本日、2投目。
「あいー↑」ネタがどうしても書きたかった日でして
これはあっさり書きますが、
とても大切なことです。
京都大の本庶先生が今年のノーベル医学生理学賞に決まり、研究成果である「免疫療法」への関心が、恐らく一気に高まったと思います。
メディアでオプジーボやキートルーダに対して盛んに取り上げていましたが、やはり良いことだけを強調するお祭り騒ぎ的な演出が多く、例えば、この研究が今世紀最大の医学界の偉業と言ってもいいくらいの、しかし医学研究は非常に、非常に大変であることや、またその研究成果が実際の臨床でどこまで現状、応用され、どのくらいの成績が出ているのか、どうしてもメディアの演出は偏りがあり、正直、「怖い」と思いました。
「これでがんは、完治する」
がん患者さんやそのご家族は、そう思ったことでしょう。
オプジーボやキートルーダも、さらに新薬も含めて、実臨床や臨床研究で今も投与されています。
適応疾患もどんどん増えて、がん治療の現場で身近な薬のひとつとなりました。
ただ、使ってる、その結果を患者さんから直接感じている我々医療者にとって、
まだ、万能薬ではないです。
免疫治療で、がんが消失する、幸運な患者さんはほんの一握りです。
我々が免疫治療がすごいと感じるのは、従来の殺細胞性抗がん剤とは全く違う結果が得られ、また従来の抗がん剤と併用できる可能性も出てきて、治療の幅が広がった、これは事実です。
ただ、免疫治療でがんが消失することは、本当に幸運な人だけです。
がん治療は、合わせワザ、集学的治療です。
免疫治療は、数多いがん治療の軸のひとつとなり、大きな希望となりましたが、それだけではダメです。
ガイドライン上、免疫治療よりも推奨される治療があれば、まずそれをするべきでしょう。
手術や、従来の抗がん剤治療。
そうするべきです。
どうしても、
みなさんの大きな間違いは、
新しい=正義
新しい=最善=最強
新しく出てきたものが従来治療の上をいくと思われますが、違います。
科学的に、従来治療に打ち勝ったとき、つまり臨床試験で新しい免疫治療が勝利したとき、はじめて免疫治療から開始するべきとなるわけです。
科学的根拠が証明されていない段階で
目新しさから科学を飛び越えた判断をしてはいけません。
さらに、これが一番恐ろしいことですが、
みなさんは、きっと
免疫治療
このキーワードでネット検索するでしょう。
そして、
怪しげな、
完治します
副作用が少ないです
自費です
こういうフレーズのクリニックでやってる免疫治療を目にすることでしょう。
なんども書きます、あえて書きます。
こういうところに行ってはダメです。
有効性が証明されている免疫治療は、オプジーボなど「免疫チェックポイント阻害剤」と呼ばれる薬による治療が中心で、効果が明らかにされた結果、国が承認して保険が適用されたのに加えて、国内の診療ガイドラインでも推奨されています。
これ以外のほとんどの免疫療法は、一応免疫的作用をうたってクリニックで紹介されてますが、効果はきちんと確かめられていません。
免疫治療をうたう多くの民間クリニックが提供しているのは、自費による広義の免疫療法です。こうした治療の全てを必ずしも否定するしてはいませんが、本当に安全なのか、有効であるのか、まずは臨床研究によって検証されるべきです。
冷静に考えてください。
臨床研究され、結果が証明されたものは、日本でも保険診療として提供されているはずですよね?
自費=成果が証明されていない、時に見せかけ、イカサマかもしれない
このように考えて欲しいです
患者さんに高額の支払いを求めてこうした治療を提供するのは順序が間違ってます、詐欺行為です。
人間は、
高い と よく効く
と思いがちですが、
現実の医療は逆です。
良い治療は、みなさんに均等に提供できる環境ができています。保険診療で受けれるはずです。
悪い治療が自費、必ずしもそうではないのですが、
まずは自費と聞いた時点で疑うべきでしょうね。
また、免疫治療には、間質性肺炎や腸炎などの、非常に特有の副作用が起こり得ます。これはがん拠点病院でも対応に苦慮することが多く、運悪くクリニックで受けた免疫治療まがいの医療行為で重篤な副作用を生じた場合、十分な副作用対策をしてもらえず、死に至ることも考えられます。
やはり日本臨床腫瘍学会の薬物療法専門医がいるような施設で受けるべきでしょう。
にゃんこが外来でいうことは、
効果が明らかな免疫療法は限られている
自由診療で行われている免疫療法は勧められないし、選択するなら将来の自分の居場所も考えて慎重に(がん難民問題)
ガイドライン治療がなくなったからといって、藁にもすがる、と言いながら、訳のわからないクリニックの医療行為を高額な料金、具体的には100万円以上、時には1000万以上かけて行うくらいなら、QOLを維持するために適切な緩和治療を受けながら世界一周旅行で贅沢してきたほうがいい
このような話をしてますね。
こういう訳のわからんクリニックの免疫治療に走ってしまう理由は、
がん治療が現状、完治までもっていけるケースが限られている、この現実と、完治への強い人間の願望、両者のギャップが原因でしょう。
常々、共存は時に完治と同等であることを書いてますし、実際に当院の治療を開始して1年以上の方もだいぶ多くなりましたが、心の葛藤をかかえながらも、立派ながんとの共存をされています。みなさん、退院したら、ほぼ普通に生活されています。
完治だけががん治療の正義やゴールではないんです。
本庶先生が開発された免疫治療は、がん治療に革命をもたらしてくれました。
免疫治療が保険診療で適切に受けることができる時代になって、我々はラッキーですね。
だからこそ、ゴールを間違えずに、従来のがん治療を含めて、適切に、集学的ながん治療をみなさんも選択してください。
あと、患者さんの治療に携わる臨床医のひとりとして。
基礎研究をされる先生方には本当に頭が下がります。
研究がなければ治療は開発されません。
僕らがしているがん治療は先人の研究者の絶え間ない努力が礎です。
医療研究をされている先生方が、これからも研究に勤しみ、またそれを正当に評価してくれる社会環境が構築されることを期待しています。
「吹田徳洲会病院 がんカテーテル治療センター」
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