月のある風景
下の写真は四季を通じてかなり頻繁に行くダム湖なんじゃがのう。
左右の山が落ち込んだ辺りの谷間から昇る月を撮りたくて、昨年あたりからチャンスを窺っているんじゃよ。
これがなかなか難しくてのう。
その瞬間を撮影するには次の3つの条件が必要なのじゃ。
①月があの谷間の真ん中から昇ること
②周囲が明るすぎず暗くなりすぎない黄昏時に昇ること
③晴れていること
このうちの1つが欠けても意図する写真にはならないのじゃよ。
第一に、あの谷間から昇るのは月に数回あるかなしでのう。
しかも夕方のいわゆるマジックアワーでなければならないとなると回数も限られてくる。
おまけに晴れていなければ話にならないからのう。
あれこれ考えてくると、条件に合うのは年に数回じゃ。
実は明日(2日)がドンピシャの真ん中から昇る日なんじゃけどのう。
しかし具合の悪いことに月の出時刻が午後7時近いのじゃよ。
となると、その時刻は辺りはもう真っ暗で、暗闇の中に月だけがぽっかり浮かんでいる画像になってしまうんじゃ。
いつも言うことじゃが、わしゃ天体写真を撮りたいわけではないからのう。
「月のある風景」を撮りたいのじゃよ。
となると、今日(1日)なら月の出は明日より数十分早いから、かろうじて明るみが残っているかもしれない。
その代わり谷間の中心からは少しずれるが仕方がないわい。
ところが今日は朝から曇りときたもんじゃ。
月が雲に隠れてしまっていては話にならないからのう。
また来年まで待つか…
と、一時はあきらめた。
しかし天気予報を見ると夕方までは曇りじゃが、7時ごろには晴れのマークが付いているのじゃよ。
そんな遅い時間に晴れてくれても無意味じゃと思ったものの、天気予報には裏切られることがよくあるからのう。
ひょっとすると予報を裏切って、もうちょいと早く晴れてくれるかも知れなと思ったのじゃ。
淡い期待を抱いて、とにかく出かけてみたわい。
河川敷へそろりそろりと降りて行くと、一台の車が停まっていて、親子らしい3人組がテントを張っているところに出会った。
幼稚園児か低学年ぐらいの2人の子供がワシに声をかけてくれた。
「こんにちは!」
「元気がいいのう。今夜はお父さんとここへ泊るのかえ?」とワシ。
「そうです」と父親が子供に代わって答えてくれた。
楽しそうじゃのう。
二人の子供たちの歓声を後にして、ワシは自分の予定した撮影場所までトボトボと歩いて行ったわい。
撮影場所へ来てみると、案の定、まだどんより曇り空じゃ。何とか晴れてくれないかのう。
実は天候の問題に加えて、もう一つ心配事があるのじゃ。
月は上の画像の一番奥の山の上から顔を出す予定なのじゃが、あの山は標高が約2200メートルもあるからのう。
ということは、それだけ月の出が公式の予定時刻より遅れてしまい、出てきたときは周囲は既に真っ暗闇の中かもしれないわけじゃ。
しかし仕方がない。乗り掛かった舟じゃ。
月の出まではまだ間がある。辺りの様子もちょいと撮っておくか。
上流には川霧が立っているのう。
もっと手前の方にも霧が湧いてくれるといいのじゃが。
あそこはサギのねぐらなのかのう。
秋になるとこの辺りには彼岸花が咲くのじゃ。
そのころにはまた来てみようわい。
一時は湖底の一部が見えるぐらいの渇水状態だった貯水量も、大分増えてきたわい。
湖のそばにある交差点の信号機やら店の灯りが湖面に映っている。
月の出の予定時刻はとっくに過ぎたというのにまだお出ましにならないぞえ。
周りはもう宵闇じゃ。
じりじりしながら待っているうちに、雲も少しづつ取れてきた。
…と、
出たア!
ついにお出ましじゃ!
欲を言えば、もう少し周囲がが明るいうちに、もう少し真ん中寄りに出てくれて、月の前の雲がなければいいのじゃが…。
アホじゃのう。得手勝手なことばかり抜かしおって!
大自然を相手に虫のいい御託ばかり並べている奴は何処のどいつじゃ![]()
上昇するにつれて雲が取れてきた。
気がついたら周りはもう真っ暗じゃ。
ぼつぼつ引き上げようと、疲れた体を引きずりながら、先ほどのキャンプの親子の前を通りかかると、おいしそうなにおいが漂っていて、夕食の宴は今まさにたけなわじゃ。
あまりにも楽しそうじゃったから、お願いして写真を撮らせてもらったわい。
今夜(1日)は満月の前の小望月。煌々と輝く月光を浴びながら、親子水入らずのキャンプファイヤーはまだまだ続く。
完
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