それからというもの、私は幽体離脱を簡単にこなせるようにまでなった。
そう、いつでも出来るのだ。
しかも、幽体離脱中は誰にも見られない。
つまり、透明人間なんだと・・・
このような力を備えると、人間いろいいろと欲が出てくるものだ。
ある日のこと、仕事が早く終わり、久しぶりに明るいうちに家に戻れた。
当然、私一人だ。
妻も仕事が遅く、ほとんどすれ違いの毎日なのだから。
そして、一人で夕食を済ませたあと、リビングの部屋でゆっくりくつろいでいると、また幽体離脱を始めてしまった。
しかし、離脱をすると、とても楽になるのだ、だから止められない。
本当は、これってやばいのかも知れないんだけど。
もしも、体に戻れなくなれば、死を意味するのだろうから!
部屋の中をゆっくりと浮遊し、そのまま壁を突き抜けて隣の部屋へ・・・
これが、たまらなく快感なのだ。
そして、壁にある絵の額をめがけて、すり抜けた。
あれ?ちょっと何かあったような・・・
そう、絵をすり抜ける時に、壁と絵の間に何か挟まっていたのだ。
すぐに私は自分の体に戻り、絵を外してみた。
すると、そこには、厚めの封筒がはさんであった、
何だろう・・・?
恐る恐る、中を明けると、なんと大金が・・・・
何のお金なんだ。
それに誰が・・・・
もしかして・・・・
私は思った!
そう、妻のものしかありえない。
へそくりか?
しかし、妻の収入は私よりはるかに少なく、全て家に入れている。
じゃあ、こんな大金、どこから・・・・
せっかく、先月、俺の給料から、欲しかったという赤いコートを買ってあげたのに・・・
まあ、いいさ・・・
もう既に妻には愛情もなにもない自分が居た。
この力の使い道。
やはり、透明人間って誰もが一度はなってみたいものだろう。
やはり、こんな力を備えると、いろいろと欲が出てくるのは当然である。
つまり、人のプライバシーを気付かれずに覗けるのだ。
そう思い、ちょっと悪知恵を働かせてみることにした。
目標は、商売敵の社長のプライバシーだった。
何かと女癖の悪い社長だ。
しかし、誰もその証拠は握ったことがない、完ぺき主義のようだ。
ある日、会社帰りにその社長の姿を見た。
これはチャンスだと思い、さっそく幽体離脱をすることに。
しかし、、この辺に体を放置するわけにもいかず、ウロウロしていたら、一軒のネットカフェを発見。
ここだったら、長時間体を寝かせても、誰にも気づかれる事はないだろうと、朝まで部屋をとり、幽体離脱を始めた。
社長を見つけ、後を追うと、あるホテルに一人で入っていくのを確認した。
しかし、今のところ一人だった。
たぶん、待ち合わせだろう。
早速、私はそのホテルへと向った。
そして、ほとんど興味本位でホテルの部屋をひとつずつ回った。
たまらない!
こんなことありか?というぐらい・・・・(笑)
そして、ある部屋に入ると、あの時のスナックの女の子が居た。
おいおい、まだ14歳だろ〜
相手は・・・・
ってことで、待ってると、シャワー室から出てきた男は、なんと会社の同僚だった。
しかも、会社ではイケメンで通っているし、来月には課長昇進だ。
しかし、相手が・・・・こりゃ淫行だよなぁ・・・
思わず、悪魔の気分になった。
このことが、会社に知れれば、課長昇格どころか、首だろう・・・・
いい気味だ。
と、この部屋を後にして、次々と部屋を物色して回った。
そして、最後の部屋にたどり着いた。
やっと、例の社長を見つけることができたのだ。
なんだ、一番奥の部屋だったのかよ・・・
さあ、相手は誰なんだ。
スキャンダル間違いなし!
某会社の社長、妻子が居ながら愛人とベッドインなんて・・・
これで、うちの会社の株も上がるな・・・・
さあ、どんな女だ・・・
ベッド横には、赤いコートがある。
赤いコートを着た女か・・・
と、シャワー室から出てきた女の顔を見た途端・・・・
目の前が真っ暗になるような思いになった。
そう、その女は・・・
私の妻だった!!
そうか、最近すれ違いが多いし、あのへそくりも半端なもんじゃないし・・・
そうだったのか・・・
私は、途方に暮れ、その場をすぐに離れた。
外に出ると、なんか賑やかしい!
救急車やら消防車やらが、走り回ってるようだ。
どこかで火事があったんだろうか。
そして、裏の路地を浮遊してると、オタク系の若い兄ちゃんがフラフラと歩いている。
川沿いには、学生が立ちすくんでいる。
ビルの隙間には、老人が座り込んでる。
なんか、おかしな場所だ。
そして、一人の老人が私の顔を見た。
え?私が見えるはずはないのに・・・・
そして、その老人が言った。
やられたようだね。
見てごらん・・・・
と、老人が指差す方向は・・・
なんと、真っ赤に燃え上がるビルが。
ああ、さっきから走り回ってる消防車、あそこの火事現場だったんだね。
そして、よく見ると、その燃えてるビルというのが、私が入っていたネットカフェではないか・・・
なんだって!
じゃあ、自分は・・・・
老人は言った、ここの居る連中は、皆、自分の死を受入れられずに彷徨ってるんだよ。
あの、オタク系の若者も、ネットカフェに居たんだろう。
自分たちは死んでいないんだと、思ってるんだよ・・・・・
<翌日の新聞記事>
昨日、繁華街で起きた雑居ビル火災。
燃えたのはネットカフェの入ったビル。
警察の調べによると、不審火が発見された時に走り去る女性の姿を見たとの事。
なお、その不審者(女性)は、赤いコートを着ており、ホテルのほうへと逃げて言ったという目撃情報があり、
現在、事故と放火の両面で捜索を行っている。
<終わり>

