受容しよう、共感しようと思っても、人の心はそう都合よく
動かないのではないでしょうか
ワタシも苛立ちや怒りが生まれることが当然あります。
それをいきなり相手にぶつけるのは避けるべきですし、
何でもかんでも相手に伝えればいいとも思ってもいません。
だからと言って…
それをあってはならないものとして、抑え込んだり、
そういう感情を持ってしまうことを責めたりしていたら、
自分が消耗してしまいます。
どういう感情であっても、それをまずは自分で認めてあげる
そのうえで、その感情との付き合い方、折り合いのつけ方を
探っていくことが必要だ…
と理路整然に頭では考えています。
しかし、そうは言っても…
ワタシはその場の勢いで、余計な言葉や皮肉を言ってしまったりと、
後悔することの繰り返しをしています
ここで考えたいと思ったことは…
自分の気持ちを無理に押し込め、表面上だけ相手に合わせて
うなづくこと…
相手を受容できない、受け入れることができないとき、
一体どうすればよいのかと思いました
そこで今回は、
「ひきこもり」から考えるー<聴く>から始める支援論
(石川 良子著)を読みました。この本から「受容」や「寄り添い方」についての考え方をご紹介いたします
石川先生の提案は…
共感・受容はいったんあきらめること
それはひきこもっている人との対立をそのままにしておくとか、
必要以上に関心を持たないようにするとか、
いったことではありません。
★この本では、特にひきこもっている人への傾聴の仕方について書かれています。
しかし、ワタシは私たちの普段の人間関係にとっても、とても有用な考え方だと思いました
受容の捉え方を少しずらしてみませんか
という提案なんです
具体的には、
受容の意味合いを「受け入れる」から、
「受け止める」に
書き換えてみてはどうか
「受け入れる」という言葉を聞くと、
相手の投げたものを何でもの飲み込んでいくイメージです
投げられたものを抵抗なく、
できれば美味しく飲み込めればいいのですが、
ものによっては自分の口に合わなかったり、
うまく飲み下せなかったり、
消化できずに戻してしまったり、反応は様々です
また、体調によっても違うかもしれません。
いずれにしても無理にのみ込むことは苦しく、
苦しさのあまり投げられたものを、
地面に叩きつけてしまうこともありえます
自分が向き合おうとしている相手の言葉、
あるいは相手の存在そのものを受け入れるのも、
これと同じような感じではないでしょうか
相手の痛みをわかってあげたい、
何とかしてあげたいと思い、
相手もそれを望んでいたとしても、
すんなりと受け入れられないことが
多々ありませんか
そういうときに様々な感情を抑えこんで、
無理やり受け入れようとしても、
余計な負荷を自分にかけて、かえって相手との関係を
悪化させてしまう可能性があります
相手を突き放すわけにはいかないけれど、
受け入れようとすれば自分が壊れてしまいそうだ
そんな状況に陥ったときには、
相手と向き合えるギリギリのラインを探る必要があります。
そのラインの一つに加えてもらいたいのが、
「受け止める」という態度なんです
相手の投げてきたものを直ちに飲み込もうとせず、
まずは胸のところでしっかり受け取る
それから手のひらに載せてしげしげと眺め、
その手触りや形状を確かめてみる
そんなイメージです
ちょっとだけかじってみて、
これは一体何なのか?と…
相手に尋ねてみるのもいいかもしれません。
また、どんなに頑張って受け取ろうとしても、
相手の投げ方が乱暴だったり、
あまりにもスピードが速かったりすれば、
うまく受け取ることはできません
そうしたら…
ちゃんと受け取りたいから投げ方を変えてほしいと、
相手にお願いしてもいいかと思います。
あるいは…
投げられたものを受け取れたとしても、
何を投げてきたのかもさっぱりわからず、
扱いに困ってしまうことがあれば、
ちょっと舐めてみたら、
とても苦くて口に入れられないようなことも
あるのではないでしょうか?
そうしたら…
それを相手にそのまま伝えて、
向こうの反応をみるのも一つの手だ…と、
石川先生は言います。
そういうふうに…
相手の言葉や思いと適度に距離を取りつつ、
相手が何を伝えようとしているのか、考えてみる
加えて、
自分がそれに対して、どんなふうに反応しているのか?
それがどう見えているのか?
ということも見つめる。
これが「受け止める」のイメージです
このとき大事なことは…
相手が何を伝えようとしているのか?
わからなかったとしても、適当にわかったふりをしない。
わからないままにしておくことです
わからないことは…
いったんわからないままにしておき、
そのうえで、自分が何をどこまでわかっているのかを考え、
相手に伝えてみる
例えば、
「あなたが、何にどう苦しんでいるのかはまだわからない
だけど、苦しんでいることだけはわかったよ。
できる限り、あなたの苦しみをわかりたいと思っているよ」
といったように、
相手の出方を待ちつつ、
自分の心がどう動くのかを確かめてみるー
石川先生は…
はじめから受容、共感ありきで関係を紡いでいくことのほうが、
無理があるように思うとのこと。
確かにそう思いました。
気も楽になりそうです
相手が何を伝えようとしているのかを考え、
それを相手に投げ返し、
「本当のところ」を
一緒に探っていく
それが「寄り添う」ということではないかという
ことを教えていただきました
◆わからないことはわからないままにする。
わからないことがわかっている。
「無知の知」ですね