非抜歯か抜歯か
最近矯正に関する質問のメールが続けてきていますが、そんな中で、どうしても抜歯するのが嫌という相談が結構あります。この質問は今に始まったことではなく、昔から一番質問の多いテーマです。
このことは人類の進化、人種差、解剖学的な形態、といったことと関わりが深く、人類は火を使って調理することで顎骨と強大な咀嚼筋群が退化し、頭蓋は球形に近くなり脳の容積を大きくして脳の発達を促し、現代人へと進化したわけですが、未だに人類は進化の途上であり、まだ適応できていないのが、顎と歯の大きさだと云われています。
そして、この問題は歯の数が減少することで適応するというのが、生物学や人類学上では定説となっています。未来の人類は現代人の歯の数より4~8本少なくなると云われています。
しかし、この問題は現代において人種差もあり、特に狩猟民族である白人種は、歯の解剖学形態が黄色人種に比べ小さく、根は長く、溝が深く肉食には適した形態をしています。それに対し黄色人種である我々日本人は農耕民族で、お米を主食とするため、お米をすり潰すに適した、大きな歯で根は短く、溝は浅く臼状の形態をしています。
同じように進化をしてきていても、片や元来小さな歯と大きな歯という差は、歯並びにも大きな差をもたらします。かつ白人種は黄色人種に比べ鼻が高く、オトガイ隆起が発達して、口元の調和がとれているケースがほとんどです。こういった解剖学的形態の違いから、白人種は非抜歯による治療でも充分口元の調和がとれるケースが多く、黄色人種である日本人は、非抜歯では口元の調和が取れないケースが多いということになります。
矯正治療を行うときに、顔面写真、口腔内写真、頭部の規格レントゲン、顎全体のレントゲン、口腔模型などで診断を行いますが、その結果、具体的な治療方針・計画と供に、治療後の予測も含まれているのが専門医の診断です。
その診断の中で、抜歯また非抜歯という決定もなされるのですが、基本的に非抜歯で治療が可能であればわざわざ抜歯をする必要はりませんし、何が何でも抜歯をするといったことではありません。抜歯するよりも非抜歯の方が治療の難易度は低く、治療期間も抜歯するよりも半分の期間で済みます。
しかし、間違った診断で非抜歯を選択すると、治療期間もむしろ抜歯するよりも長期化しますし、何よりも歯周組織に過度の負担を与え、歯槽骨や歯肉などの退縮を招く結果となり、口腔の機能を維持することが困難になってしまう危険性があります。
ちなみに、通常抜歯した場合は約2年間程度、非抜歯の場合は約1年間程度が実際の治療期間の目安となります。
最後に、抜歯しないで治療をしたいという気持ちは十二分に理解出来ますし、非抜歯で可能なものは勿論非抜歯にて治療をおこないますが、その機能(噛むこと、発音すること)を長期間維持出来なければ矯正治療をする意味がないことも、理解して欲しいものです。