ここまで、「聞く技術」や「わかってもらう技術」(初級編・中級編)そして、「プロカウンセラーの技術」(上級編)についてご紹介してきました
では、「話を聞いてもらう」「傾聴してもらう」ことにはどんな意味があるのでしょうか
「傾聴」は目的によって必要とされる傾聴の仕方が違うんです
例えば、こんな目的で傾聴を使います
・心理面接・治療(カウンセリング系):心の問題解決に向けて
・ビジネスでの交渉:チームワーク、部下のマネジメント
・コミュニケーション:毎日の会話に
・福祉、おしゃべり:ボランティア系、お話相手
傾聴は一つの手段で、傾聴にこだわりすぎないことが大事です
つまり、傾聴を目的にしないように注意してください
では、「話をしたり、聞いたりすること」って、
何でそんなに大切ことなんでしょうか?
つまるところ、どこにつながっていくのでしょうか
何のために話を聞くのか?
傾聴講座では…こんなふうに習っているかと思います。人と良好な関係づくりのために「傾聴」は大事ですよね
・傾聴とは「ありのままを聴く」ことを通して、
相手の理解を深めていくことを目的にした聴く技術(姿勢)
・「話してよかった」「受け止めてもらえている」と感じてもらえる聴き方
諸富先生は……人との良好な関係づくりからさらに一歩進めて、
「内側の自分を知るために、傾聴をする」という新たな視点を与えてくれています。。。
傾聴は、「自己との対話」「自分自身との対話」をお手伝いするためめに行うです。。。
自分のこころと対話し、こころを深め、人生を深めていく。それによって、より深く、納得した人生を生きていく。そのことをお手伝いすること。
カール・ロジャーズは傾聴について、次のように語っています
私がこれまで述べてきたような治療的な関係をしばらくの間、経験したクライアントの変化は、セラピストの態度を反映したものになっていく。
まずはじめに、クライアントは相手が自分の感情に受容的に傾聴していることに気づくにつれて、少しずつ自分自身に耳を傾けるようになっていく。
ここに傾聴の意味があります
そうやって自分を傾聴することを学習すると、人は自分自身に対してより受容的になれる。自分が隠していた恐ろしい部分をより表現するにつれて、クライアントはカウンセラーが自分や自分の感情に一貫した無条件の肯定的配慮を向けていることに気づくのである。
クライアントは少しずつ自分に対して同じような態度を取るようになっていく。つまり、ありのままの自分を受容するようになり、そして生成プロセスの中で前進しようとするのである。
カウンセラーに自分の気持ちを聞いてもらっているうちに、クライアントはカウンセラーが自分にしているのと同じことを、自分自身に行うようになっていきます
「自分の気持ちを聞く」ということを学ぶようになっていくのです。
「自分自身への傾聴」
そのことが生き方、生きる姿勢、自分自身への関わり方の変化を引き起こしていく。「自分自身になっていく」ことです。
「自分が嫌いだ」という人は意外にワタシの身近にも多いです。「自分と対話する」なんて、恐ろしくてできないと言う人も多いです。ネガティブな感情や思考は見たくないし、聞きたくないのです。
人の話は聴けたとしても、「内側の自分」とは対話できない
相談者の話を聞かせてもらっているワタシも、「自分自身との対話」という諸富先生の視点がすっぽりと抜けていたことに気づきました。
改めて、「傾聴」の奥深さ、「傾聴とは…ああ、そういうことだったんだ~」と感銘しました
傾聴してもらうと、人は「自分自身のこころの声を聞くようになっていく」ということなんですね
◆人は、生きている間ずっと、「自分」と対話し続けています。
例えば、
「今日着る服はどうしようか?」「今日の夕食はどうしようか?」
「進路をどうするか?」あるいは「これからどう生きるか?」といった大事なことまで、自分に問い続けています
◆私たちはずっと、自分の内側の「もうひとりの自分」と話し続けているんですね。
あるときはしっかりとその「声」を聞き、
あるときはなだめすかし、
あるときは距離を置き、
あるときは静かに寄り添う。
そんなさまざまなやり方で「自分」とかかわり続けています。
「死ぬ」ということは、そんな自分とお別れする「内側の自分」との関係が消失するということなのでしょうか
◆自分がより深まっていく、というのは、この「自己との関係」が深まっていく、ということなんですね
「自己との対話」の深さが、人生の深さを決める
傾聴は、この「自己との対話」の深まりを支える営みだと、
諸富先生に教えてもらいました。
やっと、「傾聴」の大切さを深くこころに刻みこむことができた感じがしました