「聞く技術」や「傾聴」についての本はたくさんあります。
その多くは「話を聞く側」のスキルが有能であることに力点が置かれています。
しかし、いくら「聞く側」が有能で傾聴スキルにに長けていても、「聞いてもらう側」に意欲がなければよい結果につながりません
「聞くー聞いてもらう」「わかるーわかってもらう」関係は、
本来、二人で作りあげていくものだからです。
カウンセリングの祖、カール・ロジャースが言うように…
「共感的な理解とは、二人でつくっていくプロセス」なんですね。
今回は「プロカウンセラーの こころの声を聞く技術 聞いてもらう技術」(明治大学教授 諸富 祥彦著)から学んでいきたいと思います。
本書の「聞く側の技術」と、「わかってほしい人」「聞いてもらいたい人」が持つべき「わかってもらう技術」「聞いてもらう技術」の見出しの掲載とポイントをご紹介します。
<聞く技術とわかってもらう技術、その大原則>
【初級編】
Ⅰ聞く技術
①「聞きっぱなしのまま」そのままにする
自助グループなどさまざまな治療的グループでも採用されている「人の話を聞くときの大原則」です。ただ「そのまま」にする。「聞きっぱなし」にするが一番安全だからです。
②「でもね」「そうは言ってもね」を言わない
人は「相手から批判されない」「否定されない」という安心感があるからこそ、存分に自由に自分の気持ちを語ることができます。
「心理的安全性」を確保することが大切ですね。
③アドバイスはしない
「今のままではダメだと言われた」「そのアドバイスを実行しないうちは、不十分だと言われた」と感じてしまうなど…
アドバイスした本人は、決して悪気がなくても、相手は今の自分では不十分だと言われた気持ちになってしまう…結果的にアドバイスをする側の満足感を得るため、自己満足のためのアドバイスに。
要注意ですね。
でも、ワタシはすべてのアドバイスが悪いわけではないと思います。
アドバイス又は助言をしなければならない場面は数多くあります。
その場合は、相手に今の現状をわかりやすく説明し、その背景にあるメカニズムを理解してもらったうえで(納得感をもらう)→
相手に「どうしたらいいと思いますか」とカウンセリングの中では提案型の助言をしています
④軽い一言で十分、「そうか」「それは大変だね」
相手が自分に大切な話をしてくれたときには、
「大切なことを話してくれて、ありがとう。…それは本当に大変だったね」と一言を添えるといいですね
余計なことをあれこれ言わずに、この一言を「低い声で、かみしめるように、ゆっくりと言う」これが大切です。
ワタシも常に心がけたい一言です
⑤余計な一言を言わない
9割以上の確率で役に立たないとわかっていても、それでも一言、アドバイスしたいときは…
・あくまでも自分の考えとして、
・具体的に
・短く、さらりと語ること
そして短く話したら、すぐに相手の話に戻ることです
ワタシもつい「余計な一言」を言いたくなってしまいますが…
「余計なことを言おうとしている自分」に気づいて、自戒することが必要ですね
話を十分に聞くこと、そして十分に聞き終えたら、一言ねぎらいの言葉をかける…これでまずは十分だと思います
★⑥~⑨は正しく、アンガーマネジメントの習慣が傾聴に役立つことがよくわかりますね よろしかったら、このブログのアンガーマネジメント覧を読んでいただけると嬉しいです
⑥聞いていると途中でイライラしてきたら、聞くのを中断する
⑦イラッとしたら、その場から離れる
⑧しばらく(2時間くらい)外に出て、こころ穏やかになったら戻って聞く
⑨穏やかな気持ちに自分を整えてから、聞く
Ⅱわかってもらう技術
①「ちょっと聞いてほしいことがあるんだけど…」と勇気を出して言葉にする
この一言を言うことが、「今の自分のこころの壁」を突破するきっかけになります
「わかってもらえなくていい」と突っ張ることで自分を守っている状態→「わかってもらいたい」とこころを開いた無防備な状態
この一言は、二人の間に「わかりあえる関係」がつくられていくための第一歩ですね。すべてはここから開かれた対話(オープンダイヤローグ)が始まると思いました。
「本音を話してみようか」とチャレンジする、ちょっとした勇気が必要ですね。
☓「ちょっと話したいことがあるんだけど」とは言わない
ささいな違いですが、この一言を言われると多くの人は何か、文句を言われるんじゃないかと身構えてしまいます。要注意ですね。
②「いつだったらいい?」と「いつどこで?」を予約する
③突然大事な話をしない
④一度に一つのことしかできない人間が何かに熱中しているときに、大切な話はしない
人間には一度に二つのことができる人間と、一度に一つのことしかできない人間の、2種類がいます。
相手の話をきちんと聞くためには、「聞いてみよう」と思えるためのこころの準備やそのための時間が必要です。
相手に「大切な話をしたい」「わかってほしい「聞いてほしい」のであれば、突然、話しかけないこと。
・一言め 「ちょっと聞いてほしいことがあるんだけど…」
・二言め 「いつだったら、いいかしら?」
まずはこう話しかけて、「時間と場所の設定」からスタートしてみるといいですね
⑤多くを望まず、「聞いてもらえただけで」でOKとする。いきなり「本当にわかってもらう」を求めない
「本当にわかる」のは、一度では無理ですね。何度も話を聞きながらじっくり時間をかけて理解する必要があるからです。
⑥「言わなくてもわかってほしい」は無理…これら大原則の元となる大前提ですね。
「一緒に生活している夫婦だからこそ、言葉にしないと伝わらない」が真実です!
人は自分のことで精いっぱいだからです。ともに生活しているならば、相手のことはごく自然な存在。ちょっと寂しい気はしますが…
相手の思いに気持ちを寄せるのは、「必要だと判断したときだけ」です。
なぜなら、一緒に生活をしている夫婦や親子が、相手に気を遣ってばかりいると、「自分の気持ちを押し込めるようになってしまう」からです。
「私の気持ちをわかってよ」と求められすぎると、人は窮屈になり、健康な人であればあるほど、辛くなります
相手の気持ちをわかるというのは、それほど大変なことなんです。
私たちは自分のことで精いっぱいです。自分のことで忙しくて、疲れきってふらふら、家族全員が同時に「もう限界」となっているケースは、相談の中でも少なくないです。
相手の話を「聞く」ためには、「こころの中にスペースを空ける」必要があります。
こころの中に「スペース」を空けることができて初めて、「さあどうぞ、あなたの話を聞く準備ができました」と…
カウンセリングを始める前のワタシの心構えです
ワタシも家庭で時々ありますが…
「私は私なりのやり方でサインを発していた。なのにわからないのはあなたが悪い」と相手を責めてしまいがちになります。
特に夫に対してこのくらい言わなくてもわかるでしょと、つい言いやすいので怒ってしまいますね…反省、謝罪です
でも、のことは何でも赦せてしまう…なんてワタシって優しんだと自己肯定感を上げる助けになっています。。。トホホ
人間は猫と違って、皆、人間社会の中で…
相手の人も、自分の人生を生きるのに精いっぱいなんだ。
自分が発した小さなサインだけで、それに気づけ、というのは無理というものなんだ…と心得ます。
「わかりあう関係」は二人でつくっていくものですね
一方の飛びつけた洞察力や努力によって可能になるものではありません。
では、次回は<こころの声を聞く技術とわかってもらう技術、その大原則>中級編をお届けします。