霧ヶ峰~天候に一喜一憂
長野県霧ヶ峰高原は二十数年も前から、折に触れては出かけた撮影地でのう。
ただ、ここはあまりにも有名な撮影地じゃからのう。自分では気に入った写真が撮れたと思っても、カメラ雑誌や情報誌など、どこかで見たような写真になってしまうんじゃよ。ここでオリジナリティな作品を作るのは至難の業じゃわい。
もう行くのはやめようと思いながら、それでも以前から一つだけ撮ってみたい光景があるのじゃ。
その光景が見られるのは1年中で2月と10月しかない。
となるとやっぱり行くのは、
「今でしょ!」
(古いのう。年寄りじゃから勘弁して)
というわけで今年もやって来たぞえ。
お目当ての場所はここなのじゃがのう。
ここは毎年10月の早朝になると、朝光が画面の右方から差し込むようになるのじゃ。
そして差し込んだ光が矢のように湿原を横切って行くのじゃよ。
そんな光景をぜひモノにしたいと思っているのじゃが、なかなか機会に恵まれないまま、二十数年が過ぎてしまっているというわけじゃ。
実を言うと、そんな光景を撮影した作品はすでに目にしたことがあるのじゃよ。
じゃから今さらという気もしないでもないのじゃが、それでも自分も一度ぐらいは撮ってみたいと思ってのう。
それには先ず早朝に晴れていることが絶対条件じゃ。肝心の光がないことには話にならないからのう。
そこで天気予報を見てみた。
ところが困ったことに肝心の予報はサイトによって☀、☁、⛅などバラバラなのじゃよ。
こいつには参ったわい。仕方がないからほかの日に行こうと思ったのじゃが、そのあとの予報もスカッとした秋晴れの予報が出ていない。
これはもう運を天に任せて今日出掛けるしかないと思ってのう。
そんなわけで、久しぶりに来たというわけじゃ。
ここはカメラマニアなら知らぬ人はいないくらい有名な場所じゃから、ホントはこういう有名な撮影地は避けたいのじゃがのう。
ワシにとってもお気に入りの場所じゃから仕方がないわえ。
そんなわけで本番は明朝じゃ。今日のところは夕方まで辺りを一回りしてみようわい。
お目当ての湿原を上の方から眺めるとこんな具合じゃ。
湿原の遠くには八ヶ岳。そのまた向こうには富士山が見えるのじゃが、今日はあいにく雲がかかっているわい。
富士山のように見えるが、これは蓼科山じゃ。
霧が出てきたのう。
この晴れ間が明日の朝まで続いてくれるといいのじゃが。
逆光を浴びてススキが光る。
雲が多くなってきたのう。明日は大丈夫かいな。
スポットライト浴びて際立つ木々。
霧が次々と流れて来る。
遠くのススキが光る。
黄昏時になってきたわい。
一段と輝くススキ。
時間の経過とともに夕焼け空が広がって行く。
相変わらず湧いては消え、消えては湧いてくる霧。
その名も霧ヶ峰じゃから当たり前か。
この辺りが今日のクライマックスかのう。
そろそろ終わりじゃ。
今夜のねぐらへ引き返す途中で出会った夕焼けの名残。
ねぐらへ戻ってきたが…
やけに雲が多いわい。明日は大丈夫かのう。
…などと心配しながらコンビニ弁当を食べていると、目の前に車が2台停まった。
さてはご同輩でもお出でになったのかなと思っていると、中からビデオカメラや三脚、照明道具などを持ち出した5、6人の人影が…。
いきなりライトを煌々と照らして何やら撮影をし始めたのじゃよ。
テレビ番組のビデオ撮りでもしているのじゃろうか。
景色の撮影ならわざわざ夜間に撮らなくてもいいのにのう。
さっぱり見当もつかぬうちに、ご一行様はそそくさと車に乗り込み、あっという間に走り去ったわい。こりゃ一体何じゃろうのう。
まあ、ワシにとってはそんなことはどうでもいいのじゃ。明日の朝に晴れてくれさえすればいいのじゃわい。
夜中はもっと冷えそうじゃの。久しぶりにFFヒーターをつけるとするか。
ZZZ ZZZ
さて翌朝。
天気はどうじゃ?
恐る恐る外へ出てみた。
暁闇の空を仰ぐとお月様が見える。てっぺんは晴れているようじゃな。
しかし地平線辺りの天気が問題じゃからのう。
いらいらしながらしばらく待ったのじゃが…。
しかし…
日の出時刻を過ぎてしまってもとうとうご覧の有様じゃ。
こりゃダメじゃ。ワシの目論見は大外れじゃ。
これ以上居ても仕方がない。帰るぞえ。
また出直せばいいのじゃ。
と、ぶつぶつと負け惜しみをつぶやきながら、すごすごと引きさがって行ったというお些末な一席。
帰りの高速PAで。
何じゃい。今ごろピカピカ光りおって![]()
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