6時半に起きた。小淵沢駅7時15分の特急に乗るK子を送るためである。2階の部屋から階段を下りようとしたら、「運休だって! 人身事故!」と怒ったようなK子の声がする。

 K子はソファに座ってインターネットで再開の報を待っていたが、促して行くことにする。運行が再開しても、遅れた1本前のに乗れるかも知れないからだ。幸い、予定の特急に乗れたとLINEで知らせてきた。

 

 

 夜半は雨だったようだが、午前中は曇っていてTシャツでは少し肌寒かった。早起きしたので仮眠をとりたかったが眠れず、しかし終日眠気を抱えながらぼーっとしていた。本を手にしても集中できずすぐ投げ出した。

 昼食をすませ午後になっても同じ状態が続く。読書は諦めて、ここは少しでも体を動かした方がよいだろうと、これから読もうと予定していた『ウォルター・ペイター全集』を探すことにする。本棚の前には孫のおもちゃがつまった箱などが積んであるのだが、このあたりにあるんじゃないあろうかと箱をどかすと、めずらしいことにすぐ見つかった。3巻本の全集の第1巻だけ取り出す。

 訳者の一人はぼくの恩師である。訳者一覧を見ると、恩師は2001年に亡くなっている。今でも何かにつけ生き生きと思い出すので、もう20年も経つのか! と吃驚した。多少期待もかけられていたが、何という体たらくだろうと、この20年のわが身を思うと情けなくなるが、今更後悔しても遅い。だからせめてペイターを読むことで許してもらおう。

 500ページ以上あるずっしり重い全集の第1巻を持つと、恩師てずから手渡されたかのような厳粛な気持ちになり、身がひきしまる。早速読んでみた。名著『ルネサンス』の「序文」と「フランスの旧い物語二篇」。「序文」にはペイターのいわゆる印象主義批評宣言があるが、これは何度もくり返し読んで、理解するというよりも、身につけ実践すべきことなのだろう。該博な知識、精緻な論理、情報量が多すぎて、ぼくの脳髄では処理が追いつかず、何度も一時的なフリーズ状態になる。

  ペイターは英文学、近代批評の王道だ。

 

 

 4時過ぎ雨になった。K子を長坂駅まで迎えに行く。駅前のビタミン市場でスイカや野菜を買う。K子は東京で厳しい生活をしている若者2人に送るのだと、2キロの米を2袋買う。コンビニで夕食のおでんなどを買ったのは、K子もぼくも寝不足で疲れており夕食の支度が面倒だったからだ。

 帰宅後K子は仮眠をとる。ぼくは疲れているのに眠られないので少し仕事をする。

 

 夕食を食べながら映画「グロリアの命運:魔性の弁護士」を観る。主役は「キカ」や「ハイヒール」の女優だ。映画の内容は特筆すべきことはない。しかし、彼女の演技は光り、映画をひっぱっていた。