入院69日目(転院38日目)〜何てステキな野歩き | 微睡のブログ〜八ヶ岳南麓から〜

微睡のブログ〜八ヶ岳南麓から〜

八ヶ岳南麓、北杜市長坂町小荒間に在住。ときどき仕事をしながら、読書、音楽鑑賞、カメラ撮影、オートバイツーリングなどの趣味を楽しんでいます。

 4月30日日曜日。5時55分起床。雨。雲が山裾近くまで低く棚びいている。

 

 

 雨は昼過ぎにやみ、蒸し暑くなった。午後の病院はいつになく静かで寂しかった。

 夜中に目覚めてしまったので眠くてならず、読書しているとときどき頭(くび)がガクンとなりあやうくテーブルにぶつかりそうになる。少し不機嫌でリハビリのときも療法士が何かと話しかけてくれてもそっけなかったかも知れない。

 倖田露伴の「野道」という文章がよかった。

 年配の友人から近くまで行くから用意しておいてくれというはがきがくる。露伴は杉板を手に入れると、それを短冊型に割り、2枚に味噌を塗りつけると火で炙り芳ばしい匂いがしたところで包み客を待つ。やってきた3人の老人はそれぞれ洒落た格好をしており、露伴も一緒に4人で春の風景を楽しみながら野道を歩く。老人の1人がよいところで草にすわり、腰に下げた瓢(ふくべ)をとり、お猪口も取り出す。瓢には酒が入っているのだ。他の老人たちも露伴もそれぞれ自分の瓢とお猪口を出すが、服装だけでなくそれぞれのお猪口も個性的である。最初の老人がナイフを持って立ち上がると、近くの土手でうずくまると何か掘っている。もどってきた老人の手のひらには小さな球根が並んでいる。言わずと知れたノビルである。老人たちはノビルの球根に露伴が用意した焼き味噌をつけて食べ酒を飲む。老人たちは歩きながら代わりばんこに違う野草を摘んで賞味する。乙な味のものがある。不味くてほき出すものがある。露伴の摘んだ葉は毒草だとわかり慌てて捨て、みなで大笑いする。何てステキな春の野歩きだろう。