生理学に生物学、解剖学に血液学、公衆衛生学に免疫学…
分かってはいたもののエベレストに到達しちゃうんじゃないかと思われるほどの書物が、一気に配布された。
どうやって持ち帰れと言うのだ。
ようやく私は現実を知る。
周りを見渡す。
そこは一面お花畑ならぬ
「お利口ちゃんの無菌室」
という具合。
つまり同士となる仲間は、仲間にも同士にもなれそうもなく。
私は一層、都会の孤独感に埋め尽くされたのである。
それでも勉強自体は楽しかった。
勉強量が半端ないカリキュラムだから、週に換算しても睡眠時間は平均4時間以内はザラだったように思うけど、やりがいみたいなのを感じた。
ただ、やってもやっても終わりのない勉強時間は、今日ある未来が何か巨大なものに巻き込まれているようにも感じ、私が私じゃなくなるような。そんな不安は、何をしていても否めずにいた。
そんな時。
学部全体で飲み会が開催される。
運が良ければ、卒業するまでツルむお友達を見つけられるセレモニーなんだろうけれど、何分、箱の中は苦手。
二次会のカラオケで、つまらないので歌を歌った。
ところが、これが大変にウケたのだ。
私としては電子音で歌うのはシックリと来ず、あまり喜ばしいものではなかったけれど、みんなは違ったのだ。
カラオケがイコール「歌」そのものであり、上手い下手の基準にもなる。
もしかしたら、この時が
私の中で、世の中の基準というものを初めて意識した瞬間だったかもしれない。
そうして、その数週間後。
そのカラオケを機に、挨拶を交わすようになっていた一人からカラオケに誘われるのだ。
これが世の中の「付き合い」ってもんなんかね。
と思いながら、身支度をして出掛けていったのである。