水祭り特集 | カンボジア的スローライフ

カンボジア的スローライフ

スローダウンしてみると見えてくるものがある。ありふれた日常のささやかな出来事。人生って、そんなささやかな暮らしの一つ一つが集まったもの。だから、その一つ一つを大切に暮らすことができたらいい。マンゴーがたわわに実る国、カンボジアからの発信。

水祭りとは?

カンボジアの観光省の案内によると、カンボジアの水祭りの起源は3説あるという。

1) 古代クメール王国がもっとも繁栄した時代の王様・チェイバルマン7世(ジャヤバルマン7世)に関する記録によると、12世紀のアンコール王朝の時代に、時の王であったチェイバルマン7世(ジャヤバルマン7世)がチャム王国(チャンパ・現在のベトナム領土)との水上合戦に勝利し、当時の繁栄を築いたとされている。その偉大なる王の業績を賞賛し、アンコール王朝の繁栄を称えるために行われる儀式。

2) カンプチア・クラオム(現在の南ベトナム)にある仏教学術大学のタッチ・ペン教授によると、ロンヴェック時代(16世紀)当時に編成された水軍は数種の異なった船体と独自の戦法を持っており、11月の満月の時期に水軍の誇示のために軍勢を各地からの川の合流地点に大移動させ、そこでボートレースをして競わせたという。この出来事が、水軍の優れた戦力を誇示するよい機会として、毎年行われるようになり、長い年月を経て、伝統行事になったとされる。

3) その他の歴史研究家によると、この行事は今日北欧地域で行われているいくつかの祭りと類似点があると言われている。または、仏陀の歴史と密接なつながりを持っており、そこに起源があるとされる説もある。さらに、そのような宗教的な観念から、クメールの大地に繁栄を与えてくれる水の神や大地の神にその感謝を捧げると意味があるとも言われている、そのような、研究を通して、この水祭りがバラモン教の伝統に従い、農業社会の日常生活を反映させたお祭りだとする説がある。

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 日本語では簡易的に「水祭り」と称しているが、クメール語では、この3日間をいくつかの単語を連ねて、非常に長い呼称となっている。「王宮行事・水祭り・精霊流し・満月参拝・オンボック(もち米を炒って搗いて平らにしてあるもの)を食べる」と妙な訳になってしまうが、強いて訳すとすればこれで意味がなんとなく理解できるであろうか。

 昨今の水祭りでは、3日間王宮前のサーップ川でボートレースが行われる。国王や王家親族、政府の要人などが観覧する。レースは常に2艘が競う形で行われる。最終日には、レースの後に、かつてのクメール水軍の勇姿をたたえて、競技に参加したすべての船が、船の先頭で刀を振り回して敵を威嚇する大将軍の乗る船に導かれて、「カンプチア万歳!」と連呼しながら、国王らの迎賓席の前を疾走していく。隣国の侵略に負けることなくこの国土を保持していくという愛国心の意識を高めるため、そしてかつての水軍の勇姿が現在の国土を守り残してくれたことへの恩に敬意を表すため、カンプチア王国の誇りのため、「カンプチア万歳!」が連呼されて、空にいくつもの風船が放たれ競技は終了する。

 昨年は、メコン流域各国代表の船のレースがあった。タイ、ラオス、ベトナム、中国、カンボジアの5カ国だった。今年はなかった。昨年、カンボジアはタイに負けてしまったので、今年は、取りやめたのだろうか。

 競技の後、精霊流しが行われる。各省庁の電飾船が流れてきて、その電飾の飾りの意味が説明される。毎年同じだが、今年は、民間の銀行が有志で電飾船を出したので、昨年より一つ増えて9艘になった。夜空に花火が上がり、プノンペン市中に花火の音が響く。

 

 今年は、市内の数箇所で文化芸術省による伝統芸能の披露も行われた。クメール王国は、かつての戦乱時代にその勇姿を誇る、偉大なる文化と伝統を作り上げてきた誇り高き民族の国であることを実感する。

  

水祭りとは、雨季が終り乾季になるこの時期、サーップ川(トンレサーップ)の流れも変り、涼しい風が吹き始めたこの時期に、プノンペン市の王宮前の川辺で開催される水祭り観戦を楽しみ、かつてのクメール水軍の勝利や繁栄を誇りに思い、夜空に輝く満月の下で、オンボックやバナナなどを食べ、長生きと、稲の豊作や食べることに苦労しない暮らしの平安を願い、語り、歌い、踊り、楽しむ国民的行事である。