ゆりの出勤日。
「実は私、パニック障害でバスや電車に乗れないんです。」

「迎えに来てもらえませんか?」

えー。面接のときにソレ言ってよ。
まあすごくスラっとして美人な子だし、
キャストとしては逸材かもなあ。と、
私が出勤する時にちょっと遠回りにはなるけど、
彼女を車に乗せて行くことにした。

待ち合わせ場所で商店前のベンチに座っている彼女は、
とても頼りなく儚げで、不安そうにしていた。
私を見つけたときにパァッと明るい表情になる様は、

まるで小さな女の子が、
ずっと母親の迎えを待っていて、
やっと現れた母親に向けたような笑顔の瞬間だった。
 

可哀想なような、嬉しいような、切ないような、

なんとも言えない複雑な気持ちになった。

 

それから毎日私の車で一緒に出勤するようになり、

いろいろ話していた。

大体は私に対する忠誠心だった。

私もおだてられて悪い気もせず、
うかうかと良い気分になってドライブがてらの出勤を楽しんでいた。