雪の楢山へ帰る。(Jan. 24, 2023) | 微睡のブログ〜八ヶ岳南麓から〜

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八ヶ岳南麓、北杜市長坂町小荒間に在住。ときどき仕事をしながら、読書、音楽鑑賞、カメラ撮影、オートバイツーリングなどの趣味を楽しんでいます。

 8時半の気温1度。10年に1度の寒気が襲ってくるというのに意外な気温の高さだ。しかし今日は午後になっても気温が上がることはないようだ。そんな空模様だ。雪も降りそうだ。

 ひまわりの種が残り少ない。厳寒期の過酷な環境で生きる野鳥たちを思うと居た堪れない。まして雪が降ったらと思うと、ひまわりの種を調達しなければと綿半へ買いに行くことにした。買って帰ると餌台にたっぷりおいてやる。

 昼少し前から雪が降り始めた。細かな雪が西風に吹かれている。積もりそうにない雪だが、気温がさらに下がり、長時間、夜になっても降り続ければ積もるだろう。

 

 

 午後は職場での最後の仕事である。長坂駅1時15分の甲府行きに乗るために1時5分前に家を出る。昨日月曜日のようにK子に送ってもらえないのは、K子が4時から公文で採点のアルバイトがあり、アルバイトが終わるのが夜の8時半なので、仕事が終わって長坂駅に5時に着くぼくを迎えに来られないからである。K子は雪が降る中公文までの30分の道のりを歩かなければならない。心配なので、君がぼくを駅まで送って、アルバイトには車で行けばよい、ぼくはタクシーで帰るからと提案したが却下される。お金がもったいないという。しかたなくぼくがいつもの火曜日のように車で駅まで行き、夜彼女を迎えに行くことにした。しかし今日で仕事で出かけることがなくなるので次週からはぼくが送り迎えしてやれる。

 長坂駅の陸橋から甲斐駒ヶ岳を見ると山々は雪の幕に包まれている。ホームで電車を待つのは6人だけ。いつになく侘しく寒々しいホームである。車中では『人間みな病気』から内田百閒「掻痒記」を読む。

 2時に甲府に着く。意外にも青空が広がり、綿のような雲がのんびり浮かんでいた。しかし、窓から見える南アルプスの山々は降る雪に完全に包まれており、やがて曇ってきた。

 

 

 今日が職場での最後の仕事なので、若者たちに深沢七郎『楢山節考』について話し、ぼくは今日で三十数年間続けてきた仕事を引退し、『楢山節考』のおりん婆さんのように山へ行きます。ぼくは標高950メートルの八ヶ岳南麓に住んでいますが、そこがぼくの終の住処、楢山なのです。おりんは自分が山へ行くときには絶対雪が降るぞと信じていましたが、その通りに雪が降りました。まるで楢山様がおりんの一生を言祝いでいるように雪が降りました。今日ぼくが家を出るときには雪が降っていました。これからぼくも山に帰りますが、雪がぼくを迎えてくれるでしょう。

 2、3の人に挨拶をする。挨拶したかったが会えなかった人もいた。5年前に定年でそのとき挨拶したからよしとするしかない。いつもおしゃべりを楽しんだアメリカ人のMさんとは握手した。長い付き合いのUさんやHさんとも別れの挨拶ができた。

 帰途の車中では色川武大「したいことはできなくて」を読む。塩崎駅で電車のドアが開くと雪が吹き込んできた。時刻は5時前だが闇の中雪が激しく舞っていた。

 長坂駅に着くと雪は1センチほど積もり止んでいた。ゆっくり慎重にブレーキをあまり踏まないように走る。

 7時半いつもより1時間早くK子から電話があり迎えに行く。幸い雪は降っていなかったが、下り坂が多いのでエンジンブレーキをかけながら最新の注意をはらって走る。

 「ライン・オブ・デューティ汚職特捜班」シーズン6を3話見る。プロットが錯綜しており、途中幾度か居眠りしたこともあって何が何だかわからなくなった。明日見直す必要がありそうだ。