石田 徹也 展 | 現代アートは心への入口

現代アートは心への入口

自分を知る為にアートを日常生活の一部に。

とうとう、この日がやってきました。

今日ご紹介するのは、石田徹也さんです。

9/7より栃木県 足利市立美術館で個展が始まりました。


$現代アートは心への入口


勿論、初日に足を運びましが、いやぁ、最高の時間を過ごせました。会場を後にする時には、不安、悲しみ、皮肉などの感情を抱え、決してスッキリ壮快!という感覚ではなく、でも、暗~く落ち込む訳でもなく、充実した時間を過ごせた、でも心の中はモヤモヤって感じです。

これって、どんな事が会場の中で、私の心の中で起きたのか書いていきたいと思います。

数ヶ月前に個展が開催される事が分かり、事前情報として、私は気になる個展リストを月別に作成しているのですが、9月の欄にすぐに書き込みました。それから、もう待ち遠しくていっぱいでした。また、石田さんの多くの作品に囲まれて時間が過ごせると。

前回個展を観たのは2008年 練馬区立美術館です。あれから約5年が経ちました。

私が石田さんの作品を初めて目にするのはそれから約1~2年前だったと思います。そうすると、今から6~7年前ですね。

実は、現代アートに興味を持つきっかけが石田さんの作品でした。

それまでは、アート自体に興味がありましたが、ヨーロッパの中世の絵画を中心に観ていました。中世の当時はどんな生活をしていたのだろうか、どんな考えを持っていたのだろうかなど、当時の時代背景にスポットを当てた見方でした。

それが、石田さんの作品を観た時から、「中世」ではなく、「今」に時代がタイムスリップし、焦点が「他人、一般」から「自分」に変わりました。そう、「今の自分」にです。

石田さんの作品と向き合うとそこには、「今の自分」が見えてくる感じがするのです。
決して表面的な作品との触れ合い(印象が強い作品だった、ちょっと気持ち悪かったなど)に終わるのではなく、作品から得られる自分との接点をきっかに、自分の心の中を見つめる行為に移行していくのです。

ですので、石田さんの作品に囲まれると、自分の心の中に入り込んだような感覚になります。

本展でのメインの作品としても扱われている

「飛べなくなった人」(1996年)※画像リンク

という作品があります。
約20年を経た現代でもこの作品に共感を抱く部分が多くあります。

デパートの屋上や遊園地にある子供の遊具を思い浮かべます。題名にあるように、昔は自分の好きな事をやれたいた年代から、成長するにつれ社会のしがらみなどから思うように自分のしたい事が出来なくなる自分。飛び立ちたいけど、何かに掴まれていて、繋がれていて飛べない自分。
もしかすると、周りの環境ではなく、自分自身の問題で飛べなくなったかもしれません。自分で自分の限界を悟り。

憂鬱な表情、どんよりした空、錆びれた飛行機。

よく見ると、隣にもそんな同じように繋がれて飛び立てない飛行機が見えるではないですか。。もしかすると、もっと視点を広げると、もっと、もっと多くの繋がれた飛行機があるのかもしれません。

そんな時代です。今は。自分は。


もうひと作品。

「無題」(2003年)※画像リンク

バスの中の水槽になんの迷いも無く入り込む熱帯魚、そして1人立つ自分。

この作品から何を感じますか?

勿論、想像するのは自由です。当たり外れは有りません。

私はですが、

定期的に止まるバスに迷いも無く乗り込む。行き先はバスが決まったバス停で我々を降ろしてくれます。乗ってしまえば、考える事は必要ありません、このバスで良かったのか?そもそもバスに乗るべきだったのか。

でも、周りの景色ははどうでしょう。色も無く、花も一つも咲いていない道。それで、満足なんだろうか。振りかえって、バスに揺られ通って来た道が自分の通るべき道だったのか。バスの乗り心地で気付かず一生を過ごしてしまっていないだろうか。

ある1人がそのバスから降りてみた。不安でいっぱいの表情。今迄バス乗ってしか外を歩いた事が無かったのに、降りてみたら自分で歩まなければならず。でも歩いた事がない。その先に何があるのかも分からない、不安。でも自分で決めた事。

そんな事を作品から読んでしまいます。そして、いつしか作品を観るではなく、自分の心の中との対話が始まるのです。

これが、ブログのテーマ

 「現代アートは心への入口」

に繋がっていくのです。

石田さんの作品表現は確かに重く、恐く、気持ち悪いかもしれません。
でもそれは表面的な部分であり、その表現にある本質を感じると自分の心の中にあるものと対して変わりありません。奇麗なものだけじゃありませんから、世の中は。

でも、これだけ作品に接点を持てるのも石田さんとは年が1つ違いで同じ時代を生きて来たからかもしれません。そんな石田さんと作品を前に話がしたかった。

現代アートの醍醐味の一つが作品を前に作家さんと意見を交換出来る事のはずなのに。

石田さんとは出来ない。

石田さんは2005年に31歳でこの世を去りました。多くの作品を残して。

石田さんの作品に囲まれていると、自分の心の中に入り込んでる錯覚に。

いや、この感覚が本当の自分なのかもしれない。

会期終了前にまた足を運びたいと思います。自分の心の中に入り込みに。

是非、少しでもご興味を持たれた方は、足を運んで下さい。充実した時間を過ごして下さい。


石田 徹也 展 「ノート、夢のしるし」

場所 : 足利市立美術館
会期 : 2013年9月7日 ~ 10月27日 ※休館日はHP確認して下さい。