「名画を見る目Ⅰ」を読んで

高階秀爾著1969年

とても古い本。ですが先日ネットで遊んでいて見つけました。即日Amazonでポチりました。とても魅力的な本です。

世界的に有名な名画15作品を作者の目線で解説しています。作者の目線と言っても、高階先生は超高名な西洋美術史の先生ですので先生のお話になっている事は、この世界でのスタンダードと言っていいと思います。

本編では世界的に有名な作品15点を古い順に解説しています。本当に有名な名画ばかりなので、概ね作品を見ると「あぁこれか」と思う作品ばかりです。

私たちが絵画を見るとき第一に色彩がきれいだなぁとか、リアルに描かれているなとかそういうところを見ます。しかし作品には深い背景があります。その背景を知るともっともっと絵を見るのが楽しくなります。その楽しみ方を存分に教えてくれる本です。


名画の見方 作者はもちろん鑑賞する私たちにも一定の知識や全数が必要だと思います。

1.技量 

やはり絵を描くには最低限のテクニックが必要です。キャンバスの扱いや、絵の具の知識、筆の種類や使い方などです。いくら感性やセンスが良くても作品を作品として仕上げるためには一定以上の技量は必要と思っています。

2.気持ち 考え方の表現する能力

作者の気持ちや考え方によって作品全体のイメージが作られます。作品を描く時、明るい気持ちの時は、やはり作品は明るい色調になり、気分が落ち込んでいる時期(短期間の変動だけでなく)暗くなる場合が多いと思います。

しかしこれも全てに当てはまるわけではなく、絵の具の使い方によってはどうしても暗くなってしまう場合もあります。

3.経済

作品には経済状態は大きく影響します。当然、作者に経済的に余裕があるときは、高い絵の具をたくさん使う事ができますし、大きなキャンバスを買うこともできます。また同じサイズであっても、精緻な作りの高価なキャンバスもあれば、ざらざらした荒いものもあります。また経済といっても、作者個人の経済状態だけでなく、作者が活躍した時代や国の経済状態も大きく関係します。当然国や時代が景気が良い時は作品を高いお金で買ってくれる人がたくさんいます。また国が活動的な時(戦争等)はよく売れます。

4.パートナー

これは作者の気持ちとも重なるところも多いのですが、絵画作品は作者のパートナーが大きく影響します。これは概ね男性の画家に言えることだと思います。概して女性の画家にはあまりパートナーの影響は出ないことが多いように思いです。代表的な例では、ピカソは作品の傾向が何回も大きく変わることがありますが、結構な割合で共に行動するパートナーが変わると作品の傾向が変わっています。モネなんかも奥さんが変わったときに傾向が変わったような気がします。画家に関わらずだれでも失恋したり離婚したりしたら気分が変わるので当たり前かなと思いますが。


4.芸術(絵画)の流行

概ね19世紀後半の印象派の前までは絵画の流れは世界(ヨーロッパ)が一体になって進んでいきました。絵画史では中世ゴシックからルネッサンス、ゴシック、ロココ、ロマン主義、写実主義と流れており多少のブレはありますが傍流的な作品はあまり知られていません。その時代時代によって特徴がありその流れの中心で多くの作品が制作されています。しかし印象派以降は分流が激しく世界的な主流は存在しなくなり多くの流れが分岐合流を繰り返しながら現在に至っています。ですから19世紀後半までは多くの画家がほぼ流行に沿った作品を描いていました。しかしそれ以降は「我が道を行く」的な作品が多く分類は後付けされたものが多く全体的なものは無くなっていきます。

また流行という意味では経済や国家と被りますが民主国家時は一般市民の方の経済力が高まり絵画の購買意欲が高まりそんな時は肖像画や風俗画、風景画などの作品が多くなるようです。また、その時代は自分の自宅に飾ることが多いので、サイズも小ぶりのものが多くなり、大きなサイズの大作と言うものは減少する傾向にあると思います。

5.画材の変化・進化

現存するヨーロッパ絵画はキリスト教の教会祭壇画から始まっています。壁画から始まっているのでフレスコ画が主でした。中世には上塗りできるテンペラが登場し表現のバリエーションが増えます。しかし絵画技法の一大転換点は何といっても油彩画技法の登場です。14世紀北方ヨーロッパで生まれた油彩は瞬く間に全ヨーロッパに波及しました。耐久性はキャンバスや板絵では全く問題なく緻密に描写でき、絵の具を混合してもにじみません。重ね塗りによる修正もできる当時としては画期的な技法です。現代においても西洋絵画の主流といえます。

そしてもう一つ大きな変革として19世紀中頃チューブ式の絵の具の登場があります。19世紀以前は画家たちの仕事の中で絵の具の調整は多くの時間と労力を占めるものでした。化学合成色素ができる前は顔料の基となる岩を削って溶剤に溶くとかがありました。当然野外制作などできるはずもありません。チューブができてその環境が激変。戸外にイーゼルを立てて彩色までできるようになりました。

その他に版画等の進化(銅板画の出現など)があります。


5.国家の芸術(絵画)への関わり.                 

体制と芸術  フランスのサロン

日本の従軍画家 オランダ民主政権時の絵画芸術


6.キリスト教の影響

7.


8.国家の体制