前回に引き続き、「プロカウンセラーの こころの声を聞く技術 聞いてもらう技術」(明治大学教授 諸富 祥彦著)から学んでいきたいと思います。
「わかりあう関係づくり」の土台を築くまでに根気が必要ですよね。
前回の初級編のまとめです
〇話を聞いてもらいたい側は…「ねえ、ちょっと聞いてほしいことがあるの」ーこう言って、時間と場所を設定してもらう
〇話を聞く側は…まず、聞くことに徹する。アドバイスしたり、説教したり、理不尽と思える話を聞いても「そんなの無理だよ」とキレたりしない
中級編は傾聴講座などで最初に教わる内容に相当します
<聞く技術とわかってもらう技術、その大原則>
【中級編】
Ⅰ聞く技術
①あいづちとうなずきは「低め、ゆっくりめ、大きめ」で
話を聞く側は、話をする側よりも少しだけ大きな声ではっきりと、
「ええ、ええ、はい、なるほど……」とあいづちを打ちましょう。
ゆっくり、大きく、丁寧にうなずく、相手よりも少し、低め、ゆっくりめ、大きめの声で「ああ、そうなんだ」「なるほど」とあいづちを打ちます。大切な話を聞くときの「基本のキ」ですね
②視線は「顔あたりをぼんやり」と見る。時折、視線をしっかり合わせる
③座る「距離と角度」は話す側に合わせて
④最初は軽く前傾姿勢で、徐々にリラックス姿勢に
話す側が「わかってほしい」モードのときには、
話す側は、聞く側のほうをしっかり向いて話します。
このときには、聞く側も話す側の目をしっかり見ながら、姿勢も多少前のめりになって、前傾姿勢で聞くほうがフイットします
話す側が将来のことをあれこれ思いめぐらしていたり、過去のことを思い出していたりする「探索」モードのときには、
聞く側も、相手と目を合わさず、むしろ話す側と同じ方向に向きながら、一体感を味合う聞く姿勢のほうがフイットします
聞く側はリラックスして、遠くを見るような姿勢で聞くほうが、話す側の自己探索を妨げずにすむと思います
⑤理解した内容を短く確認する
話を聞いている側は、相手の話が一段落したところで、理解した話の内容を確認することが大切です
「そうですか。〇〇〇…そういうことでしょうか?」と
理解した話の内容を時折、確認しながら聞いていきます。
大切なのは、あまり「長くならない」ようにすることです。
あまり長く確認の言葉を差しはさむと、その間、話す側は話すのをやめて待っことになります。
そして、話を止められると、こころの動きも止まってしまいます
自分が言いたいこと、話そうとしていたことが何だったのか、わからなくなってしまう人もいます。
話のポイントは可能な限り、短く確認していきます
⑥相手の「気持ちを表す言葉」をゆっくり繰り返す
カウンセリングの分野で「感情のリフレクション(伝え返し・反射)と言われているものです。
相手が言わんとしている、その人の「気持ち」を表す言葉をそのまま繰り返します。
・聞き手は「そうか…もうやってられない気持ちなんだ…」
・話す側は相手が一番気持ちのこもった言葉を繰り返してくれるのを聞くことで…
「自分が一番言いたかった気持ちがわかってもらえた。気持ちが伝わった」と思います。
ここで難しいのは、相手の話のどの言葉が、一番気持ちを表現するものなのか、それを見極めることです。
⑦自分の関心から質問しない。質問は相手の関心に沿って
自分の興味を満たすための質問ではないということです。
相手の気持ちをよりよく理解するための質問をすることです。
相手がどんな関心を持っていて、どのように世界や人生とかかわっているかを理解することが大切です
⑧話をわかっていないのに、聞き流したりしない
一段落したら、一言こんなふうに伝えてみましょう
⑨「大切な話をしてくれてありがとう」「お話をうかがって、なんだか胸が締め付けられる気がしました」
「話を聞いて、自分がどんな気持ちになったか」それを短く、一言でひとりの人間として伝えていきましょう
話をする側にも求められることがあります。それは「自分のこと」を話すことです
Ⅱわかってもらう技術
①一般論や出来事の話ばかりでなく、「自分のこと」を話す
自分のことを語るのは勇気がいるかもしれません。どうぞ、ほんの少しの勇気を持って、「あのね、私ね、実は…」とこころを開いて語ってみましょう
②意見や推論ではなく、「自分の気持ち」を話す
「ちょっと話を聞いてほしい」と思ったときに、本当に聞いてほしかったのは、なんだったのでしょうか
・話をする側は、自分の気持ちをそのまま言葉にするほうが、相手にはずっと伝わりやすいです。
・話を聞く側も「気持ちを受け止めればいいんだ」という構えをとりやすくなります。
自分が「意見」や「批判」を口にすることで、「その背景にある自分の気持ちまでもわかってほしい」というのは甘えが過ぎます
「そうなんです」、理屈でわかっていても、ワタシはなかなか本音の弱弱しい感情を話すことが苦手です。というか「あまりできない」ですね。
いつも強がりな言葉が出ているなと気づいてはいますが……
話を聞く側にとって、「議論の背景にある気持ちまでも読み取る」などどいうのは、至難の業…そうなんですよね
少しの勇気を持って、嬉しいかったり、辛かったり、淋しかったりした「自分の気持ち」をそのまま言葉にしてみましょう
そのほうがずっと相手に届きますし、「わかってもらいやすく」なります
「はい」、意地っ張りなワタシももう少し素直になりたいと思いました
③まずは気持ちを語る。状況説明はそのあとで
夫婦や親子の間に「わかりあえる関係」を築こうとするならば、
話す側にも「わかりやすく話す」という努力が必要です。
大切なのは、「私はつらかったの」「さみしかったんだ」と自分の気持ちをそのまま言葉にすることです。意見や批判、議論などの形をとらないことです
「わかりやすく話す」とは、理路整然と話すことではありません。
聞く側にしてみると、「嬉しかった話」を聞くのと、「つらかった話」を聞くのでは、心構えが違ってきます。
周辺の事情を最初から長々と話し続けられると、「どんな構えで聞けばいいのか」と戸惑うこともあります
「まず気持ちを語る」ようにしましょう。すると、聞く側は心構えがしやすくなります
④聞く側の「わかろうとする努力」に協力する
「わかりあえる関係」をつくるには、二人の努力が必要です。
「聞く側」も「話す側」も努力し続けなければ、「わかりあえる関係」は維持できません。
話を聞く側は、時間を確保する必要があります。話を聞くには注意力も必要です。わかりにくい話をわかろうとするには、根気も必要ですね。
自分の気持ちをわかってもらうために、相手はそのような努力を払ってくれているのです。聞いてくれたことに対する「ねぎらいの言葉」をかけたいものです
⑤「わかろうとしてくれて、ありがとう」とねぎらう
相手に自分の話を「聞いてもらった」とき、その後で…
・「私のわかりづらい話を聞いてくれて、ありがとう」
・「私の気持ちを一緒に感じてくれて、ありがとう」と…
こういった言葉が最後にあると、
「今日は、この人の話を聞かせてもらってよかったなあ」という気持ちになりますね
そして「ううん、こちらこそ、大切な話をしてくれて、ありがとう」と言って、会話が終えたいものです
「話を聞く」のは、かなり労力とエネルギーを必要とします。
決して「話ぐらい聞いてくれて当然だ」といった傲慢な態度はとらないようにしたいですね
ここまでが中級編でした。
次回は「傾聴についてのよくある誤解」を解きながら、さらに理解を一緒に深めていきたいと思います