前回のつづき
右往左往の朝
無断転用禁止
一昨年に偶然見つけたクリンソウを今年も撮影したくて、昨日からいつもの「熊出没注意」の看板が立つ森へ来ているのじゃがのう。
夕べはそのクリンソウの傍の空き地で車中泊をしたのじゃよ。
今日のお目当ては朝の光りに輝くクリンソウじゃ。
ここで待ち構えていれば、陽が射して来ときに即、撮影出来るからのう。
今朝は午前4時ごろの起床。
早速外を覗いてみた。
ところが…。
こりゃどうしたことじゃ!
深い森の中でわずかに覗く東空はどんより曇っているではないかえ。
昨日は晴れていたし、天気予報も今日は晴れの予報だったというのにじゃ。
撮影しながらしばらく待ってみるか。
この時間帯の画像の色合いは昼間とは大分違う。
この時間帯特有の青みがかった色調じゃ。
しかしこの色もまんざら捨てたものではないわい。
日中では見られぬ色調じゃからのう。
退屈まぎれに昨日と似たような写真ばかりパチリパチリ。
しかし待てど暮らせど一向に晴れる気配はないわい。
それでもお天道さまに拝謁したい一心で、なおも待つ。
しかしいつまで経ってもお天道さまを拝顔できぬのじゃ。
辺りはいつの間にか見慣れた日常的な色合いになってしまった。
時刻は午前5時を過ぎてしまったわい。
こりゃ駄目じゃ。
こんな時間になっても晴れて来ぬようでは、もうお天道様のお恵みはいただけそうにないわい。
この辺りで見切りをつけたほうがよさそうじゃ。
仕方なく撮影機材を車へ押し込むや否や、昨日の湿地帯へと急いだわい。
昨日車を停めた広場にまたやって来た。
空を仰いでみたものの相変らずのどんより曇り空じゃ。
ところが車を停め、昨日の湿地帯へヨタヨタと歩き始めたところ…
何と、森の中に陽が射してきたではないかえ!
こりゃ先ほど車中泊したクリンソウも今ごろは朝の光を浴びて輝いているかもしれぬわい。
それ! また戻るぞえ!
とばかりに慌てて引き返して行ったのじゃよ。

と こ ろ が…。
急ぎ戻って来てもここにはまるで光りなぞ当たっていないではないかえ。
先ほどと何も変わりがないままなのじゃ。
それでももうちょいとだけ待ってみるか。
ここに日差しが入ってくるのが遅いかもしれぬからのう。
と、またしばらくパ チリパチリ。
しかしいくら待っても一向に晴れる気配はない。
もうだめじゃ。
また湿地帯へ戻るとするか。
と思ったところで…。
やややっ!
すぐ横の林には日差しが届いて来たではないかえ。
こちらにも。
この調子ならもうすぐクリンソウにもお天道様のお恵みがあるかも知れぬわい。
それではとワクワクしながら、なおも待つこと暫し。
いい加減に退散すればよいものを、何と往生際の悪いカメじいじゃ。
しかしいくら待っても相変わらずどんより曇り空。
ついに業を煮やして、また先ほどの湿地帯へ引き返して行ったという次第じゃ。
天候に振り回されて文字通り右往左往のひと時じゃったわい。
つづく
無断転用禁止























