コロナ感染者が収容されるクメールソビエト友好病院。
先日、内部に入る機会がありました。
四男の嫁(正確にはまだ婚約者)が盲腸の手術を受けたのです。
ここは公立病院なので、貧乏人ばかりが入院しています。
噂からイメージしていたほど、酷い内部ではなかった印象です。
(私の感覚が一般的日本人とは既にずれているかもしれませんが)
四男嫁は、ときどき起きる激しい腹痛を半年間も我慢しながら、中国系の工場で働いていました。
とうとう痛みに耐えきれなくなり、夜中に四男が近所の病院に担ぎ込んだら、手術だ、と。
手術代だけで600ドル。それ以外に安いですが入院費も必要です。
四男嫁の家族は、以前書いたとおり田舎の貧乏農家です。
駆け付けた母親と姉も、数十ドルしか工面できませんでした。
四男自身が職場で借金した100ドル。
次兄とサザエ姉さんがそれぞれ100ドル。
あとは結局、私が負担しました。
それもあったので、見舞いがてら出向いたわけです。
盲腸なら、カンボジアであっても手術翌日には退院、が普通。
ところが長い間、悪化させてしまったせいか痛みが消えなくて、結局1週間も入院しました。
職場で医療保険に加入できたのですが、保険証の作成に行かずにいた四男嫁。
自分は若いから、病気になんてなるはずがない、と考えていたそう。
嫁ちゃんが叱り飛ばしました。
保険証があれば、公立病院での治療は原則、無料ですからね。
無学無知って、こういうとき、怖いですね。
半年間も痛みに耐えたのは、偉い、と言えなくもありませんが。
さて、本題です。
公立病院なので、「おカネがなければ治療しない」とかは基本、ないわけです。
ところが、入院している患者に付き添っている家族。
医師が巡回してくると、我先に、とポケットに札をねじ込むのだそう。
そんなことしなくても、ちゃんと決められた回数、巡回してくるし投薬もするのよ!
嫁ちゃんが周囲を諭してからは、同室の患者家族はそれを止めたそうです。
しかしすでに四男嫁の母親は、なけなしの有り金を全部、巡回してきた医師に渡し済。
それを知った四男からも𠮟責され、四男嫁の母親は逆ギレ。
彼女に限らず、カンボジアの庶民は、「病院ではそうするもの」と信じているのです。
唯一、救われる気持ちになった話もあります。
手術を終えた後、巡回してきた医師に、ある家族がアンダーザテーブルを渡したとき。
その医師は毅然とした態度でこう諭したそうです。
「私は病院からちゃんと給料を貰っている。そんなおカネは必要ない。もし、それを受け取るような医師が他にいたら、私にその医師の名前を教えなさい!」
誰も他の医師の実名は挙げなかったそうですが。
(そういうところは日本人と似た感性かもしれません)
1人だけかもしれないけど、立派な医師もいた!
嫁ちゃんがちょっと、嬉しそうに話してくれました。