「52ヘルツで鳴くクジラの言葉は、誰の耳にも届かなかった。
超音波で遠く遠くへ放っても、
それはひどく醜い雑音で、耳をふさがれるだけだった。
自分の言葉で話しても、伝わる時は来なかった。
いつしか口をふさいでいた。誰にも邪魔をしないように。
けれどもある日、僕は見つけた。
通り過ぎる街の中で、口をふさいだ不思議なクジラを。
僕とどこか似たような、けれどもまったく違う目をしたクジラ。
あの日みたクジラに届くように、
僕は話すことにした。誰にも届かないクジラの言葉を。」
◆
振り返らないまま気付けば年は明けていた。
最高だなと思う瞬間がいくつもあった。
冬の始まりに参加したデザインフェスタの展示で
沢山の人が会いに来てくれたことに
ありがとうじゃ足りないもどかしさを覚えて
誰かがそこに来る度に、自分がそこにいることが分かる。
餅ばかり食べていたら中学生の頃いれた銀歯が抜けた。
友達がランボルギーニの自転車をくれた。
年末はプレステ3でラストオブアスをしていた。
沢山遠くへ電車に乗った。
楽しい。
◆
長い間あった悲しい出来事を未来に繰り返さないために
具体的に改善を要求すれば「いつまでも根に持っている人」になり、
風化させる方向で媚びて寄り添えば「感じのいい人」になってしまう。
反射的に打ち返されるだけのバッティングセンター風の話し合いに
なんだかすべてが徒労に思えた日にも
黒猫はかわいいし花鳥風月に安らぐから
人の人による人のための問題がどうでもいいとさえ思える。
卓袱台をひっくり返せないのは、
それでも感謝しているからかもしれない。
往々にして悲しみは、変えるか変わるか離れるかの三択に尽きる。
数年ぶりに高校の周りをぐるっと歩いた。
「変な人」になりきれず「大人」にもなれず、変に大人になるのは嫌だな。
「俺も行きたかったなあ」と言っていた中学からの親友は二人目の子供が生まれるらしい。
素敵だな。胸をはってまた会おう。
近頃コーヒーを飲んでばかりなのでココアを買った。あったかい。
依頼を受けて作った動画「うみのおばけさん」
鬼に育てられた桃太郎の話。