俺は高校卒業とほぼ同時に海外留学した。
ある奨学機関が募集していた留学制度に応募し受かっただけだった。
どこでもよかった。
逃げるためだけだったから。
だいたいうちはそんなに裕福なわけではない。
それに俺が中2、姉が高1の時、交通事故両親を亡くしていた。
幸い両親が残してくれた高額な保険金と家、
それに交通事故遺児年金と奨学金で姉弟二人十分な生活を送ることができてはいたが。
両親共々できるだけ家族一緒にいたいと口に出していた人たちだった。
うっとしいと感じた時期もあったが、それでも家族一緒にいると安心できた。
そのおかげで俺達は暖かい家庭の中、何不自由なく育った。
両親は二人とも施設出身の孤児だったそうだ。
だからこそ、厳しくも暖かい、あふれるほどの愛情を、俺達姉弟にかけてくれたんだと思う。
また、なにかあった場合に誰も頼れないからと自分達に高額の保険をかけていたそうだ。
保険のことも、孤児だったことも、両親が生きている間俺は知らなかった。
すべて姉から聞かされた。
そういう人たちだった。
姉は高校卒業後働くといっていたが、周りの進めと、俺と恵さんの強い説得で
公立大学の奨学生となり、あまつさえ2年目には学費無料の特待生となった。
容姿端麗、勉学優秀の自慢の姉だった。
…………………………
「あれからもう、1年半か…」
姉の住んでいたアパートに葉子さんと二人 テーブルを挟んで座っていた。
「突然圭樹君が、海外に行くっていうから本当に驚いたよ」
「すいません。色々ありまして、ちょっと自分に何ができるか試したくなって」
「その言い訳は散々聞いたからいいわよ。それより、これからどうするの?」
「落ち着いたらオーストラリアに戻ります。そう向こうにも言ってきましたから」
「そう…」
「しばらくは、いるんでしょう?じゃあとりあえず、今日は疲れたでしょうから帰りましょう」
「いえ、せっかくですからここに泊まります」
「そう…家には帰らないの?」
「帰っても…」
「そう…だよね。じゃあ私も泊まっていいかな? 圭樹君ともっと話したいし、美月(みつき)とも……ね」
「でも………」
「私と一緒じゃいや?襲ったりしないよ?もっとも圭樹君が襲いたいっていうのならいいけどねっ」
「…イヤじゃないですけど」
「じゃあ決まり。それじゃ、夕食外で食べようか?日本食久しぶりでしょう?」
といいながら、俺の答えも待たずに俺の手をつかみ引っ張る。
あいかわらず強引な人だ。そこに憧れ、頼りにしてきたのだが。
「さあ、行こう、私がいるよ。だから一緒に行こう」
そういいながら俺を引っ張り、アパートを後にした。
そうだな。
あとでゆっくり話できるもんな、
美月姉さんとも…