【子どもに 何を 望みますか?】

        What Do You REALLY

         Want For You Children?

 親はだれもが、自分の子には、あらゆる点で限界をもたない人間に成長し、可能性を十分に発揮し、強い感謝の気持ちをもって、生活を楽しんでもらいたいと思っている。

  常に人生を楽しむ~この能力を身につけた人間を「無限界人間(ノー・リミット・パースン)」という。

  そして、「無限界人間」は、だれでも育て上げることができる。

  「無限界人間」は、自分が接する人を、自分の意のままに動かそうとは決して思わない。

  何事であれ、執着しすぎると、かえって、それがうまくいかなくなることを十分わきまえている。どんな問題に対しても、さまざまな要素を組合せながら対処できる。

  自分や他人に貼られたレッテルに、決して左右されない。

  純粋な子どものような、正直な心で人と接し、どんな状況でも想像力を十分働かせ創造性を重視する観点から物事に当たる。     ウェイン・W・ダイナー

 

   ある先生のお話です。朝、職員打ち合せが終わると同時に、4、5名の子があわててやってきまして、「先生!大変だよ!」と言うのです。

  私はまず頭に浮かんだのが、『新学期早々、やっぱりか』という思いでした。

  その思いを押さえて「どうしたの?」と聞くと

  「MくんとYくんが喧嘩してる」

  「Mくんがね、Yくんに首しめられとる」

  「Yくんが机倒してね」

  「みんな逃げ回って」

  「とにかくたいへんなんだから早く早く」

と矢継ぎ早に言葉が飛んでくるのでした。

  状況はよくわからなかったのですが、話の内容からすると、どうもYくんがMくんをいじめているようなイメージをわかせる内容でした。

  「だれか、けがしたような子はいないの?」と聞くと、

「みんな逃げてるから大丈夫だよ」

というので、

「それなら、良かった。どんな喧嘩か楽しみだね」

などと話しながらあえて慌てないように歩いていきました。

  さて、教室に戻ると、騒ぎはおさまり、Yくんは何事もなかったかのように落ち着いていました。Mくんはというと、やや興奮気味で目に涙を浮かべていました。

  「どうしたのかな?」

  「Hくんがね、ティッシュ借りようとしたら逃げて、OくんやKくんも逃げるもんで怒れて……」

  どうも職員室にきた子どもたちの訴えとかなり違っているようで、だいたいYくんの名前は出てこないのです。それに何がどうなったのかよくわかりません。そこで、Mくんを座らせて、落ち着かせてみんなでMくんのはなしを静かに聞きました。

  その話によると、かなりひどい鼻水が出ていたので、Hくんにティッシュを借りようとしたところ、Hくんは逃げはじめ、まわりにいたA、K、Oくんが逃げ、その周辺にいた女の子たちも逃げ回ったため、怒れてしまって喧嘩になったというものでした。

  そこで、Hくんにどうして逃げたのかと聞くと、「だってMくんが、鼻水を付けようと近づいてきたもん」というのです。これは結局、Hくんがそう思い込んだだけということになりました。

  そして、A、Kくんはといいますと「ただ面白がって逃げた」ということで、Oくんはだれかが「呪いだ」といった言葉を聞いて逃げたというのです。また、周辺にいた女の子もその騒ぎにつられて逃げ回っていた、というものでした。

  その後たっぷり時間をとってみんなでどうすればこんな騒ぎにならなかったのかを話し合ったのですが、今ここで問題にしたいことは、Yくんの名前が一向に出てこなかったということです。

  そこで、最後のまとめで、「さっき、先生のところに言いにきた子たちは、YくんがMくんの首を絞めて……なんて言っていたけど、Yくんは、いったい何だったのかな?」と聞くと

  「先生ぼくそんなことしてないよ」とYくん。

  「そうだよ、MくんがOくんの机倒して、Iくんにあたったもんで、Mくんを廊下にひっぱっていっただけだよ」とまわりの子が説明してくれました。

  「だったら、Yくんはいいことをしていたんだね。」

「うん。」

  「今日みんなのしたことは、いいことをしている子をまるで悪者のように言い、鼻水を流して一番苦しんでいる子をさらに苦しめてしまったということだね。それは絶対にいけないことだってわかるよね。このクラスは、苦しんでいる子、悲しんでいる子を助けられるクラスにしようよ。」

と話を結んだわけですが、話しながら一番情けなかったのは、子どもたちではなく自分自身でした。はじめに子どもたちの訴えを聞いたとき、

『Yくんならやりかねないな』

と自然に思ってしまったのです。自分のなかにYくんに対するレッテルが貼られてしまっていたのでした。

  ~レッテルをはってしまう~つまり先入観で判断してしまうことの恐ろしさをYくんに教えてもらいました。

  余談になりますが、実はYくん、この二日前に、渡り廊下と階段のしたに落ちていた゛うんち゛を発見し、私と一緒に掃除してくれました。この一年間沢山のことを教えてくれそうです。

 

 ☆この先生は、この出来事を振り返りながら、自分の想像力の足りなさと、先入観で子どもを見てしまったことを反省しておられました。

 教育は本当に難しいですね。

 そんな大変な仕事を頑張って見える先生方本当にありがとうございます。