入院53日目(転院22日目)〜楽しそうな井戸端会議 | 微睡のブログ〜八ヶ岳南麓から〜

微睡のブログ〜八ヶ岳南麓から〜

八ヶ岳南麓、北杜市長坂町小荒間に在住。ときどき仕事をしながら、読書、音楽鑑賞、カメラ撮影、オートバイツーリングなどの趣味を楽しんでいます。

 4月14日金曜日。6時30分起床。今日も病室の窓からの風景は黄砂で黄色く煙っている。

 

 

 第1回のリハビリが9時55分なので朝食後デイルームでラブレー「パンタグリュエル物語」を読む。今日も朝の血圧は低い。そのせいかリハビリ後ラブレーの続きを読み始めたが、椅子の背にもたれ、口を開けて眠ってしまった。眠りながら意識が薄っすら目覚めるとそんなみっともない格好していることがわかったが、どうにもならなかった。電車の中で疲れ果てて眠っている人のようだ。

 4人部屋にいるが、1人が退院した。前の入院先もそうだったが、4人部屋とはいえ、各ベットはカーテンで囲われた個室になっており、他の3人と口をきくことも、挨拶することもない。挨拶ぐらいと思うが、廊下で会っても知らない人のようにすれ違うだけだ。ぼくが転院してきてから3週間以上経つが、今日退院した人ともう1人は前から入院しており、もう1人はぼくに遅れて2日後に転院してきたが、挨拶もしないのだからどこが悪いのか、どのような職業の人かなどがわかるわけがない。しかし、これは意外だった。病院生活を描いた小説は何冊も読んだが、そこには人間社会の縮図のようなものが見られたからである。お互いの年齢、職業、性向までも長い入院生活の間に熟知し、親和したり反発したりしながら入院生活を送っているからだ。ぼくは今回の入院が初めての経験であり、このような事態が普通なのか特殊なのかの判断はつきかねるが、コロナもあり、大部屋であってもカーテンで仕切って個室かする病室の形態が必然的にもたらしたものだろう。実は、ぼくにとってはこのような状況はむしろ好ましい。おしゃべりはリハビリの時間に療法士とできるから、病室にもどってまでおしゃべりはしたくないし、読書の時間を確保したいからだ。ところで、しかしこれは男性入院患者だけのことかも知れない。というのも、午後最後のリハビリを終えて、夕食までデイルームで読書しようと思っていたが、そこではおばあさんたちが3、4人集まってにぎやかに楽しそうに井戸端会議をしていたからである。やはり女性はえらいな。

 デイルームで読書ができなかったので薄暗い病室で伊藤永之介の「鶯」を読む。名作映画『警察日記』の原作である。貧しい地方の(作家の出身は秋田、映画の舞台は福島だった)警察署が舞台の群像劇だ。農村の悲惨な生活が描かれるが、警察官たちは人情家であり、ほんのり温かいものが残る。