前回のつづき
涼を求め~⑤霧ヶ峰の霧
無断転用禁止
涼しさを求めて長野県内の高原を渡り歩いた最終日の未明。
霧ヶ峰高原の湿原に隣接する駐車場で目を覚ました。
霧ヶ峰というだけあって、今朝は遠くにうっすらと霧が出ているようじゃ。
この霧が日の出とともに真っ赤に染まってくれると、ここで車中泊した甲斐があるのじゃがのう。
お天道さまがお出ましになる前にベストポジションを見つけようと、ウロウロ、ヨタヨタ。
痛い腰をさすりさすり、辺りを一巡りじゃ。
お天道様のご威光で、あの池塘が紅く染まってくれぬかのう。
湿原一帯も真っ赤な霧に包まれて、日常では見られぬ異空間が出現するかも…
…などなど、妄想はいくらでも膨らむわい。
そろそろ日の出時刻じゃ。
待ち遠しいのう。
ムムム?
霧が一段と深くなって来たぞえ。
遠くの景色が見えぬぐらいの濃霧じゃわい。
お天道さま! お出ましになるのは今ですぞ!
しかし日の出時刻を過ぎても、お天道さまは一向にお顔を見せて下されぬのじゃ。
おっと!
何となく霧が染まって来たのう。
…と思っていたら!
なんじゃと?
お天道さまは知らぬ間にもうお出ましになっているではないかえ。
しかしあんなに高くお昇りになってからでは、赤く染まった霧なぞ見られるはずがないわい。
霧が出ていてよく分からなかったが、どうも未明から曇っていたのじゃのう。
日の出時刻を過ぎてもお顔を見せてくだされなかったのは曇りのせいだったのじゃ。
こりゃ今日はダメじゃ。
日の出は地平線の近くでないと霧は染まらぬわい。
仕方がない。
自然の摂理には勝てぬわのう。
まあ涼しい一夜を過ごせただけで良しとするか。
朝露が光る。
今ごろになって晴れてきたようじゃ。
辺りはすっかり日常の見慣れた風景に。
こうなってしまってはもう引き揚げるしか仕方がないわい。
午前9時近くで18℃。
この高原としては高い気温かもしれぬが、下界に比べれば天国じゃろうのう。
帰りがけにカメラマンが大勢で三脚を並べている光景に出くわしたわい。
目の前のレンゲツツジを撮っているのかと思いきや、全員が一様にバズーカ砲のようなデカい望遠レンズを使っておられる。
おそらく野鳥を撮っているのじゃろうのう。
ワシのような風景写真ならこんなデカいレンズは必要ないはずじゃわい。
同じ道楽でも様々な分野があるものじゃのう。
これで今回の避暑兼撮影旅はおしまいじゃが、成果はともかく、標高の高い高原を渡り歩いたお陰で暑さ知らずの快適なひと時を過ごすことが出来たわい。
これから盛夏に向けてますます気温が高くなって行くじゃろうが、8月ごろには人間が今までに経験したことのないような超猛暑になるかもしれぬのう。
そんな時はまた高原へ退避しながら撮影に勤しむつもりじゃ。
夏の撮影はやっぱり標高の高い高原に限るぞえ。
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おしまい
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