2024年5月25日 国立新美術館で行われているマティス展に行ってきました。

とても楽しかったです。予想していたより良い感じの展覧会でした。予想のハードルが低すぎたのかもしれませんが。

5月27日までの展覧会なので、ラスト3日での訪問でしたが、結構空いていてゆっくり鑑賞することができました。当日は、薄曇りの日で、決して完全な好天ではありませんでしたが明るい空で外に出かけるにはちょうどいい日でした。(今の時期は好天ですと暑くて困るようなことがありますので)

地下鉄の乃木坂駅から美術館へ向かっていくと、混雑の激しい展覧会ですと、既にそこから並んでいる場合もあり、ちょっと辟易とする場合もあります。しかし今回の展覧会では入り口までスムーズにほぼ並ばずに進むことができました。事前にオンラインチケットを買ってあったこともあり、ほとんどノンストップで入館できました。

入り口の風景。 ほとんど並ばなかったです。👍
スマホのバーコードを提示して、展覧会チケットをもらって入館しました。例のごとく音声ガイドを借り鑑賞開始です。
余談ですが、音声ガイドって自分のスマホを使ったオンラインのガイドの方が、実際のガイド機を借りるようにも値段が高いです。そこがちょっと不思議で不満です。ガイド機のシステムメンテナンスや清掃等の手間がないのに、オンラインの方が高いのはちょっとです。ちなみにサンクトペテルブルグにあるロシア美術館は、音声ガイド機は有料でしたが、QRコード版は無料でしかも外国語対応でした。
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会場内は前半が写真撮影不可、後半はOKでした。
(というわけで、前半は写真はありません)
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マティスは、画家になろうと、志したのは21歳の時で遅めのスタートでした。初期の頃は、例のごとく写実性を持って、やや絵の具を熱く塗るスタイルで書き始めました。(時代がそうでしたから)
1、本のある静物 1890年 最初に書いた油絵と言われています。
この時代の画家が書き始めるようなやや暗めの典型的な色調のものです。タッチが丁寧で、基本的に絵のセンスはあるんだなと感じされる作品です。
2、燭台のある静物 1897年 この頃になるとタッチがやや大きくなり、色の重ね具合も少なくなって、新しい時代の書き方を取り入れてきているのがわかります。既にこの頃色使いがはっきりくっきりしていて、ゴーガンに通じるような色遣いを感じさせます。ただ、まだ全体に色調が暗く、彼が南仏で書いたような明るい光を感じるような事はありません。
5、ハーモニウムのある静物 1899年から1900年 この作品は、やや抽象化のような雰囲気を持った作品となっています。
9、 日傘を持つ夫人 1905年 この作品はちょっと大きめの点描で書かれていて、ポスト印象派の点描の作品を模したたような感じになっています。(点描の画家シニャックと交流があったみたいです。)
10、マティス夫人の肖像 1905年 20世紀のアンディウォ-フォルみたいな感じです。
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マティスは生涯にいろいろな種類の作品を出かけています。
20世紀に入ると、活動の幅が広がって陶板や彫刻(ブロンズ)などの作品もたくさん作っています。また、木彫の作品や舞台衣装、テキスタイル、木彫家具、銅版画、リトグラフも発表しています。
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12、踊り子(三連画のための周作)  1907年 この作品は陶板作品です。ちょっと制作工程がわからなかったのですが白いタイルに明るめの色調で描かれていて、晩年時代の踊り子に通じるような感じがあります。とてもいい感じでした。
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わたし的には、この頃のブロンズの作品にティスを感じるようなところはあまりなくスルーしてしまいました。また、舞台芸術や木彫家具についても、なかなか勉強不足で、マティスを感じるような事はありませんでした。
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相当時代が飛んでしまいますが
92、ブルーヌードⅣ 1952年 切り絵。マティスの後半生に有名になる切り絵の作品です。踊り子や音楽などと同様に、いくつかの種類の青を使った切り絵です。抽象化されたというか切り絵では抽象的になってしまうのかもしれませんが、マティスの代表的な作品の雰囲気を充分感じさせるものです。体が自分の思い通りにならず、活動範囲が狭われた中で、彼のできる表現の方法を模索した中の切り絵でしたので、私は好きです。

97、花と果実 1952年頃 

花と果実は、アメリカのコレクターから中庭のための大型装飾をオーダーされ、これに応じたものだそうです。縦4メートル、横8メートルのデザイン柄で、基本は4枚の花びらもしくは3つの果実による切り絵が基本単位となり、それぞれが反復されて、全体を構成されているデザインがです。見ていて、あまり考える要素がなくてとてもいい感じです。特にこれがお庭の装飾だとしたら明るくてとてもいいんじゃないかと思いました。とても大きくてサイズ感がいい感じです。きっと明るい庭ができたんじゃないかなと感じます。

115、顔

紙に墨で書かれた顔の作品です。私の印象では、ある程度の考察された構図でゆっくりとした地で作られたのではないかなと感じました。時代を反映するようなシンプルな構図でメリハリのあるコントラスト。マティスの雰囲気がよく出ているような気がします。モデルの表情も明るくて、シンプルな構図の中に楽しそうな雰囲気が感じることができます。

ここからは、彼が晩年、手がけた教会のデザインの作品です。

132、祭壇のキリストの礫刑像と祭壇画

展示の配置で、ブロンズの像と、祭壇のキリストの像が写真の構図に一緒に収まりましたので撮ってみました。両方とも、シンプルな作りで、境界の作りが、きっとシンプルだったんだろうなぁと感じるような作品です。マティスは、この教会の内装のほぼすべてのデザインを制作したようで、壁や窓のステンドグラス天井なども再現されていました。全体がシンプルなデザインでまとめられており、また壁の色も明るくて、とても素敵な教会だったんじゃないかなと感じさせるものでした。

157、黒色のカズラ(上祭服)のためのマケット(正面)

神父様がつける1番外側の上着だと思います。これもシンプルにできていて素敵です。この頃のマティスは、切り紙絵の経験も豊富になっており、単色のデザインも手慣れたものだったのかなと思います。

教会の内装 ステンドグラス


教会の壁の祭壇画デザイン

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概ね2時間ちょっとの干渉でしたが、思ってた以上に楽しめました。

マティスの生涯を見ていく上で、そこそこいい感じの展覧会だと思います。ちょっと残念なのは、結構活発に活動していた。ニースでの油絵の作品が少なく、そこの辺がちょっと残念でしたが、マティスの作品を集める事は結構お金や時間もかかるでしょうし、仕方がないかなと言う思いです。

教会の立体的な再構成は、雰囲気を感じるには充分で、こういう展示はとても素敵だと感じました。

トータルで見てとても良い展覧会だと思います。楽しかったです