはどうしてタブレットを使っていたのですか?」
D「計算問題を全部やったので、先生にタブレットで勉強していいですかと聞いて、先
生が『いいです』と言われたので、使っていました。」
T「Cくん、Dくんのどこがいけないのですか?」
C「いけないところはありません。」