富士見高原病院へ(May 12, 2022) | 微睡のブログ〜八ヶ岳南麓から〜

微睡のブログ〜八ヶ岳南麓から〜

八ヶ岳南麓、北杜市長坂町小荒間に在住。ときどき仕事をしながら、読書、音楽鑑賞、カメラ撮影、オートバイツーリングなどの趣味を楽しんでいます。

 

 6時40分起床。常よりも2時間早い。7時K子を小淵沢駅まで送る。気温12度。空を見ると巻積雲、いわゆる鱗雲が広がっている。陽は照っているが雨になるのかもしれない。

 

 高原病院の予約が10時で尿や血液の検査があるので朝食は食べられない。八王子の病院では血糖値の上昇などを調べるためだろうか、採血採尿2時間前に食事をするようにいわれていたのだが、高原病院での初めての検査なので朝食抜きなのだろうか。体重は期待したように減らないが、昨年の今日に比べれば3キロ以上、今年1月初めと比べても1キロ以上減っているので、検査結果のよいことを期待している。

 

 庭の椅子でモンテーニュ『エセー』(宮下志郎訳、白水社)2編「徳について」と「ある奇形児について」を読む。前者でモンテーニュはいう。「・・・・・・だれかもいっていたが、神をもしのぐことだってできなくはないと思っている。なぜ、神をもしのぐなどといったかといえば、それは、自分の力で、自分を揺るぎのない存在にすることは、最初から本性があることと比べて、偉大であるからだ」なるほどその通りだ。

 後者では見世物にされたシャム双生児を見てモンテーニュはいう。「われわれが怪物(モンストル)と呼ぶところのものは、神にとっては怪物ではない。神は、ご自分の広大無辺なる御業(みわざ)のなかに、ご自分がそこに含めたところの、無限の形態を、しっかりと見ておられるのだ。われわれを驚かせた、あの姿と形にしても(シャム双生児のこと)、人間には未知であるにせよ、なにか、あの奇形児と同じ種類の別のものと関連しているのかもしれないし、縁続きなのかもしれない。神の絶対的な英知からは、善良なもの、ふつうのもの、規則正しいものしか生じてはこない。それなのに、われわれ人間には、それらの調和や関連が見えないのである。《人間は、しばしば目にしているものについては、その原因がわからなくても驚きはしない。ところが逆に、それまで見たことのないことが起こると、これを怪異なものと考えるのである》(キケロ『占いについて』二の二二の四九)」そしてさらに続けていう。「われわれは習慣に反して起こることを、自然に反することだと称する。しかし、なんであれ、自然に従わないものなどないのだ」『フランケンシュタイン』の怪物のことが頭を過ぎる。怪物はフランケンシュタインという怪物が産んだのだ。神が、自然が産んだのではない。しかし産まれたものは、その瞬間、すでに自然の一部分である。

 

 9時25分家を出る。富士山は霞んでいる。甲斐駒ヶ岳や八ヶ岳はくっきり近く見える。新緑がまぶしい。病院には9時50分に到着する。

 まず採尿、ついで採血。採血まで時間がありそうだったので素木しづの「秋は淋しい」を読む。幼い娘が入院した若い画家夫婦の話。妻も病弱である。病院の待合室で読む小説ではなかったか。

 静脈から採る血は濃い紫がかった赤葡萄酒の色だ。採血の際目を逸らす人を見かけるが、ぼくは針が左腕の肘の裏側(表?)の静脈刺さり、血が管を通ってゆくのをしっかり見ることにしている。針の刺し方は人によって微妙にちがう。今日の年配の女性看護師は、針を低く寝か深く差しこんだが、痛みはほとんどなかった。止血のために絆創膏をはってくれる。剥がしやすいように角が一箇所三角に折ってあった。

 整形へ。5分ほどで名前を呼ばれた。Y医師はよくしゃべる。しかしいうことは明確である。前回渡した頸のレントゲン写真を見ながら、患部の場所に大きな衝撃が及ぶと半身不随の恐れがあること、手術も頭に入れておいた方がよい、しかし自分は脊椎の専門家ではないので経過観察することしかできないし、この病院では手術ができない、長野県の病院で対応できるのはこことここ、山梨であれば北杜市には対応できる病院がないので甲府まで行かなければならない、症状が進行したらいつでもいってくれれば専門医を紹介する、医師によって積極的に手術を勧める人もいれば慎重な人もいる、ただし、手術をしても治るわけではない、進行を抑制するだけだ。レントゲン写真は2年前のものなので、次回MRIをとりましょうといわれる。要は覚悟しておきなさいということだ。

 整形までは順調だったが内科は待たされた。内科はどの病院も年配者で混んでいる。iPhoneで『百人一首』を読み始めたが空腹がつのり集中できない。名前を呼ばれたのは12時半。11時の予約だったから1時間半待たされたことになる。検査結果はまずまず良好だった。次回薬を減らすことも検討するという。内科のY医師は早口でときどき聞き逃すが、しかし説明の内容はわかりやすい。今回は検査結果が希望の持てるものだったので説明が耳に心地よい。

 会計薬局でさらに30分待たされた。この病院は院内薬局で診察代と薬代は一括で請求される。支払おうとして持ち金が1000円足りないことに気がついた。次回一緒にでもいいですよといわれたが、4分の3だけ支払う。しかし、帰り際、病院内にATMがあるのに気づき残りも支払った。食事は持参したパンを薬の出るのを待っている間に食べた。

 

 3時間後病院を出ると陰っていた。予定通り近くの園芸店に寄る。庭の一画に作った畑に空きがあるので何種類かの野菜の苗を買う。帰途、オートに設定してあるワイパーが何度かふれる。雨が降っているとは見えなかったがセンサーが反応したのだ。2時半帰宅。

 

 3時35分K子を迎えに行こうと庭を見ると地面が色濃く濡れていた。やはり鱗雲は雨の予兆らしい。3時50分K子を小淵沢駅で拾う。本格的に雨になった。

 

 5時、朝早かったので睡くてならない。濃いコーヒーを淹れる。K子も仮眠をとるという。1時間ぐらい眠られればと思っていたが、目覚めたのは8時過ぎだった。