11 真実

 その時。

 黒い布をかけた一つの(ひつぎ)が、しずしずと運ばれてきた。

 そこに立つセリヌンティウスは言った。

「これはメロスです。『私は先に行く。7人の人よ、あとに続いてくれ』メロスはそう言い残して死にました。メロスは、一度立った勇士たちを、誰一人迷わしてはならないと思ったのです。だれが最初とか、だれが最後とかではなく、自ら立った“選ばれた勇士”の誇りを皆に全うさせたかったのです。そのためには、自分が、真っ先に、手本を示す以外になかった……」

 セリヌンティウスは、涙で言葉をつまらせた。

 ここに真実の『勇者』がいた。

 7人の魂は奥底(おうてい)から震えた。そして、大磐石(だいばんじゃく)の決意で、皆が見守るなか、街の外へと、歩み始めた。

 もう、何の迷いもなかった。晴れ晴れとしていた。

 姿は罪人でも、心は皇帝であった。王者であった。真に価値ある生き方を見つけたのである。

 他の何ものにも、決して揺れることのない不動の生き方である。