ホスピス医 小澤 竹俊著の「苦しみの中でも幸せは見つかる」
からも学んでいきたいと思います
◆近代ホスピスの創立者であるシシリー・ソンダースは、
人間の苦しみには4つあると紹介しています。
①肉体的な苦しみ…身体的な痛み
②精神的な苦しみ…対人関係から起こる悩みや苦しみ
③社会的な苦しみ…対社会的関係から起こる悩みや苦しみ
④スピリチュアルな苦しみ…ホスピスの患者さんが抱える苦しみ
つまり、自己の存在と意味の消滅から生じる苦しみ
◆その苦しみから発せられる投げかけは…
「答えのない問いかけ」と言われています
例えば、「どうして、私が?」という問いかけです。
医療者が「答えることのできない問いかけ」に対して、
答えを出そうとすればするほど…
苦しんでいる患者さんは、
「自分の苦しみはこの人にはわかってもらえない…」
と感じていくからでしょう
小澤先生はホスピス病棟に限らず、
私たちの中にはスピリチュアルな苦しみが多くあると言います。
人間としての存在を失い、
その理不尽な思いから答えることができない問いかけが
湧き上がることは、実は身の回りにたくさんあるのです
存在(生きている)とは…
ただそこにいるのではなく、
そこにいる意味や理由を考えていくことです
つまり、人間が生きていく上において
欠かせない大切なものとは、何かを考えることです。
その大切なものが見えてきたときに初めて、
人は苦しみの中でも生きていこう(存在し続けよう)
とする真の力を得ることができます
逃げないでその苦しみにとどまり、
その苦しみに向き合って
生きていこうとすることもできるのです
このような力はいったいどこから来るものなのでしょうか
その問題を考えるために、
小澤先生は人間の『存在論』という、
少し哲学的な背景を説明してくれています。
「存在論」には「時間存在」「関係存在」「自律存在」
という3つの軸があります。
1 「時間存在」…過去から未来へと続く、現在を生きている存在
人間は時間的に生きている存在(時間存在)です。
時間存在である人間は、
「過去→現在→未来」というつながりが
弱くなったり、壊れたりすると、
存在が非常に稀薄なものになってしまいます
過去にしっかりとした自分がないとき、
その人は安定した未来を
思い描くことがとても難しくなります
例えば、
・何か困ったことが起きたとき、誰かに甘えることができなかった
・家族や身近な人々にとって、
自分が大切な人間として扱ってもらえなかった
そのような経験がある場合…
しっかりと自分の過去を見つめ直す必要があります
最近は過去にしっかりとした自分がないために、
未来を思い描くことができなくなってしまっている人が
増えているように感じます
自分の過去ー
良かったこと、悪かったこと、楽しかったこと、苦しかったこと、
嬉しかったこと、哀しかったことー
それらをすべてをありのまま受け入れることができたとき
新しい未来を切り開く力が
湧いて来るのではないかと思いました
2 関係存在…他者から与えられる自分の存在
「人間は個人個人で生きているように見えても、
実は他者によってその存在が支えられている」ということです
<関係存在の概念>
小澤先生がフインガー5の『学園天国』という歌
で説明してくれています。
◆公式 人の存在は他者(相手)から与えられている
◆例 学園天国のC君
・授業中がハッピーとなるC君の存在は…
隣の席にいるクラスで一番美人のBさんから与えられる
この関係を公式に当てはめて言い換えると、
・授業中がハッピーでないC君の存在は…
隣の席にいないクラスで一番美人のBさんから与えられる
と言うことができます。
ひとりよがりでは築けない関係存在
最近の教育現場でも、関係存在の希薄さが原因と思える
問題が増えていると言います。
例えば、校内暴力や学級崩壊などは…
親から先生からも存在を認めてもらえないため、
子どもたちが自暴自棄になっているために
起こるのではないかと考えられます
小澤先生は本来、この時期の子どもたちの関係存在を支えるのは、
親であったり身近な大人であるはずです。
そのような現場に実際に行って話を聞けば…
親や先生は、
「自分たちは子どもの気持ちを理解しようとしているし、
支える存在になろうとしている」
と反論するでしょう
確かにそれなりに一生懸命に考え、行動しているのだと思います。
しかし、その思いや行動は…
子どもたちには届いていないことがあります
たとえそれが届いていても、
子どもが、親や先生を「自分を支えてくれる存在である」と
認めないこともあるでしょう。。。
Q どうしたら子どもたちが、
親や先生に支えられていると
感じてもらえるようになれるのでしょうか
関係存在は他者によって与えれているものです。
ただ、与えてくれる他者を選ぶのは…
あくまでも本人(子どもたち)であるんです
与えていると考えたい他者(親や先生)ではない
ということを認識しておく必要があります
3 自律存在…自分で決めることができるという存在
「人は自分のことを、
自分で決められる存在(自己決定できる存在)である」
ということです
行動するときに他者に頼るしかなく、
自分で自分の身の回りのことができなくなる(自立が失われる)と、
人は生きていく気力を失ってしまう経験をします
一方、身体的な自立が失われても、
自分のことについて自分で決めることができる
=自律できると思えたとき…
人は生きる希望を捨てずに暮らしていくことができると、
小澤先生は考えています。
そのためにホスピスでは、
「自立を失っても、自律できることを支える」ことを
目標としているそうです
例えば、末期の肺がんのAさんの状態と気持ちの変化について
①自立を失う(自分は役に立たないと感じる)
②死にたいと思う
③他者との関係性の中で、自分の存在を再認識する
④こんな自分でも生きていて良いと思える
⑤自律を回復する(人にゆだねることできるという自己選択を得る)
「こんな人間でも生きている人間として扱ってくれる。
だから、こんな自分でも生きて良いと思える」
これはAさんが、
社会的には役に立たなくなったと感じる苦しみの中で、
ホスピスのスタッフのケアを受けたことを通して…
他の人にゆだねることができる自分を獲得し、
再び生きる気力を持ったということなのです
◆自律存在を失う苦しみは、
病気やけがに限ったわけではありません
・意味なく制限の多い校則、
・意に添わない進路決定、
・自分の意思が尊重されない、したくないことをさせられる
ーなど、
◆自己決定の自由が意味なく限られてしまうと、
元気がなくなり、生きていてもつまらないと
感じるようになります
そうなってしまった人は、自律存在を失う
「スピリチュアルな苦しみ」を持っていると思いました。
ワタシはこれから先、もし…
自立を失うことなってしまっても、
自分のことは自分が決める「自律存在」として、
生きられたらいいなあと思いました
でも、それには…
自分を支えてくれる「他者存在」が必要なんですね