だいぶ体調も改善し、
カテと外来に関しては通常通り実施しています。
ただ、初診は多少制限していますのでご了承ください。


以下、患者さんご本人の許可を得て、
カテの治療回数の考え方について説明します。


がんカテセンターの治療の基本は
抗癌剤の動注療法です。
さらにこれに塞栓を加えます。
治療の種は動注の方です。


理由はいくつかあります

・転移性肝癌は、塞栓単独では制御できない
 たとえ、塞栓1か月後に壊死ししても、早期に再発する
 また再発する際は、増悪速度が加速することが多い

・塞栓は、腫瘍を壊死させる効果があるかもしれなしが
 同時に肝動脈を痛める
 これは、当院のように、ひとりの患者さんに
 10回以上カテをしている施設でないとわからないかも
 しれませんが、いくらビーズを使用しようとも
 いくらビーズが腫瘍の中まで届くとはいっても
 その腫瘍までの経路(栄養動脈)自体も
 治療に伴い少なからずダメージを受けます。

→ 栄養動脈の荒廃は、その後のカテーテル治療の
  効果低下や治療不可能につながります

・腫瘍の血流は複雑です。1本の血管で1個の病気。
 こう思ってる患者さんが本当に多いのですが
 1つの病気が複数の動脈で栄養されることは多々あり
 それを解明するためにIVR-CTをうまく使います。
 塞栓でメジャーな栄養動脈を痛める行為は
 その後の治療をどの血管からするか?複雑化する
 可能性があります



当院は、上記のような塞栓のデメリットを考えて
塞栓の位置づけを以下のように考えています

1)より強力に一時的に腫瘍減量を得る必要がある時

2)肝臓が塞栓に耐えうる予備力がある時

3)動注との併用が有用な癌腫の場合

4)そもそも、塞栓が可能な臓器、血管かどうか
  塞栓が実際に可能な臓器は限られており
  肝臓、肺、一部のリンパ節、一部の播種などに
  限られます。
  消化管は、腫瘍壊死のための塞栓は禁忌です
  (消化管出血の場合は除く)


ですので、実際に当院でカテを提案する場合は
まず以下のことを考慮します

1)そもそも他に有望なガイドライン治療は残っていないのか。残っているガイドライン治療より、うちのカテの方が有効と考えられるのか(順番のことです)

2)カテを挿入してよい動脈、臓器なのか
  肝臓は塞栓まで実施しやすく最も実施しています
  また、余命に最も影響するひとつが肝転移なので
  治療する意義が高く、肝転移は当院の得意分野です

3)動注が効きやすい癌腫なのか?
  一般的には、消化器がん(特に大腸)や乳がん
  頭頚部、婦人科癌などの転移が効果が得られやすい
  です。膵癌は現在も動注が効きにくいです。

4)もうひとつ大切なのは、現在のかかりつけ医との
  関係ですね。遠方の患者さんが多く
  そもそもカテーテル治療に否定的(ガイドラインで
  ないので)な先生が大半なので、当院は総合病院で
  倫理委員会も通してしっかりと全身管理もして
  カテをさせてもらっていることや、当院の成績
  (論文や学会発表の成績)も書面や、時に直接
  先生にお電話させてもらってから治療を導入します



さてさて、脱線しましたが
自分で書くのもなんですが、
僕は、自分の患者さんとの関係が他の先生方よりも
はるかに良好だと思っています。
これは、自分のキャラクターに依存してると思いますが
他にもうちの他のスタッフたちのサポート
治療結果に対する満足度
がん治療全体に対するマネージメント
(複合診療科にも支えて頂いている)
など、満足点は多いと想像しています。

なので、時々書きますが
患者さんとはあまり敬語ではなすことはないですね。

そして、今後のこと、命のことも
患者さんに合わせて、真剣に説明させてもらってます。

結果として、雑談も多くなりますし
僕が〇〇府の人が苦手なことも、僕の患者さんの中では
有名です(笑) よく口にしているので

昨日カテさせて頂いた方は、
約1年前に、僕の初診外来に来て
もう車いすでしか移動できないような全身状態の悪い肝転移の方でした。前医はとうに治療をあきらめていて
一般的には緩和病棟に入院、余命も、とても書けるような長さは期待できない状態でした。

時々こういうことがありますが、
たまたま僕が一番得意としている癌腫の肝転移で
肝転移さえ制御出来れば、肺転移もリンパ節転移もありますが、この方は元気になれる、そう感じました。

僕は、がん治療の最期の砦ではないし、神様ではありません。ただ、カテという武器を本当にうまく使い、その他の緩和治療を含めた多種の治療と組み合わせて全身管理することに多少なりとも自信がありました。

5年以上前の僕なら、即座に治療を断りお帰りしてもらったと思いますが、その時の僕は、即座に緊急入院してもらいました。ただちにステロイド含めた緩和治療を開始しつつ、数日後から動注を開始しました
(このような状態の悪い方、腫瘍量の多い方に最初から塞栓を追加することは厳禁です)

このような状態を僕は
緊急的な緩和動注
と表現しています。

結果的には予後の延長を期待していますが
まずは、ほぼ寝たきりの患者さんを少しでも元気にして
がんの苦しみを緩和することが
一番本人も希望することです。

がんで状態が非常に悪い患者さんは
これは本人さんたちから聴いたことで実際はわかりません
わかりませんが、
確かに一日でも長生きしたいとは思い続けるとは考えてらっしゃるとは思いますが
でも、一番は、この苦しみを少しでも和らげて欲しい
こう考えるはずです。

緩和の薬物治療も非常に重要です。
僕も即座に開始しました。
ただ、それでは足りません。

肝転移に伴う癌性症状の緩和は、緩和領域でも難しいです。ステロイドの反応が悪い倦怠感や、全身のいてもたってもいられない不快感などは、なかなか緩和できません。
腫瘍熱も、腹部の膨満、これは腹水だけでなく
20cmくらいまで増大した肝転移そのものでお腹が張っていることもあります。

このような症状をまずは軽減したい。

ほとんどの施設は、この状態を知ると

諦めます。

僕も、諦めるような病態、いくつもあります。
がん性腹膜炎や胸膜炎のような
水を伴う病態はカテで制御はかなり難しく
お断りすることが多いです

ただ、肝転移が主体の病態は
かなり厳しい状態でも即座に転院させてカテにもっていったことがこの数年、何人もいました。

自分でもよくやるなあ、といま、思います。


さてさて、結論ですが

この患者さんは約1年、動注、塞栓、全身薬物療法を組み合わせながら、あと採血値もひどいものでしたから内科的治療を散々しながら

今ではカテの入院時以外は自宅で普通に生活されていますよ。

非常にお元気で、まだ肝転移はそこそこの状態ですが
いつも僕が書く、

小さくしてから横這い

をうまくいけています。


肝機能もいいですね。


僕は、カテだけで、他の施設で治療が難しくなった患者さんの後半戦治療が成立するとは思っていません。

カテを中心に、集学的に治療する必要があります。
その為には総合病院であることは必須ですし

患者さんに臨むことは
完治することだけを考えてはだめ
まずは、元気になること
病気を横ばいにすること
結果として元気に長生きすること
これを説明し、このような感じで

現在も10回以上肝転移にカテをして
長期間経過を見ている人たちが本当に多いです

こうなるともう戦友ですねえ。

先々週、体調が本当に悪かったときは
うちのスタッフだけでなく、
戦友の患者さんたちも本当にねぎらいの言葉をくださいました。


僕は、患者さんに恵まれています。
本当に有難うございます。

あっ、京都のお菓子、大好きです(笑)
今度京都に行って買ってこようと思いました。
生姜、うまかったなあ。



あと、先月でひとり、うちで頑張って
うちのセンターの中心でみんなをまとめていた
放射線技師がひとり退職しました。

その時は彼を守れなかったことも含めて
本当に心が折れましたが、
これ、見てるかい
安心してくれ
残った君の後輩や看護師さんたちが
同時に体調不良となった僕の面倒をみながら(笑)
君が想像できないくらい、ちゃんと頑張って
カテを支えてくれているよ。

きっと、君が辞めたことと、僕の体調不良が
結果として、彼ら彼女らを鼓舞したのかなあ。

チーム医療ってこういうことなんだなあと
今でも、カテ室、病棟、外来のスタッフには感謝しています。

まだ以前のキレキレにはほど遠いですが
ぼちぼちやってるので、君も頑張ってくれ。
たまにはまた飲もうな。



本日はここまでとします。

色々あってブログの更新回数が減ってますが、
その分

10月7日の講演会は
カテ治療やうちの病院について
わかりやすく説明しようと思いますので、

また皆さん、興味のある医療関係者さん

ぜひご参加ください。


ではまた。











「吹田徳洲会病院 がんカテーテル治療センター」



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