「不快な感情」の減らし方の「感情処理法」について、さらに進めていきたいと思います。
前回は「悲しみ」の感情処理法でしたが、今回は「恐れ」の感情処理法について考えていきたいと思います
私たちは恐れを、ときには不安や心配や恐怖として表現します。
言葉の文脈から判断すると、恐怖、恐れ、不安、心配の順に、
興奮のレベルは弱いものになっていきます
1 ネガティブな未来の空想と恐れ
自身の認知の歪みに気づいて、修正する
①恐れは危機に遭遇したときに、そして②未来のことをネガティブに
空想することにより湧く感情です。
①の身の危険に対する反応としての恐れより、
持続時間の長い恐れである②…例えば、
「提出した書類が間違っていたらどうしよう?」
「将来どうなるんだろう?」などと考えることにより、
生起するのは”不安や心配”と表現される”恐れ”です。
不快感情である不安や恐れは、未来に関して良くない空想をする
ことから生まれてきます
まだ起きてもいない不確かな未来に良くないことが起きるという
空想は事実思考ではなく、そこには歪んだ思考が介在しています
それを自身が気づくことが重要です
認知の歪みの10パターン
①100-0思考(全か無か、白黒思考)
②一般化のし過ぎ(過度の一般化。数少ない証拠で結論を下す)
③心のフイルター(自分のネガティブ思考の正当化する否定的な
部分だけを取り上げる)
④マイナスか思考(ポジティブな側面を否認)
⑤結論の飛躍(独断的推論。相手は自分が何を欲しいと思っているか
知っているべき)、
結論の飛躍の先読みの誤り(否定的予測)
⑥拡大解釈・過小評価(誇大視と極微視)
⑦感情的決めつけ(考えの根拠が自身の感情となっている)
⑧べき思考(すべき表現。批判的にものごとを考える)
⑨レッテル貼り(不完全さを理由に否定的な人間像を作り出す)
⑩自己への関係づけ(自分に関係ない出来事を関係あると考える)
認知の歪みを修正して不快感情を減らす簡単な方法は…
事実はどうなのかを考えてみることです
★未来のことに関しては…
・うまくいくか、うまくいかないのか先のことはわからない
現時点で結果はわからないのが事実です
例えば、「テストがうまくいかなかったらどうしよう・・」
Q 「テストがうまくいかなかったら、どうなると考えているのか?
どんな悪い未来を空想しているのか?」と……考える
★ネガティブな空想を明確にしていく
A テストがうまくいかないと人生がうまくいかなくなる・・」
Q 「人生がどのようにうまくいかなくなると考えているのか?」
★さらにネガティブな空想を明確にしていく
A 良い会社に就職もできないし、家族にも愛想をつかされる
★沢山の歪んだ認知の基づく思考がありますね
自身の認知の歪みに気づいたら…
不安を息で吐き出し感情処理をするよりも、
認知の修正をしたほうが解決が早い場合も多いです
2 次々と不安を作り出す
全般性不安障害ほどのレベルではないものの、
次々と不安を作り出してしまう問題があります
心配や不安や恐れの対象が一つに限られず、
様々な対象に対して不安を抱いてしまうものです。
・過度の心配性もしくは過度に不安がるという感じですね
例えば、過度の心配性の親に養育された子どもは、
特に恐れや不安を感じていないと思っている?…
しかし、多くの子どもは恐れや不安を体験していないのではなく、
抑圧または抑制しているのです
★感じないように身体に力を入れてブレーキをかけて
過ごしているのです
そうすることが毎日を少しでも心地よく過ごせるという
賢い知恵(解決手段)を身に着けているのです
★しかし、恐れや不安を抑えるとコップに溜まってきます
そして幼少期から溜めてきた恐れや不安のコップの水が一杯になり、
常に一滴であふれる状態になっているため、
現在それほど不安を体験してなくてもよいはずの些細なことに
対しても不安を感じてしまう…
ちょっとしたことに不安を覚え、
それがずっと気になってしまうのです
今も不安を感じたときは、小さい頃と同じように
身体に力を入れて抑えようと試みています。
しかし、コップは一杯で、溜めておく容量が残っていないのです
恐れや不安を処理するには…
一杯になったコップの水を減らし空き容量を作ることが必要です
★不安や恐れを息で吐き出す感情処理をしていくことで…
不安のコップに溜まっているものは減り、
徐々に自身が体験する不安も減っていきます
不安が減るにつれて、徐々に決断が早くなり行動的に。。
”石橋をたたいて渡る”性格が、
良い意味で”なんとかなる”と思えてくるのです
不安が減っているにもかかわらず
自身の変化に気づきにくい場合は…
・不安の点数化(10点評価で今の自身の不安を何点か?)
自身が自覚できるように、
不安を点数で評価して見える化するといいですね
3 こだわりの強さ
こだわりが強いとは、不合理だとわかっているけれども、
それをやめられないような状態です
例えば、
・外出時のカギの確認を何度も繰り返してしまう
・皿を洗い水切りにたてかけるときに、皿の絵柄が同じ向きになって
いないと汚れているような気がしてしまい、洗い直しをしないと
気が済まない
★恐れという感情を良くないものとして、
体験し受け入れることを拒否してきている…
・これは不快で良くない恐れを感じないようにするために、
きちんとやることで対処しようとしているということです
そのために恐れのコップは一杯になってしまっています
恐れを受け入れ体験することにより、
一杯になったコップの中身は徐々に減らしていけるのです。
そして徐々にこだわりから解放されていきます
つまり、
きちんとやることは当たり前
不安や恐れはもちろん、感情そのものを良くないものと
考えている、感情全般を抑えて生きて来たのです。
少しずつ…
恐れや不安をとても弱いものから体験し、
次第に強く体験できるようになり…
玄関の鍵や洗い物でのこだわり行動がなくなっていくと思います
4 恐れと過緊張
世の中が安全ではないという思い込みを持つことによって、
心と身体が常に警戒状態になります
いつ何が悪いことが起きるかわからないために、
用心しつづけなくてはならないためです
また、他者が信頼できないという思い込み
が強すぎる場合にも、同じく警戒状態になります。
★いつ他者から傷つけられ、騙されるかわからないために、
用心が必要になるためです。
警戒しつづけなければならない状態では…
身体に常に力が入り、また心も常に何か悪い状況が起きていないか
周囲の様子をうかがっている状態になります
このとき、心身は大きなエネルギーを消費しつづけているため、
心も身体も疲弊してしまっているのです
★過緊張状態では、
恐れが身体の緊張のために、内側に抑え込まれており、
処理されずに残っています。
過緊張を処理するためには、
①身体の力を抜き、恐れが処理されること
”ゆっくり呼吸して””恐れを感じても大丈夫だよ”と
自身に声かけしてみましょう
②世の中や他者についての思い込みを変えていくことが必要です
5 生きていけないような恐れ
感情を体験することが自身の生き方を
脅かすような恐ろしさがあります
その恐ろしさは漠然としていて、
生きていけないというのも明確な思考ではなく…
”存在を脅かされるような感覚”として
表現される曖昧なものがあります。
例えば、他者に気を遣い過ぎる傾向があった。
常に他者優先であり、他者が喜ぶことを優先して、
自分の言動を決めていた…
★自分の欲求を大事にも、自身の欲求が何なのか?
また何を我慢している?のかもわからなかった
自分の欲求を抑え、”みんな機嫌を良くしなければならない”
”自分の欲求を優先してはならない”と
決断していった。。
もしも…
自身の欲求を抑えることなく、
家族の機嫌を取らない自分になってしまったら…
独りになることであり、生きていけない環境になることであった
★人間は自身の存在を脅かされるような恐さは…
生命に関することなので、恐さを感じること自体も
恐いので抑えてしまうのです
身体に力が入っているためか、
恐れだけでなく他の感情についても抑えている傾向があります。
特に怒りも感じにくい。怒りを感じにくいと、恐れも感じにくい
★したがって感情処理は、
恐れだけでなく、恐れの次には怒りという具合に
両方の感情処理を進めていく必要があります。
★怒りを出せるようになると、
恐れも感じることができるようになります。
怒りと恐れと出しやすい感情を先に処理を進めていくといいです。
6 攻撃の背景にある恐れ
些細な刺激で感情的に他者を攻撃する人も、
恐れにブレーキをかけていることが多いです。
★肥大化した自己愛の傷つきに関係しています。
恐れの感情処理を進めることで、
他者への攻撃が減ることが多いです。
①イライラなどの軽い怒り(攻撃)は悲しみの感情処理が
効果的です。
②感情的な怒り(攻撃)、大きな声を出したり相手を威嚇したり、
暴力を振るったり、いわゆるキレてしまうような場合は、
恐れの感情処理が効果的です。
それは他者の評価にとても敏感で、常に傷つきやすい。
その傷つきが怒りを生み出してしまうのです。
怒りの前に傷つき、恐れていることに気づくことが必要です。
7 コントロール不能な恐れ
恐れはコントロール不能と信じて、
恐れを感じないようにしている人がいます。
恐れをコントロール不能であると思い込んでいる人には…
歪んだ認知を正そうとするアプローチより、
恐れを体験した場面に身を置き恐れを感じ、
それを徐々に処理され減っていくことを、
実際に体験するほうが効果的です。
その方法は…
・最初は弱い小さな恐れを感じた場面から徐々に処理し、
次第に大きな恐れを感じた場面の感情処理をしていきます。
・または恐れを感じた場面で、最初は恐れと距離を取ったように
話を進め、次第に体験できるよう距離を縮めていく方法です。
恐れと距離を取って話を進めるやり方は…
①恐れを感じた場面を昔の出来事として回想的に過去形で話す
・もしくは第三者がその出来事を俯瞰して見ているように
話をするところから始め、
次第にその出来事が今ここで進行している自身の体験のように
話を進めていきます
・恐れを体験し始める、これ以上恐れを感じてしまうと
コントロールできなくなると、不安になるために、
ブレーキをかけようと身体に力を入れてしまいます。
・身体に力を入れて緊張させると、
身体の中に湧き上がる恐れが身体の外に出ていかず、
内側にとどまりつづけたまっていきため、
瞬く間に恐れのコップがあふれる状態になってしまいます
そのような状態になると、
恐れに圧倒されたように感じ、コントロール不能でおかしくなってしまうのではないかと思い、パニック状態に陥ってしまいます。
②ここで大切なことは…
身体の力を抜くことです
”恐れを感じても大丈夫””
恐れを感じてもおかしくならないよ”と
安心できるような声かけを自身にしてみてください
8 恐れに似たにせものの感情
恐れの感情処理をしても問題は解決しない場合があります
・混乱、不安感、心配、拒絶される感覚、猜疑心、
見捨てられた気持ちなどは…
恐れを体験するときに、一緒に体験していることが
多い感情のようです
・恐れを吐き出すことが大切です。
それが十分にでき、恐れが減った後、
怒りの処理も併せて実施することにより、
それらの感情が減っていく場合が多いです。
社交不安や対人恐怖症、パニック障害などの不安障害
のある場合も、恐れがあります。
◆社交不安は怒りの投射であるとも考えられています。
つまり、自身が怒りを抑圧して、
他者に投射しているために、他者との交流に過剰な不安を
覚えるのです
社交不安の場合は保護的な関係の中で…
守られていると実感しながら、
怒りを出していくことで…
守られている感覚と怒りを体験することが、
同時に進められ、
それにより、次第に人の中にいても、
恐さや不安を感じなくなっていくようです。
すなわち…
・自分が怒りを体験できるようになっていくことで、
次第に他者との交流に不安を感じなくなっていくのです。
★ここでも怒りの感情は抑え込まないことが大切ですね
対人恐怖症の場合は他者を嫌な気分にさせないように
という意識が働いています
幼少期より他者からどう見られるかによって、
自分の価値を決めており、
他者から悪く思われること、
他者が嫌な気持ちになることに神経質であります
◆怒りを体験できるようになること
◆自分で自分の価値を決めていくこと
そして
他者に影響されない自分になっていくことが重要です
パニック障害の場合は…
他者に気を遣い遠慮するところと、
どこか未熟で自分で自分の世話ができないという
依存的なところの両方を持っている人が多いと言われています
◆やはり怒りの感情処理が必要です。
怒りを体験できることで…
過剰に気遣いする性質と、
依存的な部分に改善が見られるようになるようです。
その結果、パニック障害の症状も緩和していくと言われています
恐れの感情に気づき
→受け入れ(「恐れを感じていいんだよ」と自分に許可して)
→自分の中で感情をありのままに体験し、
→不快な感情(怒り、悲しみ、恐れ、不安など)
を吐き出すですね
これまで「怒り、悲しみ、嫌」そして「恐れ」の感情処理について、
学んできました。
感情は抑圧したり、抑制しすぎることで、
いろいろな問題や症状が出てくることに驚かされました
そして、それぞれの感情の出方や強弱など、発生の仕方の違い、
怒り、恐れ、悲しみの感情がそれぞれにリンクしているなど…
感情とは複雑ですね……。
しかし、
感情の成り立ちやしくみを知ることで
自身の心に振り回されることなく、
自律的に心地よく生きていけるような気がしました
やはり、感情は自然に発生してくるものですから、
どんな感情でも、ありのままに感じることがとても大切ですね