私達はターミナル・ガイド。
死んだ人間を迎えに行き、死者の世界へと連れて行く役割をもつ。
次の仕事先は寂れた町にある一件の民家。そこで一家心中がおきたのだ。
それだけなら、人数は多く面倒くさいがそれほど大変な仕事ではない。
しかし、今回の仕事はラフィーリアと一緒に行う。それは次の仕事が厄介なものになることを示しているのだ。
「詳しい事情は聞かされねーしラフィーリアの名はでてくるしぜってー一筋縄じゃ行かねーだろ‥‥」
「まあ、私達には大した力が無いことくらい向こうも知ってます。無理難題を押しつけたりはしないでしょう」
「まあな‥‥‥」
死者の世界から続く階段をおりていくと、今回の仕事先が見えてくる。
一家心中がおきた民家。そこから少し離れたところに黒い影を見つけて近づく。
「おまたせしました」
「‥本当に遅いわね」
「悪かったよ。で、今回はどんな仕事だ? お前が出てきてることからして、また悪霊とかが絡んでるのか?」
私達とラフィーリアの実力は雲泥の差だ。人間の世界ではラフィーリアは上司にあたり、フォルディエルのような口のききかたは許されないのだろう。
だが、ターミナル・ガイドには力の差はあっても位の差は存在しない。
それに、口の効き方やお互いへの態度なんて皆気にしないのだ。
「人を悪霊専門みたいにいうのやめてくれる?」
「別にそうは言ってねーよ。でもお前の仕事の大半は悪霊絡みなの、事実だろ?」
「仕方ないでしょ。悪霊祓いの経験や力を持ってる死神、そういないんだから」
「そう簡単に得られる力じゃねーからなぁ」
「‥悪いですが、今回の仕事について教えてもらえますか?」
「あぁ、忘れてたわ」
横入りは気が引けたがこのままだと話してくれそうになかったので訊いてみた。
「あの家には家族5人が暮らしていたわ。で、何が理由かは知らないけど数日前に一家心中。そのなかの1人が悪霊化」
「やっぱり悪霊絡みじゃねーかよ‥‥‥」
「悪霊を捌きつつ4人のお迎えはキツいからね。そっちはあなた達にお任せしようと思って」
それならば私達の仕事はそう難しくもない。悪霊祓いに興味はあるが、自分の仕事に専念しよう。
今回の仕事場である民家に入ると中は悲惨な光景だった。これはどちらかというと無理心中に近いのかもしれない。
適当にドアをあけるとそこは子供部屋だった。血が飛び散った部屋の隅にあるベッドには真っ赤な子供の遺体が横たわってる。そしてその脇には自らの体に寄り添うように女の子が腰掛けていた。おそらく報告にあった中で長女にあたるのがこの子だろう。
彼女は静かに駆け寄るとフォルディエルのローブをそっと握った。
「‥‥‥前に本で読んだ。死んだらあの世からお迎えが来るんだって‥‥‥。行くんでしょう?」
その本は作家が適当に書いただけだろう。でもおかげでだいぶ仕事が楽になる。
「ええ、行きますよ。お母さん達はどこにいるのですか?」
彼女はそっと歩き出した。ついて行くとたどり着いたのは両親の寝室と思われる場所。
しかし部屋の前で女の子は立ち止まった。おびえてるようにも見える。まあわからなくもない。部屋の中からは禍々しい気配が漂ってくるのだから。
「どうやらこの部屋の中に例の悪霊がいるようですね」
「そうね。この子達は2人に任せるわよ」
「はい。ラフィーリアは悪霊に専念してください」
ラフィーリアがゆっくりと扉に手をかけたのだった
