そんなある日、買い物ついでに、ホワイトハウスという、輸入車やキャンピングカーなどを扱っている店に立ち寄ってみたんじゃ。
そこで目に留まったのが軽自動車を改良した、いわゆるミニキャンピングカーというヤツで、ホンダバモスをキャンピングカー仕様にしたホビオマイボックスという車じゃった。
ホビオマイボックス
中を見ると、小さな図体のくせにゆうゆうと足を延ばして寝られる室内空間になっているし、シンクまで付いている。
ホビオの室内 右に見えるのがシンク。
おまけにエアヒーターと称するFFヒーターまで装備されているんじゃ。
これは真冬の車中泊でエンジンを切ってもポカポカの車内で寝られるという優れモノの暖房機器じゃ。
そして何よりも気に入ったのは、軽自動車じゃから細い道でも難なく入って行けることじゃった。
そこで思わず、後先も考えずに衝動買いしてしまったんじゃなあ。
しばらくは大満足で車中泊を繰り返していたんじゃが、どんな車でも100%満足ということはないもので、乗っているうちにいろんな欠点が目につきだしたんじゃよ。
軽自動車に乗ったのは初めての経験ということもあってか、まずはパワー不足が目立ち、思ったように加速しない。
またある時は、道路わきに車を停めたら、そこが少し柔らかい地面だったため、車輪が空回りして脱出できなくなり、他の車に引っ張り出してもらうというお粗末な出来事もあった。
さらにこの車は本来のバモスより、さらに一段ルーフを高く設定してあるため、風に弱く、高速道路などの走行中に少し風が強いとふらつくし、トラックなどが追い越していくたびに風圧で揺れ、ひやひやしながら運転しなければならず、これだけで撮影地に着くまでにストレスが溜まってしまうんじゃよ。
渋峠の朝
忘れもしないあれは志賀高原へ行った時のことじゃった。
あちらこちらを撮影しながら夕方には渋峠まで登り、そこで朝の撮影備え
て車中泊をすることにしたんじゃよ。
ところがしばらくすると空模様が怪しくなって、ものすごい強風が吹き出したんじゃ。
なにしろ峠のてっぺんで、見晴らしのよいところじゃから、車はモロに風を受けて揺れに揺れ出し、今にも転覆するんじゃないかと生きた心地がしなかったわい。
思わず、降りて車を横から支えようかなどと、今にして思えばバカみたいなことを考えたもんじゃ。
後から分かったことじゃが、この烈風は今で言う爆弾低気圧というやつだったらしい。
これに懲りて、便利に使ってきた愛車ではあったが、やむなく見放さざるを得ない心境になってしまったんじゃ。


