透明人間って聞くと、SFの世界ってことで、現実にはありえないと思われてますよね。 


前編 

証券会社勤務のAさん35歳。


妻一人、子供はまだ居ない。 

ごく平凡な生活を送りつつも、刺激のない毎日に飽きが来ているところであった。 

それに夫婦共働きということもあり、一緒に居る時間も少ない。 

ある日のこと、めずらしく風邪を引いたらしく、朝なかなか起きられないくらいに熱がでていた。 


妻は、既に出勤しており、会社になんとか連絡して休みを頂いた。 

ずっと働きづめだし、そろそろ体に無理が来たのだろう。 

1日ゆっくり休めば、回復するだろうと、また眠りに入った。 


それから、何時間たっただろうか、なんとなく体が浮いているような感覚を覚えた。 

部屋の中を自分が浮いているようなのだ。 

たぶん、熱にうなされて変な夢を見てるのだろう。 

夢というより幻覚って感じかな! 


翌日、少しは回復し、いつものように会社へと出勤した。 

しかし、今まで休んだ事が無かっただけに、会社に行くのが怖かった。 

一日休むと、どれだけ仕事が溜まるか、想像もつかなかったからだ。 


案の定、その日は病み上がりにもかかわらす、夜中まで残業となった。 

仕事は容赦しなかった。 

夜中の0時を少し回った頃、少し休憩を取ろうと事務室のソファに横になった時だった。 

なぜか、体が浮いているような錯覚をおぼえた。 

そう、先日の幻覚と同じような感じなのだ。 


これは、たぶん夢なんだろうなと思い、浮いているような体を少し起こしかけたとき、ふと下を見ると・・ 

そう、自分がソファに寝てるのだ。 


えっ?何で自分が居るの?、いや自分を見ることが出来るのか? 

死後の世界なんて興味ないし、あるとは思ってない。 

しかし、この状態は話で聞く、幽体離脱のようなものなのか! 


自分が死んだ・・・? 

そんな・・・ 

そんなはずは、無い! 

と思い、一生懸命にソファに寝ている自分の方向へ進もうとしてみた。 


その時、目が覚めた。 

夢だったのか・・・ 

なんか、嫌にリアルな夢だった。 

あまりにも疲れてるせいなんだろう。 

その日は、仕事が完全には終わらなかったが辞めて帰ることにした。 



そして、数日経過、どうも自分の体に変化が起きてる事に気付きだしたのだ・・・ 

そう、毎日のように眠りかけた頃に同じように幽体離脱の夢を見るようになったのだ。 


ある日の事だった、会社の飲み会に誘われて、自分では珍しく二次会へと参加したときのことだった。 

二次会は、会社の同僚の行きつけのスナック。 

歌は歌わない、酒もあまり飲めない自分には、まったくもって興味なし。 

しかし、スナックの若い女の子には、興味はあった(


その時、飲みなれない酒を飲んだせいもあったが、ついウトウトとしてしまった。 

すると、また同じように幽体離脱をしかけたのだ、しかもスナックの上を浮いてる。 

これは、夢じゃないのでは?と思い始めたのだった。 

しばらく、なすがままに浮いていると、自分の行きたい方向に体が動くのに気づいた。 

そのまま、スナックの出口付近へと行ったが、誰も気づかない。 


私は、そのままドアの方に行き、開けようとしたとき、すっと体がドアをすり抜けた。 

物に触れることが出来ないのだ。 


そして、出口付近のカウンターの奥に何か赤いものが落ちてるのに気付いた。 

近寄ってみてみると、携帯電話だった。 


そのあと、ふと我に返り、目が覚めた。 


目が覚めたのはいいが、誰一人として私が寝てた事には気付いていないようだ。 

私なんか、ほったらかしで盛り上がってる。 

すると店の女の子の一人が、携帯が無くなったと言い出した。 

どこかで落としたらしい。 

どんな携帯かと聞くと、赤い携帯らしい。 


私は、すぐさま赤い携帯だったら、出口のカウンターの奥に・・・ 

と言いかけた時に、ふと夢だった・・・と思い、いやなんでも無いって言葉を濁してしまった。 

でも、私の言った言葉がはっきり聞き取れたらしく、店のママが、あったよ~!って叫んでた。 

ほら、そのお客さんの言うとおり、カウンターの奥に落ちてたよ・・・って! 


え?じゃあ、夢じゃなかったのか? 

やっぱり、自分は実際に幽体離脱してたってこと? 

そんな馬鹿な・・・ 


すると、仲間の一人が、お前ここに来てから、ずっと動いてないじゃん。 

それにさっきまで寝てたし・・・ 

さっきまで、自分なんて存在感のない状況だったが、事態は急変して、自分がメインとなっていた。 

とてもうれしかった。 

こんな気持ちになったのは初めてだ。 


そして、つい、自分には予知能力があるんだよ、と、口からでまかせまで言えるようになったのだ。 

売り言葉に買い言葉ってのがあるが、仲間の一人が、じゃあ、この女の子の年齢を当ててみろよ・・・ 

と、言い出した。 


私は、困った! 

あまりにも行き過ぎた自分の行動に・・・。 

しかし、この際、どうにでもなれといった感じで、手を合わせて、目を閉じて、いかにも占うようなしぐさを始めた自分がいた。 

目を閉じると同時に、軽い眠りに入り、すぐに幽体離脱を始めた。 

私は、この体を動かして店の女の子のバックを探した。 

もしかしたら、バックの中に生年月日を書いたものがあるのではないかと・・・そして、バックを見つけたのはいいが、開けることが出来ない。 


そう、物に触る事が出来ないのだ。 

私は、そのバックにそっと顔を近づけてみた。 

すると、バックの中にまで顔がすり抜け、中身も全てすり抜けていくのが判った。 

その状態で、一枚の保険証を発見。 


生年月日を確認。 

しかし、見て驚いた。 

店の女の子、確かに化粧がケバく、20代半ばぐらいには見えるが、保険証をみると、なんと14歳。 

おいおい、未成年じゃねぇかよ・・・ 

まじかよ・・・ 


あまりの驚きに、私はすぐに体に戻り、目が覚めた。 


そして皆が見守る中・・・ 


じゅ、十四歳・・・・(笑) 


そう、仲間から、どっと笑いがこぼれた。 

なんだ、まじかと思ったよ! 

おまえなぁ、嘘付くなら、もっともらしい嘘を付けよなぁ・・・ 

スナック中が笑いの渦になった。 


しかし、その女の子の顔が引きつってたのは、確かだった 


<続く>