12月18日(日)入院11日目。
6時00分に起床。
8時に朝食、点滴は9時から1時間。
今日は日曜日なのでリハビリは無し。
コロナで面会も叶わず、人との接点がなくなるは辛い。
あと3日でシャバに出られる。外の空気が楽しみだ。
18時に夕食を食べて、23時頃就寝予定。
昨日はカーボンバイクの話をしたので今日はチタンバイクの話を。
チタンバイクは1972年にイギリスのスピードウェル社が作ったチタンフレームが市販としては最初で、その後アメリカのテレダインが続いたが、実用化という意味ではMTBブームにより1990年代にアメリカでマーリンやライトスピードがチタンフレームを出してやっと一般化したと思う。
チタンという素材はワタシにとって思い出深い素材だ。
ワタシが中坊の頃、カンパニョーロのスーパーレコードが発表された。
その新型パーツには何か特別な素材が使われているらしいと言われた。
そのころはまだ馴染みの少ない「チタニウム」で、宇宙船の素材だった。
当時、スーパーレコードは一般用には販売されず、選手でもエース級しか供給されなかった。
どこに新素材が使われているのか分からず、黒い部分がチタンらしいと噂が流れた。
発表されて 2年ほど経ってやっと一般販売が始まったが、ただでさえ値段が高いカンパニョーロなのに、スーパーレコードはレコードの倍近い値段がついていて中坊のワタシは驚いた。
当時のワタシはチタンという素材に畏怖の念と憧れを抱いたのだ。
そのチタニウムで造られたフレームがあるならゼヒ乗ってみたい。
しかしチタンフレームは超高く、テレダインやスピードウェルは実物を見たこともない。
自分が新車を買える訳もなく、1990年頃、知り合いが買ったモリ工業のチタンバイクに試乗させてもらった。
乗らせてもらったチタンフレームの印象は、振動の入りが丸く柔らかい乗り味で、もっと硬い乗り味を想像していたのでちょっと肩透かしを食らった。
ウイップも多めで、アルミのALANのようなしなやかな印象だった。
その後も少しずつチタンフレームが出て来て、他のチタンバイクにも乗らせてもらったが、みな同じ印象。
2002年頃、知り合いからビアンキのクロノベルズィンというチタンのTTバイクの処分を頼まれた。
サイズは小さいけど折角なので処分前に乗らせてもらう。
硬そうだなと思いつつ乗ってみると、振動はガツガツ来ないし、ペダリングの反応が硬くない。
今まで乗ったチタンフレームよりはウイップは少なめでしっかり感があったが、フレーム形状がTTバイクなので乗り味はダイヤモンドフレームとは違うのだろう。
そういう踏み台を経験しつつ、ワタシが最初に買ったチタンフレームは、2003年にMTBのMOOTS YBBで、ショートストロークのリヤサス付きのフレームだった。
MTBのコラムでも書いたが、リヤサス付きの為か反応がイマイチで、踏んでも進まなかった。
どうもチタンフレームというのはもっと硬くてレスポンスが良いフレームを想像していたが、自分が持っていたチタンの印象とは違う。
それでも自分に合ったチタンロードバイクに乗ってみたい、という思いに抗えず、考えに考えて2004年頃にコルナゴのCT-1というチタンフレームを買う。
イタ車のコルナゴに材質がチタンというところが大人のロードバイク感がある。
チタンフレームの乗り味は丸いが、このフレームは6.4チタンで素材が硬いはずだし、ちょっとでも反応が良くなるようにカーボンバックのフレームにしてみた。
さあその乗り味はどうなのか、と大きな期待をしつつ、CT-1に乗ってみると、やっぱりレスポンスがイマイチで反応が鈍くだるい乗り味。
踏んでも反発が遅く後輪を引き摺るような感覚。
同時期に乗っていたTREKのOCLVカーボンがよく走ったので、その差が大きかった。
想像するに、クロモリフレームやカーボンフレームよりねじれて戻るときの反発力が弱いのだろう。
チタンには強い憧れを持っていたが、どうも思っていたより柔らかい乗り味で、自分が持っていたチタンの硬くて強いイメージとはかけ離れている。
チタンバイクはこんな感じなのかとガッカリした。
結局チタンバイクの乗り味は自分に合わないと、コルナゴCT-1は処分してしまった。
それから数年が経過。
2009年にマルコバメンバーのAクラがマーリンのロードフレームを買った。
マーリンはアメリカのチタンバイクで、乗り味の評価は高かった。
試乗させてもらうと、チタンの素材感がありながら怠さはなく、金属車として上質な乗り味。
コレは乗りやすい。良いチタンバイクというのはこんな乗り味なのか。
何が違うのだろう。素材なのか、スケルトンなのか、造りなのか。
やっぱりアメリカのチタンバイクは作り慣れている感じがする。
当時のトップスプリンターだったロビー・マキュアンは、ライトスピードのチタンバイクで勝っていた。
ライトスピード・アルティメットは、「マジックカーペット」と称されていた。
コレは一度アメリカンのチタンフレームに乗ってみたい。
そんな折ヤフオクにでかいサイズのライトスピード・アルティメットが出た。
コレは試すしかないと、アルティメットを落札した。
さっそく手持ちのパーツで組んで乗ってみる。
乗ってみて驚いた、今まで乗ったチタンバイクと乗り味は段違いだ!
細かい振動をいなすチタン独特の素材感はあるが、ペダリングの反応が良好で、ぐんぐん進んでくれる。
今まで乗ったどのチタンバイクよりレース機材として使えるフレームだった。
その理由はなんだろう、アルティメットのチタンパイプは3-2.5Tiと6-4Tiミックスだからなのか?
パイプを変形させて応力に強くしているからなのか、理由が分からない。
Fフォークは付属の LOOKカーボンフォークは剛性が低かったので、LOOK→TIME→ワウンドアップ→アマンダ→ワウンドアップと交換した。
アルティメットが良かったので、そろそろディスク車に乗ってみたくなり、直系メーカーであるリンスキーのスポーティヴDiscを購入。
ところが悪くはないのだが、アルティメットよりダイレクト感がなく乗り味がぼやけた感じ。
うーん、チタンは当たり外れがあるな。難しい。
性懲りも無く、今度は2014年にコルナゴ・ビチタンをヤフオクで落とした。
コレは乗ってみたいチタンフレームだった。
ダウンチューブが 2本の細いパイプで組まれた「ビ・トゥーボ」のチタンフレームで、ロミンガーやオラーノがジロや世界戦で勝利を重ね、C40が発表されても乗り換えようとしなかった伝説のチタンフレームである。
組んで乗ってみるとコレは良かった。
ビチタンはダウンチューブの強さのせいなのかフレーム剛性は高く、レスポンスが良いし、コルナゴのハンドリングと安定感ですごく乗りやすい。
気に入ってしまった。
難点は買った時から塗装の乗りが悪く、塗装がかなり剥がれかかっていたので、絹自転車でサンドブラストを掛けてもらい、チタン素地の仕上げにしてもらった。
当然Fフォークもコルナゴクロモリストレート→TIME→アマンダ→TIMEと換えた。
これでチタンバイクは 2勝3敗。MTBも入れるなら 2勝4敗か(苦笑)
チタンの迷宮の世界に踏み入れてしまったが、良く走るバイクの傾向としてダウンチューブが強くしっかり造ったチタンバイクは走る傾向がある。
そんな中、マルコバメンバーのナンスがライトスピード・ヴォーテックスに乗っていたが、大きめサイズなので乗りますか?とワタシに流してくれた。2018年のこと。
ヴォーテックスはオール6-4Tiの薄肉チタンフレームで、ハイエンドのチタンフレームだ。
ありがたく乗らせてもらうと、確かに薄いパイプ感はあるが、変形させたチタンパイプのおかげで剛性感は低くないし、何よりフレームのレスポンスが良い。
素材が硬い6-4Tiのせいかも知れない。
このフレームも気に入り、Fフォークを3T→ワウンドアップ→TIME→グラファイトデザインと換えた。
ということでこんなチタン遍歴をして現在チタンロードは3台体制である。
なかなか台数を減らせない。
で、チタンフレームってどうなのか。
ワタシはチタンフレームの素材感はとても好きで、頬ずりするほど好きなんだが、冷静に考えると、チタンフレームは当たり外れ、いや合う合わないが強く出る素材だと思う。
使い方、乗り方によって向き不向きが出るし、サイズによって乗り味の違いが出る。
そして加工の仕方で素材割れが出るのも何度も見た。
誰にでも合うとは言えないが、面白い素材でカーボンに無い優しさがある。
良いチタンフレームはペダリングのレスポンスが良好で、カーボンにはない独特の振動減衰性があり、長く乗っても疲れが少ない素材だ。
チタンは錆びないので塗装が不要で、塗装車より100g以上軽くなる。そして無塗装の素材感が良い。
重量は超軽量ではなく、クロモリよりは500gくらい軽いけど、カーボンより500g重いか。
カーボンのヒラヒラした軽さよりはしっとりした踏み心地になり、300km以上走るブルベでは疲れの出方が違う。
そしてダウンチューブからチェーンステーをしっかり造ったチタンフレームは、フレームレスポンスも良く、走る傾向を感じる。
小さいサイズならフレーム剛性は更に高くなるので有利だろう。
デメリットは、ウイップのレスポンスが遅いこと。
そこをどう対応するかはチタンメーカーの設計の難しさだ。
構造的にはチタンパイプを広げて加工したインテグラルヘッドや、無理な曲げ加工は割れが出る可能性が高くなる。
6-4Tiのパイプは乗り味が硬くなり、変形が減るけど、製造コストが高くなり、素材割れするリスクも高くなるという。
やっぱり信頼できるメーカーやビルダーさんにお願いするのが良さそうだ。
それでもワタシはなんだかんだ言いつつ、怪しい魅力があるチタンバイクが好きなのだ。
迷っているそこの貴方、チタンの迷宮に入ってみるのも面白いですよ。