肝転移は血行性転移です。
血液の中にがん細胞、がんのDNAが浮遊し
これが肝臓に付着して育ったのが肝転移。
然るに、肝転移があるってことは、肺など他の臓器に転移があっても何らおかしくありません。
画像で肝転移しかない、って言われても、それはCTで目視できる5mm以上のサイズだけで、それ以下は基本、肺転移は見えません。
当院で肝転移の治療をしている患者さんの大部分は、肺転移も持っています。でも僕は肝転移の方の治療に集中する。
理由は過去に何度も書いたけど、命にかかわるのが肝臓、肺転移はほぼ死因になりえないから。それ以前に、両方同時に治療する医学的治療法がないから、肝臓に絞った治療をしてるんです。
なので、肺転移について、肝転移の治療をしている患者さんとよく話をし、納得してもらったうえで肺に目を瞑って(?)肝臓の治療をしています。(もちろん、毎回肺転移の動向は画像でチェックしてますが)
さて、上記は肺転移の場合。
原発性肺癌はどうでしょうか?
原初性、というくらいなので、もちろん病気はまず肺に出現し、そこから肺の外に転移していきます。
原発性肺癌はカテしてるの?と聞かれたら、以前よりは圧倒的に少なくなったけど、していると答えています。
減った理由?
科学の進歩です。
肺癌の患者は他の癌腫よりもかなり多い。すなわち医学の進展がしやすいんです。研究材料としていろんな薬が開発されます。
特に、遺伝子解析から薬を選んで行うという、今後はどの癌腫でも行われるがん治療の体系の先駆けが原発性肺癌です。
この5年ほどでものすごく治療が進歩し、新薬もどんどん開発されています。
そうなると、がんの後半戦治療の動注療法やTACEの出番が少なくなります。
迷った末に、まだ使える全身薬物があるのに当院に相談に来られる肺癌患者さんには、迷いなく、まずは全身治療をしっかりやり切りましょうといいます。
薬物治療は、皆さんよくわすれていますが、目に見えている病気を小さくするためだけでやるのではないですよ。
目に見えない、潜んでいる転移がそのまま小さい状態で、もしくは消滅させるためにも役立ちます。
これが局所治療には絶対にできないことです。
僕としては、ちゃんとした治療体系が進歩しているのに、それを壊してエビデンスの乏しいカテをするのはちゃんちゃらおかしいと思っています。カテ屋として、あえて白旗を最初から上げています。
むしろ、肺がんでお役に立てるのは、標準治療が尽きてきた状態の患者さんだと思っていますし、決してカテが悪い治療とは思っていません。
僕が原発性肺癌に行う場合は、
1)原発の肺病変、もしくは縦隔、肺門リンパ節転移が、他の転移巣よりも命に関わる場合
2)遺伝子解析の結果、他に有望な薬がない場合
3)階段を登ったりした時に以前より息切れがする(労作時呼吸苦)、痰が増えて生活しにくい(喀痰増量)、単に血が混じる(血痰)、咳をすると血が混じる(喀血)、胸が痛い(癌性疼痛)。このようながん性症状がある場合
この条件に当てはまる場合は原発性肺癌の肺動注を検討します。
転移性肺癌の場合は、気にするなと書いてますが、
原発性肺癌の場合は、がんの大元が肺なので、結構肺に関係する上記症状に苦しまれている患者さんが多いです。
ですので、転移性肺癌以上に肺に対して治療する機会が増えます。
まあ、実際は腫瘍内科医として薬物治療の適応があるのなら間違いなくそちらを勧めますし、皆さんにとってもその方が絶対いいので、そうそう適応患者さんはいませんが。
ちなみに、喀血血痰は、肺癌以外にも結核などの感染症、COPDなどの良性疾患でも起こりえます。
通常はこれら良性疾患に対して塞栓術を行い成績は非常に良いのですが、これががんからの出血となると成績は極端に低下します。数日間止血できても、がんは治ってないので多くは再出血します。これに対して、がんからの出血に、抗がん剤の動注をしてから塞栓術を行った方が成績がいいのでは?という論文を以前書きました。英語の論文ですので探し出して読まなくてもよいのですが、一応載せときます。
これ、喀血のガイドラインですが、一応僕の論文も症例数は少ないのですが載せてもらってます。(表の下から3番目にSekiがいますw)


血がでてると、ただ血管を止めたらいいと思いがちですが、原因の肺癌を制御しなければすぐに再出血します。そこで、抗がん剤を用いた動注と塞栓を同時に行うがんカテは成績が良いと考えています。
というわけで、もうそろそろ薬がないと言われた後半戦の原発性肺癌の患者さんも、癌性症状があったり、将来症状がでそうな場合は治療適応になりえます。紹介先の緩和病院があればそことの連携をしてやることもできますので、選択肢のひとつとして頭の片隅に残しておいてください。