そろそろいい機会なので、国内盤ビクターの送り溝の読み方について、まとめておく。現時点で確定していない情報もあるため、分かり次第随時更新していく予定である。

ここまでの研究の様子は下記記事より遡ってください。


ビクター盤の送り溝の記載は、基本的に次のようになっている。

(例)SOLID  STATE  SURVIVOR(YMO)

ALR 6022A 125 米米米米米米米
ALR 6022B 133 米米米

ビクターは3桁マトと呼ばれ、125/133などと表現されることが多いのだが、ちょっと注意が必要である。1桁目の1はリカッティングがあった場合に数字が変更されるようで、通常は1のままである。よって、この1の数字は基本的に無視して考えて良いようだ。

2桁目のA面2、B面3はラッカー番号を示しているようだ。この場合2枚目、3枚目のラッカーが使用されていることになるだろう。

そうなると、3桁目のA面5、B面3がマザー番号を示していると考えるべきだろう。それぞれ5枚目のマザー、3枚目のマザーという意味で良いかと思う。

その後に続く米マーク、これがスタンパー番号を示している。米1つだとスタンパー1、米2個だとスタンパー2と考える。この場合A面はスタンパー7、B面はスタンパー3ということになるだろう。

ただし、米1つがスタンパー番号1を示すとすると、例えばスタンパー番号が25のようになった場合、米マークが25個刻印されるのだろうか。

個人的には、まだまだ解析の余地が残されているような気がしているのだがいかがだろうか。

その後、実体顕微鏡を用いて米を詳細に調べたところ、この記号は米ではなく+の周りに・を打ったものであることが判明した。+の周りには最大4つの点を打つことができる。調べたところ・の数が1〜4まであることが分かった。つまりスタンパーの数は米の数ではなく、+を1として最大4つの・を打った場合を5と考えるのが妥当だと思われる。

(例)SOLID  STATE  SURVIVOR(YMO)

ALR 6022A 125 米米米米米米米
ALR 6022B 133 米米米

↓写真は・が3つのもの(番号は4と読む)

先に紹介したYMOのアルバムだとA面最後の米は・が3つしかない。つまり5×6+4=34となり、スタンパー番号は34と読むのではないか。

こう考えると、以前話題にした「ビクター盤のスタンパー番号が余りにも進んでいない」という問題も説明が可能ではないだろうか。


では、1桁目が変更されるのはどのような場合だろうか。

これまでに頂いた情報等を整理すると、

①収録曲変更に伴うリカッティング
②ラッカー盤の廃棄に伴うリカッティング
③マスターテープの差し替えによるリカッティング

等の事情により、変更が加えられた際に、211のように数字が付与されるようである。

(例)MANEATER(HALL &OATES)
RPS-87A-2 211米N
RPS-87B    111米
このシングル盤だと、A面がリカッティングされた際に、レコード番号の末尾に−2が付与され、さらにマトが211に変更されているようだ。合わせて、レーベル上の表記も変更されており、RPS-87 A-2となっている。本来であれば、RPS-87A 111米という刻印となっているはずだ。


続いて、その他の記号について説明する。

Bマーク(Bを○で囲んだマーク)が刻印されている場合、それはビクターの自社カッティングを示しているようである。

VマークやGマークはどちらもビクターの自社プレスを示しているようである。

TOマークは東芝にプレスを委託した盤である。

(例)BGM(YMO)
ALR 28015A 121米米10 1-3 TO 〄B
ALR 28015B 111米米A4

この盤では、プレスを東芝に委託したため、A面10、B面4のスタンパー番号が、東芝で追加されている。また、1-3は東芝プレスに付与されるPMと呼ばれる製造月を示す記号で、1-3の場合81年3月プレスと読み取ることができる。

また、+マークの付く盤が見られるがこれについては米マークと同じスタンパーを示すものと思われるが、先にも書いた通り、スタンパー番号が進んだ際にどう刻印されるのか、完全には解明されていないと考えている。もしかしたら何らかの意味を持った記号なのかも知れない。

未だ不確定なのがA面に見られるカタカナやアルファベットの刻印である。

これまでに確認された記号を列挙すると

ウ、U、A、K、C、J、W、I、N…

という具合である。

これについては全く情報がなく、ビクターマトを調べている人もよく分からないとのことである。

今のところ候補として挙がっているのは次の2説である。

①エンジニアのイニシャル
②生産ラインを示す記号

いずれにしてもよく分からないので、これに関しては関係者からの情報がない限り判明しないのではないかと思われる。

このアルファベットについては、いつもお世話になっている想也さんにより、解明されました。これにより、国内ビクター盤の解析が大きく進むものと思われます。ビクター盤にPMは存在しないというのが定説でしたから、これがひっくり返ったということはとんでもない偉業です。詳細は想也さんのブログをご覧ください。



最後にVやGの刻印がないビクターの見分け方としては、光にかざすと透ける、透過性が挙げられる。